猛暑の中、大阪市で母親に置き去りにされ、水や食べ物を与えられず3歳と1歳の姉弟が亡くなるなど、目を覆いたくなるような事業虐待事件が続発しています。
親による子どもへの児童虐待は歯止めがかからないばかりか、虐待がエスカレートし死亡する事例も増えています。事態は極めて深刻です。
7月28日、全国201カ所の児童相談所が2009年度中に住民などから受けた児童虐待の相談件数(速報値)が、前年度比3.6%増の4万4210件に達したことが、厚生労働省の調査で分かりました。(児童虐待相談対応件数等及び児童虐待等要保護事例の検証結果)
1990年度の調査開始以来19年連続で過去最多を更新し、厚労省は「児童虐待防止法で虐待を発見した人には通告義務が課せられていることや報道などで、住民の意識が高まっているためではないか」と分析しています。
相談件数を都道府県・都市別にみると、東京都3,339件、大阪府3,270件、横浜市2,466件の順となっています。
茨城県は、718件で前年の536件と比べて182件増(前年比134%)となっています。
また、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)児童部会の専門委員会は、虐待による死亡事例の検証報告書を公表しました。厚労省が把握した08年度の事例は107件128人(前年90件114人)でした。(子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について)
2008年には、児童虐待防止法が改正され、児童虐待への対応で中心的な役割を担う児童相談所に裁判所の許可状を得た上で強制的に立ち入り調査ができる権限が与えられました。しかし、強制的に立ち入りに踏み切った事例(臨検)はこれまでわずか3件にとどまっています。
児童相談所は、立ち入り調査の権限は与えられたものの、人手不足に加え、裁判所の許可状を得るための要件も厳しく、実際には立ち入り調査を行使しにくい現状もあります。だが、今回の事件など、立ち入り調査をしていたら、虐待事件は防げたのではないかとの思いも深まります。
2004年の児童虐待防止法改正の際、与党は「警察官の強制立ち入り権」も盛り込む予定でした。
しかし、民主党が警察官の権限が拡大することに反対して、改正のキモともいえる「警察官の立ち入り権」は、憲法に定める令状主義に反するとして見送られた経緯があります。虐待されている子供や近所からSOSが発信されても、強権立ち入りのプロではない児童相談所職員だけでは、積極的対応が出来ないのは自明です。にもかかわらず、民主党は大反対したのです。もし、この時の改正が実っていたらと悔やまれます。
一方、実母が加害者の場合、「望まない妊娠」「育児不安」「養育能力の低さ」といった心理的・精神的な問題を抱えている場合が多いことも厚労省の報告で明らかになっています。加害者の心は病み、追い詰められているのが実態です。
親による子どもへの児童虐待は歯止めがかからないばかりか、虐待がエスカレートし死亡する事例も増えています。事態は極めて深刻です。

1990年度の調査開始以来19年連続で過去最多を更新し、厚労省は「児童虐待防止法で虐待を発見した人には通告義務が課せられていることや報道などで、住民の意識が高まっているためではないか」と分析しています。
相談件数を都道府県・都市別にみると、東京都3,339件、大阪府3,270件、横浜市2,466件の順となっています。
茨城県は、718件で前年の536件と比べて182件増(前年比134%)となっています。
また、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)児童部会の専門委員会は、虐待による死亡事例の検証報告書を公表しました。厚労省が把握した08年度の事例は107件128人(前年90件114人)でした。(子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について)
2008年には、児童虐待防止法が改正され、児童虐待への対応で中心的な役割を担う児童相談所に裁判所の許可状を得た上で強制的に立ち入り調査ができる権限が与えられました。しかし、強制的に立ち入りに踏み切った事例(臨検)はこれまでわずか3件にとどまっています。
児童相談所は、立ち入り調査の権限は与えられたものの、人手不足に加え、裁判所の許可状を得るための要件も厳しく、実際には立ち入り調査を行使しにくい現状もあります。だが、今回の事件など、立ち入り調査をしていたら、虐待事件は防げたのではないかとの思いも深まります。
2004年の児童虐待防止法改正の際、与党は「警察官の強制立ち入り権」も盛り込む予定でした。
しかし、民主党が警察官の権限が拡大することに反対して、改正のキモともいえる「警察官の立ち入り権」は、憲法に定める令状主義に反するとして見送られた経緯があります。虐待されている子供や近所からSOSが発信されても、強権立ち入りのプロではない児童相談所職員だけでは、積極的対応が出来ないのは自明です。にもかかわらず、民主党は大反対したのです。もし、この時の改正が実っていたらと悔やまれます。
一方、実母が加害者の場合、「望まない妊娠」「育児不安」「養育能力の低さ」といった心理的・精神的な問題を抱えている場合が多いことも厚労省の報告で明らかになっています。加害者の心は病み、追い詰められているのが実態です。
児童虐待への対策の視点として、8月12日付けの朝日新聞「私の視点」に、NPO法人「日本子供の虐待防止民間ネットワーク」の理事長・岩城正光弁護士の「安全確保最優先の対応を」に注目したいと思います。
岩城弁護士は3つの提案を行っています。
第1は、子ども情報の管理体制をつくること。
いまは子どもの身長・体重・障害・家庭環境といった情報を統一的に管理する機関がどこにもない。通報で虐待の疑いが生じてから児童相談所などが子どもの情報を収集する。しかし、これでは虐待防止が後手に回る。子どもの健全育成の見地から常に前もって情報を管理する機関が必要である。学童年齢前の子ども情報は保健所・保健センターに統括管理させ、学童以降は学校に情報管理を義務づけるべきである。子ども情報を統括管理すれば、虐待の早期発見につながる。
第2は、児童相談所の役割を見直すこと。
現行の児童虐待防止法では、介入的機能とケースワーク機能を児童相談所の役割と位置付けている。しかし、社会的介入(親子分離)と援助(親指導・支援)という互いに矛盾する役割を児童相談所だけに担当させることにはもともと無理がある。二つの機能を委ねることで、相互の牽制も働かない。社会的介入は子どもの安全確保をなによりも最優先にした対応である。危機介入の権限については、警察の役割としても位置づけるべきである。
第3は、国の主導的役割の強化。
虐待防止は子どもの生命にかかわる重要な国家施策だ。国は虐待防止に向け、さらなる指針や研修を地方公共団体や関連機関に積極的に働きかけるべきである。全国205カ所の児童相談所の技能(迅速な対応能力、家庭診断力、他機関との連携力、ソーシャルワーク、法的知識など)には著しい格差があり、もはや放置できない。
米国の小児科医で、虐待対応の礎をつくったケンプは「虐待であるにもかかわらず判断を誤って保護せず生命を落としてしまった子どもに謝罪するくらいなら、虐待ではないのに間違って子どもを保護したときに親に謝罪する方がまだいい」と言ったという。
子どもの虐待は、直接の加害者である親の責任にとどまらない。子どもの生命にかかわる重大な人権侵害であり、救えなければ社会にも責任がある。今こそ、この責任を果たすため、国を挙げて総力を結集するべきである。
岩城弁護士は3つの提案を行っています。
第1は、子ども情報の管理体制をつくること。
いまは子どもの身長・体重・障害・家庭環境といった情報を統一的に管理する機関がどこにもない。通報で虐待の疑いが生じてから児童相談所などが子どもの情報を収集する。しかし、これでは虐待防止が後手に回る。子どもの健全育成の見地から常に前もって情報を管理する機関が必要である。学童年齢前の子ども情報は保健所・保健センターに統括管理させ、学童以降は学校に情報管理を義務づけるべきである。子ども情報を統括管理すれば、虐待の早期発見につながる。
第2は、児童相談所の役割を見直すこと。
現行の児童虐待防止法では、介入的機能とケースワーク機能を児童相談所の役割と位置付けている。しかし、社会的介入(親子分離)と援助(親指導・支援)という互いに矛盾する役割を児童相談所だけに担当させることにはもともと無理がある。二つの機能を委ねることで、相互の牽制も働かない。社会的介入は子どもの安全確保をなによりも最優先にした対応である。危機介入の権限については、警察の役割としても位置づけるべきである。
第3は、国の主導的役割の強化。
虐待防止は子どもの生命にかかわる重要な国家施策だ。国は虐待防止に向け、さらなる指針や研修を地方公共団体や関連機関に積極的に働きかけるべきである。全国205カ所の児童相談所の技能(迅速な対応能力、家庭診断力、他機関との連携力、ソーシャルワーク、法的知識など)には著しい格差があり、もはや放置できない。
米国の小児科医で、虐待対応の礎をつくったケンプは「虐待であるにもかかわらず判断を誤って保護せず生命を落としてしまった子どもに謝罪するくらいなら、虐待ではないのに間違って子どもを保護したときに親に謝罪する方がまだいい」と言ったという。
子どもの虐待は、直接の加害者である親の責任にとどまらない。子どもの生命にかかわる重大な人権侵害であり、救えなければ社会にも責任がある。今こそ、この責任を果たすため、国を挙げて総力を結集するべきである。