参考写真 6月21日、菅直人首相は記者会見で、「消費税10%は公約と受け止めていただいて結構だ」と発言しました。
 これは、記者が「首相は次の衆院選後の消費税増税では、税率に関して、自民党が掲げた10%を一つの参考にすると述べた。それは党の公約という認識でよいか。また、この発言をめぐって、民主党内から参院選への影響を懸念する声が出ており、国民新党の亀井静香代表は消費税増税の方針が正式に決まれば連立離脱の事態もあると述べている。党内や国民新党の理解をどのように得ていく考えか」との質問に対して答えたものです。
 質問に対して、菅首相は「まず私が申し上げたのは、早期にこの問題についてですね、超党派で議論を始めたい、その場合に参考にすべきこととして、自民党が提案されている10%というものを一つの参考にしたい、こう申し上げたわけであります。そういった意味で、そのこと自体は公約と受け止めていただいて結構ですが、それはあくまでこのマニフェストで申し上げたように、こういう方向での議論を始めたい、そのことについて、その努力は当然のこととして、参議院の選挙後にはやってまいります」と答えました。(記者との質疑応答は産経新聞より引用)
消費税10%はマニフェストに記載なし、姑息な手法
参考写真 そもそも菅首相は6月17日の記者会見で、突然に消費税率10%を参考にすると発言しました。今年度中に税率なども決定するとしたのです。ところが、同じ日に発表された民主党のマニフェストには、「消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」としか書かれていません。肝心のマニフェストには記載せず、記者会見などの「発言」で重要なことを表明するのは、普天間基地問題で鳩山前首相が使ったのと同じ手。後になって「あれは公約ではなかった」と言い逃れできるという、全く「姑息」な手法です。21日の発言も、この延長線上にあるものです。
 そもそも不況下の現状で、「増税します」と国のトップが発言すること自体、景気回復の大きな足かせとなります。「経済オンチ」ぶりをさらけ出した結果です。
まず、「マニフェストが間違っていた」と謝罪せよ
 思い出していただきたいと思います。マニフェストの財源は総予算を組み替えれば簡単に捻出できるので、消費税増税は4年間必要がないなどといっていたのは、菅首相自身です。 増税の前にやるべきは、「私たちのマニフェストは間違ってました」と、まず全国民に謝罪することではないでしょうか。そして、子ども手当や高速道路無料化、暫定税率の廃止などの「国民だまし・バラマキ政策」で政権を獲得してからたった9カ月で、なぜ増税路線に変質したのか。その変節の理由を説明をすべきです。
根拠なき「10%」、目的を示さず増税の無責任
 そもそもなぜ「10%への増税」なのか、その根拠が全く語られていません。国の経済財政の最高責任者が「自民党の案を参考に」とは全く情けない。一国の総理大臣としての自覚が果たしてあるなのかと疑いたくなります。超党派で増税論議をしたいというのは、「赤信号みんなで渡れば怖くない」式の責任逃れに他なりません。
 まずは、引き上げる理由を示すべきです。財政再建のための借金返しなのか、バラマキのための財源なのか、その目的をはっきりさせなければ国民の納得は絶対に得られません。
 ここで、消費税に関する公明党の考え方を整理しておきたいと思います。
「増税協議会」よりも、まずは「社会保障協議会」を
 公明党は、増大を続ける社会保障費の財源について、消費税を含めた論議をすべきだと考えています。菅首相は、政権党としての財政再建、社会保障のあり方などの考えを、まず国人に示すことが不可欠です。「増税のための与野党協議会」などは全く必要ありません。「安心の社会保障のための与野党協議会」を開くべきです。この協議会の中で、給付と負担のあり方の議論がなされるのが筋であって、はじめに「増税ありき」では議論の順序が、180度逆です。
 野党時代の民主党は、「年金制度をはじめとする社会保障制度に関する両院合同会議」も途中で議論から逃げた前科があります。さらには、当時、与党の我々の呼びかけに応じず「社会保障国民会議」への参加も拒否してきました。ところが、与党になり立場が危うくなると「野党にも責任を負わせよう」とする魂胆が見え見えで、全くのご都合主義といわざるを得ません。
社会保障の機能強化の議論が前提。低所得者への配慮も
 公明党は、マニフェストで「消費税を含む税制の抜本改革」の必要性を認めています。
 しかし、その前提は、第1に、デフレ克服、景気回復に全力を挙げること、第2に、徹底した税金のムダの排除、そして第3に、社会保障のあるべき姿の国民的議論と具体化としています。
 特に、年金、医療、介護、子育て支援など将来への安心をどう確立していくのか、人口減少・少子高齢社会が進む中で社会保障の機能強化をどうするかについて、早急に国民的コンセンサスを得るべきです。
 その上で、社会保障等に限定した消費税率の見直しを行う際にも、欠かせないのはいわゆる複数税率など低所得世帯に対する配慮です。また、公明党は生活支援や子育て教育支援等の観点から、「給付付き税額控除制度」を導入することをめざしています。
財政再建のための増税には反対
 さらに公明党は、財政再建のための増税(特に消費税)するという道は取るべきではない、と強く主張しています。ただちに「引上げ」という議論には、絶対に組みしません。菅首相は、議論の順立てが明らかに間違っています。
 財政再建はもちろん重要です。しかし、これは増税ではなく歳出改革を徹底して税金のムダを削り、限られた財源を不要な歳出から必要な歳出へと振り向けていくこと、と同時に、成長戦略を打ち立て、着実な経済成長の中で、税収増を図っていくことによって、達成すべきです。安易な増税に頼るべきではありません。
聖域無き財政改革に、国会議員の定数削減や歳費の見直しも
 国の歳出改革には、当然、国会改革も含まれるべきです。公明党は選挙制度を見直した上での、国会議員の定数削減を主張しています。
 民主党も国会議員の定数削減を主張していますが、これは、党利党略のための政策で、行政改革を目指してものではありません。例えば、衆議院の比例区のみを80議席も減らしたならば、より多様な国民の声を国政に取り入れることが出来なくなり、世界的な二大政党政治見直しの潮流に逆行するものです。
 また、1日でも在籍すれば1ヶ月分の歳費が支給されるような、国会議員の歳費の支給基準も早急に見直す必要があります。
社会保障にかかる財源の確保と税制改革
(公明党マニフェスト2010より引用)
税制の抜本改革の道筋
・高齢社会、人口減少社会の中で、国民の安心と持続可能な社会保障の構築、さらには公明党が提案する「新しい福祉」の確立は、最重要の課題です。そのためには、社会保障にかかる給付と負担(財源)の議論は避けて通れません。年金、医療、介護の社会保障および子育て支援対策の機能強化を図るとともに、安定的な財源を確保するため、消費税を含む税制の抜本改革を行います。
・消費税を含む税制の抜本改革について、実行に移せる環境の整備を図ります。具体的には、?着実な景気回復およびデフレからの脱却、?行政改革・行政のムダ排除の徹底、?社会保障の機能強化の具体化を進めます。
消費税の使途は、社会保障等に限定
・消費税収の使途は、年金、医療、介護の社会保障給付および子育て支援のための費用に限定します。消費税率の見直しに際しては、給付付き税額控除制度や複数税率など、低所得者への配慮措置を講じます。
税制抜本改革の基本的な視点
(1)税制全般の一体的改革
税制の抜本改革にあたっては、所得課税、法人課税、消費課税、資産課税等を含め税制全般について一体的に改革します。
(2)格差の是正、所得再分配機能の強化
格差の是正や所得再分配機能の強化を図るため、所得税の最高税率の引き上げや相続税の見直しを行います。
(3)給付付き税額控除制度の導入
生活支援や子育て教育支援等の観点から、いわゆる「給付付き税額控除制度」を導入します。
(4)消費税の社会保障目的税化
消費税収の使途は、年金、医療、介護の社会保障給付および子育て支援のための費用に限定します。消費税率の見直しに際しては、給付付き税額控除制度や複数税率など、低所得者への配慮措置を講じます。(再掲)
(5)税制のグリーン化、自動車関係諸税の見直し
低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化を推進します。また、自動車関係諸税は、取得、保有、走行各段階における複数の課税について、簡素化を図る観点から見直します。特に、自動車重量税など取得、保有にかかる税目は、簡素化の上、暫定税率分は縮減します。
(6)NPO支援
地域のコミュニティーや福祉を支えるNPOなどの非営利セクターに対する支援税制を抜本的に強化します。
(7)法人税率の引下げ
経済成長の実現に向け、企業・法人の国際的な競争力の強化を図る観点から、租税特別措置の見直し・縮小など課税ベースの拡大に併せ法人税率を引き下げます。
(8)地方の税財源の充実
自立した基礎自治体の構築のため、課税自主権を拡大し、地方交付税等の財政調整機能に配慮しながら交付税の確保、補助金の縮小、税源配分の見直しを一体的に検討し、国と地方の税源比率を1対1とすることをめざします。その際、地方消費税の充実を図ります。

クリーンな政治の実現.政治とカネ、国会改革
(公明党マニフェスト2010より引用)
国会議員定数の削減
●衆議院の選挙制度については、新しい中選挙区制を導入し、定数を削減します。
●参議院の選挙制度については、より民意を反映した選挙制度を導入し、定数を削減します。
国会議員の歳費削減、日割り支給
●国会議員の歳費を削減します。また、国会議員の当選月の歳費を日割り支給にします。