6月25日、茨城県はスカイマーク社の茨城=神戸便の運休の発表を受けて、スカイマーク社に継続を要請する文書を送付しました。
 24日には、橋本昌県知事名で「スカイマーク社の茨城=神戸便は、搭乗率が75パーセントを超えるなど順調な運航実績を挙げており、大いに期待していた路線ですので、今回の運休という決定には大変驚いております。航空祭や観閲式当日の運航ダイヤをめぐり、スカイマーク社と百里基地の間でさまざまなやりとりがあったと聞いております。県といたしましては、共用空港という制約はあるにしても、利用者の便宜を第一に考え、関係者間の調整が早急に進められるよう、自衛隊やスカイマーク社へ働きかけてまいります。茨城=神戸便の運休の取り止めあるいは一日も早い再開を強く期待しております」とのコメントを発表。公共性や利用者の利便性を考え、関係者間の調整が迅速に進められるよう、国土交通省の協力を得ながらスカイマーク社並びに防衛省、自衛隊に対し働きかけていく方針です。
 特に航空自衛隊に対しては、「他の共有空港では特に問題となっていない」とし、事例を参照しながら民間共用のスキームを調整していく方針です。
参考写真
 スカイマーク営業推進部広報担当によると、今回の運休は自衛隊からの百里基地の航空祭にともなう7月24日、25日のスケジュール変更の要請や、来年度開催される観閲式当日の運航中止の可能性をふまえての決定で、「事前にこういった事態が起こるとは聞いていなかった」と説明しています。航空祭に関しては時間を変更する方向で、現在調整中です。運行再開については、「共用スキームが改善されないと運航は難しい」との見解で、スキームの見直し後に検討していく考えです。
 航空自衛隊の立場で考えると、年に一度の百里航空祭や3年に一度開催される航空観閲式は、まさに自衛隊の威信を賭けて行うイベントであり、毎年、数多くの県民も楽しみにしている催し物です。この日ばかりは、民間航空機のダイヤの修正を行ってもらいたいと考えているのだと推測します。
 一方、スカイマーク社にとっては、機体の運用なども踏まえ、航空ダイヤについて空港の管理者からとやかく言われることは、全くの想定外であり、ある意味で面子を潰されることになったのではないでしょうか。
 この両者の間に立って、茨城県の利用者本位、県民本位の調整力が大いに期待されている局面です。
(写真は3年一度開催される航空観閲式の模様:2005/10/30)
「茨城−神戸便」運航の継続に関する要請書

スカイマーク株式会社
代表取締役社長 西久保 愼一 様
 御社には、3月11日の茨城空港開港記念フライトに続き、4月16日からは茨城―神戸便の定期便を運航していただき、厚く御礼申し上げます。
 これまでに、茨城―神戸便は、本県のみならず、北関東地域や首都圏など多くの方々にご利用いただき、搭乗率が75パーセントを超えるなど順調な運航実績を挙げており、大いに期待していた路線ですので、今回の運休という決定には大変驚いております。
 航空祭や観閲式当日の運航ダイヤをめぐり、御社と百里基地との間でさまざまなやりとりがあり、調整のために多くの時間と人手を費やし、それが今回の運休決定の大きな要因になったものと聞いております。
 県といたしましては、公共交通の運営に当たっては、利用者の便宜を第一に考えることが最も重要であると認識しており、自衛隊の行事などにより、航空機の発着時間の変更等が行われることなく民航機の計画的な運航ができるよう、防衛省や自衛隊に対して、強く働きかけているところであります。
 つきましては、茨城−神戸便の運休決定について再考されるよう切にお願い申し上げます。
平成22年6月25日
茨城県知事 橋本 昌

○スカイマーク便の運休について
橋本昌県知事の定例記者会見の模様(2010/6/25)
知事:今回の運休の発表に当たって、県庁に全然連絡がなかったという形で、マスコミに報道されておりますけども、一般職員はわからなかったかも知れませんが、役付き職員の一部には昨日1時ごろに、運休にする方向で会社としての方針が決定された、ということが伝わってきております。私も2時ごろにこちらへ戻ってきましたので、それからすぐ自衛隊の基地司令に電話をかけさせていただいたところでありますけれども、スカイマークの西久保社長のほうとは連絡を取ることが出来ませんでした。そのまま結果的に夜のリリースということになったわけであります。私ども聞いておりますのは、実はスカイマークさんが、航空祭のときにどういうふうなダイヤで運行するかということについて、百里基地のほうと、だいぶ前から調整を進めておられました。しかしなかなか結論が出ない、とくに最初のころは当日は運休してはどうかとか、あるいはまた時間の調整についても、かなり思い切った調整をしてくれないかといった申し出が基地の方からはあったようでございます。まあ、4月の上旬ぐらいからやり取りが始まっておるわけでありますけども、決着をみたのが今週ということで、かなり時間がかかっております。
 とくにそのなかで、来年度は観閲式があるので、観閲式の場合には、場合によったら欠航してもらうかもしれないというようなお話もあったようでございます。そうした中で、スカイマークさんはローコストキャリアでありますから、人出、時間といったものをずいぶん、このことひとつだけでもかけなければいけない、こういう形ではなかなか、LCCとしてはぎりぎりのかたちで出来るだけ安く航空券を提供するという努力をしているので、その面でも経営に影響があると考えられたということがひとつございます。
 それからもうひとつは、機体繰り等々についても、たとえば私どもの神戸便ですと、こちらから神戸へ行ったあと、約40分程して沖縄へ行っております。沖縄からまた帰ってこなければいけないということも考えると、全体的な影響は大きなものがある。単に茨城−神戸間の動きだけではないわけでして、こういう形の調整が、非常に多く出てくる、あるいはこの調整が、自衛隊の基地が主導して進められることもあり、なかなかこの空港は使い勝手が悪いといいますか、LCCとして機敏な対応をするには向いていないなといったようなことも、強く感じられたようでありまして、その結果が、運休という発表になったと承知をしているところであります。以上です。
茨城放送:県側としては今後どのような具体的な働きかけをする予定でしょうか。
知事:我々としてはですね、早速今日中にも、会える・会えないはわかりませんけれども、スカイマーク社のほうに出向いて、運航継続についての要望を提出してまいりたいと考えております。スカイマークさんのほうでは実は、西久保社長が、5月14日に私のところを訪問してくださったんですけれども、そのときには、次どういう形で路線を張るかといったような大変前向きな話をしてくれておりました。また、事務的にもこれから路線を展開していくに当たっては、支店を設けることも検討していきたいということで具体的に場所等、どんなところがあるんですかといったような問い合わせなどもしてきてくれたところであります。そういったことからして、今日のニュース・新聞等をみておりますと、経営上の、という話もけっこうでておりましたですけれども、今の経営状況は、スカイマーク社からすると当然想定内のことでありまして、これから何便か張っていくことによって間違いなく茨城空港は経営面でもサービス面でもいい輸送を実現できる空港になるのではないかという評価をいただいたんではないかと思っております。
茨城放送:9月までに運休するという発表がされていますけれども、今後の県と国の調整しだいでは、9月の運休が取りやめになったり、また一回運休になっても早期に復旧する可能性はあるんでしょうか。
知事:それはちょっと私どものほうではわかりません。我々としては、いろいろスカイマークさんが不都合に思っている、改善してほしいと思っていることについて、どこまで実現できるかということで関係方面とこれから調整をしてまいりたいと思ってます。
日経:具体的に国、国交省と防衛省とですね、どういうような協議を、交渉されていくのかお聞かせください。
知事:私自身としてはたとえば、航空祭があるとしてもですね、航空祭があるからということでダイヤを変更するというのは、一般的にはどうかなと考えております。やはり公共交通機関としての飛行機がある、そのダイヤはあくまで多くの人が利用する公共的なものでありますから、航空祭いつやるか、例えば昨年は9月に行われたんですけども、今度はブルーインパルスの都合があって7月になったとかいう事で変えられる、そういったこともやはり問題があるんじゃないかなと思っております。まあそういった点で、例えば来年観閲式が行われるにしても、観閲式に総理が来られるからという理由で民間の飛行機のダイヤを変えるということになれば、総理としては決して歓迎しない話になるんだろうと思っております。そういう点で公共交通というものの役割をしっかり自衛隊さんにも認識してもらう必要があるんだろうと思ってます。
日経:その具体的な、例えば今年でその、ダイヤ変更を要望したというか、防衛省側の言ったということを変えてくというか、知事としては改めて要望されるおつもり…。
知事:そうですね。それは公共交通があるということを前提にしたうえで、航空祭のほうのプログラムを組んでもらえればいいんだと思います。
<中略>
日経:5月に西久保さんがいらっしゃったときには今回のような話は全くなかった。
知事:全くありません。
日経:先程おっしゃったように知事の認識としてももっと増便とか路線拡大という認識だったと思うのですが、航空祭たった1日のことで変ったのかどうも理解できないですけれども。
知事:1日のことについて、たとえば4月の上旬からやってきており、2ヶ月もかかって色々調整しなければいけない。そして皆さんは簡単に考えるかもしれないけれども、ダイヤの変更ということについては、旅客のみなさんそれぞれに説明しなければいけないということはアシアナ航空からもいわれておりまして、そういう形をとらなければならないことは航空会社にとっては歓迎しない事柄だということをいわれてます。
 また、これはひとつの例であって他のことでも似たようなことがおきてくるのではないかと。冒頭申し上げたように自衛隊が全体の管理をやっている中で色々と自衛隊主導で航空会社としてはあまり歓迎しないようなことを決められては困るということがあると思います。
朝日:アシアナとかチャーターを運航している会社等からはそのような同様のダイヤの変更を求められたとかの話はなかったのか。
知事:結論がどうなっているか存じませんけれども、アシアナさんも時間の変更を基地から求められたと聞いております。アシアナさんとしても(航空祭が)7月24、25日になったことについては、できればこの時期はさけて欲しかったと言っていると聞いております。
NHK:共用化をするとき、就航が決まる前の段階で県と自衛隊の間でこういうことがありえるという協議はされていなかったのか。
知事:事務的には話し合ったと思いますよ。ただそれが具体になってきたということだと思います。防衛省は防衛省の立場もあると思います。しかし、一方でやはり公共交通が入ってきていることは、それは最優先にその運航確保ということを考えていくことが必要だと思っております。
朝日:例えば他の軍民共用の小松や名古屋はどうやっているのか。
知事:新千歳が一番良い例かもしれませんけれども、こういったところはあまり問題なくやっておるようです。
朝日:茨城空港との差の理由というのは。
知事:あまり差はないと思います。うちも滑走路は2本ありますから。1本だと自衛隊機が使用するときには使えなくなるという事情があるかもしれませんが、2本あれば2本同時に離発着できる構造になってますから、そういう意味では、他の空港、例えば小松だと(滑走路が)1本しかないですけれども、そういった問題はないと思います。
日経:そこらへんのところを改めて防衛省に要望していくのでしょうか。
知事:防衛省さんには、色々な意見があるようでありますけれども、私どもとしてはそういったことは別にしても公共輸送というもはきちんと大切に考えてくれるようにお願いしていきたいと思います。
 そして、ダイヤをずらすということは、単に茨城―神戸の話だけではなくて、それに伴って色々なところに影響が出、お詫びのための連絡などをやらなければならない。猛烈に仕事が増えてきます。
 例えば、うちへくるためにまず神戸の出発をずらして、到着をずらす、こっちの出発もずれて神戸の到着も遅れる。それから当然神戸の出発も遅れて、沖縄行くのも遅れる。それから沖縄から羽田に戻ってくるんだっけ最後は。
職員:そうです。沖縄から福岡に行って羽田に戻ります。
知事:沖縄から福岡も問題がある、福岡から羽田も問題がある。ずいぶん多くの人に影響するんですね。そういったことを踏まえて判断をしていただけたらと思っております。
常陽:茨城空港って、管制権は航空自衛隊が持っていると思うのですけれども、防衛上のことで何か起きたときに、基地の指示に従わなければならないという協定というのを、防衛省と国交省とスカイマークとで結んでいないのかなと。
知事:共用空港ですから、就航のときに通常の空港に必要とされる航空法に基づく手続きが必要とされるほか、百里基地の施設使用許可が必要とされておりますので、この段階で色々な調整は当然行われるはずであります。先程話のあったような緊急事態等の場合には、管制のほうできちんと必要に応じて措置をとっていくことになると思います。
常陽:協定って何か結んでいるんですか。
知事:協定はそのときには特別に結ばないと思います。航空会社と基地の関係は私はわかりませんけれども。
朝日:管制権が自衛隊にあるというのは理解するんですけれども。スカイマークのプレスリリースによると指揮下で運航しなければならないとなっているですよね。
知事:それは管制ということも含めてのことだと思いますよ。
日経:知事の昨日のコメントでも運休の撤回及び再開を求めていくとあったが、そうなるための条件は、スカイマークさんの場合軍民共用が見直されたりとか。
知事:共用見直しということではないでしょう。
日経:民間共用スキームの見直し・・・。
知事:スキームの見直しというのは、航空祭などがあるからといって、時間をずらすことなどないように、ということだと思いますよ。
日経:そうするとそれさえできれば知事としてはいまのところ再開は十分望みはあると。
知事:我々はぜひ再開に向けてがんばっていきたいと思っています。
朝日:再開増便に向けてということですよね。正確には。
知事:とりあえずは再開に向けて。
茨城放送:基地司令とお話したときの感触はいかがだったのですか。
知事:基地司令は来年度の分については観閲式なので、変更なしでいけるか、なかなか難しいというような話をしてましたですけれども、私はそれに対して、もし総理が来るということでダイヤの変更なんかを無理矢理させたりすれば、それは一般国民に迷惑をかけることなんだから総理自身だって絶対喜ばれませんよということを申し上げておきました。