就学支援金:通信制高生1万人の支給先送り ミス続発で
毎日新聞(2010/74/7)
 高校授業料無償化に伴い私立高生らに支給される就学支援金申請で、県内の通信制高校全9校で手続きミスが発覚し、県は6月末に予定していた4〜6月分の支給を通信制高生徒約1万人については先送りしていたことが6日、分かった。県私学振興室によると、通信制の支援金申請の計算は普通制に比べ複雑で、手続きが混乱しているという。
 同室によると、就学支援金は、県内で41校約3万人が申請。通信制高生徒を除いた32校約2万人には6月末に支給した。通信制生徒へ支給される就学支援金は定額支給の全日制生徒と異なり、履修単位数などから算出。国から提供された表計算ソフトを各校に送付したが分かりにくく、学校側の算定ミスが続出。このため6月下旬、各校に改めて申請を確認するよう指示を出したという。同室は「7月以降の早い時期に支給を始めたい」としている。
 本県のトラブルについて文科省高校修学支援室は「他では聞いたことがない。茨城は通信制に通う生徒の割合が高く、県側が確認するのにも時間がかかったのでは。各校に金銭的な負担がかからないよう、早く支給するよう自治体にお願いしている」と話す。

国の準備不足のしわ寄せが地方に、混乱する学校現場
参考写真
 井手よしひろ県議は、通信制高校の“就学支援金”について、6月県議会でその準備状況を質問しました。さらに、7月7日、県私学振興室に支給状況を聴き取りするとともに、意見交換を行いました。
 茨城県は、東京、大阪、北海道に次いで通信制高校に在籍する生徒が多い都道府県です。県内には9校の通信制高校があり、1万750人の生徒が就学支援金を申請しています。
 茨城県のトラブルについて、毎日新聞の報道では、文科省は「県側が確認するのにも時間がかかったのでは」と取材に答えていますが、これは大きな間違いです。東京などの他自治体では、生徒の戸別状況の詳細な判別を行わず、概算払いで就学支援金を払い出しています。万が一、この概算払いで支払い、その後の精査によって清算することになれば、二重の手間であり、制度自体の信頼を失うことになります。
 茨城県は、あくまでも戸別データの精査を行った上で、就学支援金の支払いを行うよう井手県議らは強く求めています。
 そもそも、民主党政権が通信制高校に対する高校無償化に関する制度の詳細を自治体に通知したのは4月上旬です。文科省が配布した集計用ソフトは、エクセルのデータにマクロを組んだ程度有り、データベースの機能は全く持っていません。その上、通信制高校は単位毎に支給額を計算したり、全日制高校に在学したものが転入学している事例も多く、その単位を引き継ぐなど、大変煩雑な計算が必要になります。
 そのために、通信制の高校から県に提出されたデータに、3割以上の計算間違いが発見されました。これでは、そもそも6月に支給せよと言う国の対応の方が無理としか言いようがありません。
 全国的にみても、6月中に就学支援金を支払っていない自治体はかなり多いはずです。茨城県の事例を、県の責任とする毎日新聞の取材力に疑問を感じます。
 なお、通信制高校に通っている生徒に関しては、予め就学支援金を差し引いた学費が請求されており、学校への支給が遅れても、生徒や家族に負担が掛かることはありません。