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米軍基地問題をめぐり、菅直人首相が副総理時代に言い放った「沖縄は独立したほうがいい」との“沖縄切り捨て発言”が沖縄県民の怒りを買っています。
 上の写真は、琉球新報の6月16日付けの記事。琉球新報は、「菅首相は昨年の政権交代後、鳩山首相退陣のきっかけとなった米軍普天間飛行場の移転問題について公的な場ではほとんど発言せず、『沈黙』を続けてきた」と、批判しています。その上で、「菅首相は2003年末まで、米軍の核抑止力は認めても海兵隊の抑止力には否定的だった」が、首相に就任すると明らかに認識を変えていると指摘しています。首相の無責任な発言を冷静に分析しています。
 そもそもこの発言が、身内である民主党県連代表の喜納昌吉参院議員(7月の参院選比例候補)が、今月出版した著書「沖縄の自己決定権」の中で暴露したというのだから、二重の驚きです。
 昨年の政権交代直後、菅氏に会った喜納氏が「沖縄問題よろしく」と言ったところ、菅氏は「沖縄問題は重くてどうしようもない。基地問題はどうにもならない。もうタッチしたくない」と語り、「もう沖縄は独立したほうがいい」と放言したという内容です。
 副総理が国土・国民の分離を促すような発言をすること自体、大問題です。さらに沖縄県民から見れば、「基地問題を解決するつもりはない」「日本である限り、基地を背負い続けて」とも受け取れます。
 喜納氏が指摘する通り、「半分ジョークにしろ、そういうことを副総理・財務相で、将来首相になる可能性もある彼が言ったということ、これは大きい。非公式であったとしても重い」(同著)といえます。
 “沖縄切り捨て”の菅氏の発想は、旧日本軍の発想と同列です。沖縄は、本土決戦を引き延ばすための“捨て石作戦”に利用され、県民は筆舌に尽くせぬ悲劇を味わった。菅氏の発言は、犠牲者や遺族はもちろん、悲しみを乗り越え、米軍施政権下からの祖国復帰と今日の発展を成し遂げた県民の苦労をないがしろにするものです。
 明日6月23日、菅首相は「慰霊の日」の明日、就任後初めて沖縄入りしますが、放言癖の治らない首相に、県民から強い怒りがぶつけられるのは間違いありません。
菅首相の所信表明 沖縄への理解不足を露呈
 話が前後しますが、菅直人首相が6月11日の所信表明演説での発言にも反発が広がっています。菅首相は、沖縄の過重な基地負担に「感謝」という表現を使いました。沖縄では「沖縄の気持ちをまったく理解していない!」と声が上がっています。
 首相は「慰霊の日」の沖縄訪問を表明した上で、「長年の過重な負担に対する感謝の念を深めることから始めたい」と訴えた。ところが、基地と絡めて使われる「感謝」という言葉が、沖縄では禁句。「感謝しています。だから、引き続きよろしく」と受け止められかねないということを、菅首相はご存じなったようです。
 アメリカでは、1996年に上院で、97年に上下両院で沖縄県民への「感謝決議案」が提出されたことがあります。この際、沖縄では「感謝の押し付けだ!」との批判が巻き起こりました。2000年の沖縄サミットでは、クリントン米大統領(当時)が、駐日米大使などの忠告を受け、スピーチで「感謝」の表現を避けたとされています。さらに95年には、菅首相に縁の深い岡山県の県議会で、自民党県議団が沖縄県民への感謝決議案を提出しようとして、他の会派などから猛烈な批判を浴びた歴史があります。
 そうした経緯があるにもかかわらず、うかつにも「感謝」との表現を使った菅首相に対し、地元紙は「前政権でも移設問題にほとんど関与しなかった首相の不用意な言葉遣い」(6月12日「沖縄タイムス」)、「沖縄の歴史や民意に対する認識の浅さ」(6月12日「琉球新報」)と苦言を呈しました。
 所信表明の原稿作成にあたり、菅首相は自ら10回以上、手直ししたというが、沖縄県民の立場に立って読み返すことはなかったようです。図らずも、沖縄への理解不足が明らかになった首相の下で、懸案の普天間問題が解決できるのか、極めて疑問です。