民主党参院比例候補の音声によるホームページ更新問題について、その背景を少し調べてみました。
 一般的には、公示日(告示日)より投票が終了するまでは、公選法の定めで候補者等のホームページ、ブログ、ツイッターなどの更新が出来なくなります。
 ところが公示日を前にして、民主党の参議院議員候補者(現職)が、自らのホームページで、公選法の不備を突いた音声によるブログ、ツイッターの更新、メールの配信を行うと宣言しました。
 そのホームページには、「『コンピュータ等のディスプレイ上に表れた文字等の意識の表示』は公職選挙法142条・143条にいう『文書図書』と解されています。また、電子メールという手段はその文書図書を『頒布』していると解されます。しかしここで私はあることに気がつきました。選挙運動期間中に投票依頼の電話かけが合法となっているように、「音声」は規制の対象となっていません。総務省と顧問弁護士にも確認をとりましたので、現行公選法上合法といえる以下の事項を行います」と、記載されています。
 この候補者の公選法上違反にならないとの自信は、どこから来るのだろうかと疑問を持ちました。確かに2000年当時、長野県知事に立候補した田中康夫氏は、ホームページに音声データを貼り付けて、音声は「文書図書」にあらずと主張してマスコミの話題となりました。
 しかし、公選法の網をくぐるような行為であり、この候補者の自信に満ちたホームページの作りに、私は不信感を持ちました。
 そこで、県選管への問い合わせなど行い、行き着いた結論が衆議院の質問主意書の存在でした。正式の名称は「平成13年の参議院選挙におけるインターネット使用状況に関する質問主意書」(平成13年8月8日提出・質問第10号・提出者:島聡)です。
 この質問主意者では、インターネットホームページの選挙時の更新について、以下の具体的な5つの類型を示して、公選法に照らして合法か否かを質問しています。
  1. 選挙区、比例代表ともに候補者を擁立している政党のホームページにおいて、公示前に参院選挙特集のコーナーを設け、立候補予定者や党の公約を紹介し、公示後も更新せずに残す場合、このような使用方法は適法か否か。
  2. 選挙区、比例代表ともに候補者を擁立している政党のホームページにおいて、公示前から立候補者の顔写真、経歴、メッセージを掲載し、公示後も画面を変えない場合、このような使用方法は適法か否か。
  3. 2のホームページにおいて、公示前に党の一週間の活動を紹介するコーナーを設け、公示後も党首の遊説日程が決まり次第、更新する場合、このような使用方法は適法か否か。
  4. 選挙区に立候補した候補者のホームページにおいて、公示後、候補者のホームページ自体は更新していないが、そこから「ボランティアの方が、ホームページを作成、発信しています。毎日更新!」としてリンクするよう誘導したホームページにおいて、内容を毎日更新している場合、このような使用方法は適法か否か。
  5. 選挙区に立候補した候補者のホームページにおいて、公示後、候補者のホームページの画面自体は更新していないが、そこから「声をお届けします」としてリンクさせている候補者本人が活動や考えを語る音声だけのコーナーのみ、音声内容を更新している場合、このような使用方法は適法か否か。

 この質問に関する回答は、以下の通りです。
1から3までについて
 御質問は、御指摘の政党が開設し又は更新するホームページに一定の事項を掲載する等の行為が公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)第百二十九条、第百四十二条第一項、第百四十六条第一項又は第二百一条の十三第一項の規定に違反するか否かというものであると考えるところ、個別の行為がこれらの規定に違反するか否かについては、具体の事実に即して判断されるべきものと考える。
 なお、1から3までにおいて御指摘の公示日前にする行為は、これらの行為による当該ホームページ上の文字等を用いた意識の表示が選挙運動のために使用する文書図画と認められる場合には、同法第百二十九条及び第百四十二条第一項の規定に違反する。
 さらに、3において御指摘の公示日後にする更新は、当該更新による当該ホームページ上の文字等を用いた意識の表示が選挙運動のために使用する文書図画と認められる場合には、同項の規定に違反する。また、当該更新は、当該意識の表示が選挙運動のために使用する文書図画と認められない場合であっても、当該更新が同項の禁止を免れる行為と認められる場合には同法第百四十六条第一項の規定に、当該意識の表示に当該公示に係る選挙の候補者の氏名又はその氏名が類推されるような事項がある場合には同法第二百一条の十三第一項の規定に違反する。
4及び5について
 御質問は、御指摘の候補者が開設し又は更新するホームページ(以下「候補者のホームページ」という。)等に一定の事項を掲載する等の行為が公職選挙法第百二十九条、第百四十二条第一項又は第百四十六条第一項の規定に違反するか否かというものであると考えるところ、個別の行為がこれらの規定に違反するか否かについては、具体の事実に即して判断されるべきものと考える。
 なお、4及び5において御指摘の公示日前にする候補者のホームページ上に他のホームページヘのリンクを設ける行為は、当該行為による当該候補者のホームページ上の文字等を用いた意識の表示が選挙運動のために使用する文書図画と認められない場合には、同法第百二十九条又は第百四十二条第一項の規定に違反することはないと考える。
 他方、4において御指摘の公示日後にするリンク先のホームページの更新は、当該更新による当該リンク先のホームページ上の文字等を用いた意識の表示が選挙運動のために使用する文書図画と認められる場合には同項の規定に、当該意識の表示が選挙運動のために使用する文書図画と認められない場合であっても当該更新が同項の禁止を免れる行為と認められる場合には同法第百四十六条第一項の規定に違反する。
 これに対して、5において御指摘の公示日後にするリンク先のホームページにおいて聞くことのできる音声の内容の更新は、当該リンク先のホームページにおいて文字等を用いた意識の表示がない場合又は文字等を用いた意識の表示があっても当該意識の表示が同法第百四十二条第一項又は第百四十六条第一項に規定する文書図画と認められない場合には、これらの規定に違反することはないと考える。

 即ち、この第5項目により、この候補者のホームページ(ブログ)の作り方は明らかに“シロ”とお墨付きがでていると言うことです。
 しかし、メールでの戸別配信となると、さすがにこれは「頒布」ではないかと疑いたくなりました。この白黒のボーダーはどうなっているのか、引き続き調べてみたいと思います。

 音声ファイルのよる更新の事例です。ご参考までに。