参考写真 「子ども手当」への菅直人首相の認識不足、民主党のマニフェスト違反は、目に余るものがあります。
 6月30日、菅首相は山形市内の街頭演説で、民主党の目玉政策である「子ども手当」の金額について「まず月1万5000円でスタートすることができたじゃないですか、みなさん」と語り、月額1万3000円で6月からスターとした支給額を間違える場面がありました。その安直な姿勢に批判の声が上がっています。
 子ども手当については、既に民主党は参院選マニフェストの中で、当初の公約であった月額2万6000円を支給することを断念し、「財源を確保しつつ、すでに支給している『子ども手当』を1万3000円から上積みします。上積み分については、地域の実情に応じて、現物サービスにも代えられるようにします。現物サービスとして、保育所定員増・保育料軽減、子どもの医療費の負担軽減、給食の無料化、ワクチン接種の公費助成などを検討します」と記載しています。
 さて、このような「子ども手当」への政府の取り組みについて、第一生命経済研究所が、所得税や住民税の控除が見直されたり廃止されるために、結果的に負担増となる家庭が多く発生することに警告を発しています。
 第一生命経済研究所は、7月2日に公表した「再考:子ども手当の影響」で、「子供手当は2011年以降満額支給の予定であったが、財源確保の問題から満額支給は見送られる方針となった。2012年6月からは住民税の扶養控除も廃止となり、新制度への移行が完了する2013年度には、家計手取り収入額が減少する世帯も生じる。更に配偶者控除が廃止された場合、多くの世帯で収入減となるため、半額支給据え置きで配偶者控除廃止となる可能性は低い」と、分析しました。
 家計が負担増となるのは、15歳以下の子どもを持つ世帯が対象の扶養控除が、所得税は11年1月から、住民税は12年6月からそれぞれ縮小・廃止されるためです。所得税の配偶者控除が廃止された場合は、さらに負担が増えることになります。
 年収が少ない世帯では、子ども手当に組み込まれた従来の児童手当の満額給付を受けていたため、子ども手当に切り替わっても、恩恵が部分的です。一方、課税対象額から一定額を差し引く控除の縮小・廃止で、所得税や住民税の支払いは増えることになります。13年度以降、年収300万円では年1万6000円、年収700万円では年5万6000円の負担増になると試算しています。
 さらに、当初の予定通り配偶者控除も廃止されると、子どもがいない場合は年収300万円でも5万円の負担増になるなど、ほとんどケースで負担が増えることになります。
 マニフェストを反故にした民主党政権。その代償を国民に転嫁させることは許されません。配偶者控除の廃止は白紙に戻す必要があります。その上で、負担増となるケースへの対応をどのように行うか、具体的な対応策を今すぐ国民に提示する必要があります。
参考:再考・子ども手当の影響(第一生命経済研究所:PDF版)