参考写真 多くの抗生物質が効かない「多剤耐性菌」の院内感染が相次いでいます。17日に予定されている県議会予算特別委員会で、井手よしひろ県議は、県保健福祉部長と県立病院事業管理者に、多剤耐性菌の院内感染対策を質問する予定です。
 9月3日、帝京大学病院は、入院患者ら46人が多剤耐性菌のアシネトバクターに感染していたと発表したことで、問題が表面化しました。その中で死亡した患者の9人については、感染と死亡との因果関係が疑われています。
 多剤耐性菌は、複数の抗菌薬(抗生剤)が効かなくなった細菌。その一つであるアシネトバクターは、健康な人が感染しても病気になることはほとんどありませんが、重い病気などで抵抗力が落ちている人は、結果的に死亡する可能性が指摘されています。
 一番問題なのは病院側の対応の遅さです。帝京大学病院では2月に院内感染の1例目を検出しましたが、厚生労働省などに報告したのは9月になってからでした。
 また、4月の感染拡大時に細菌検査室の責任者が決まっていませんでした。病院の情報伝達などの遅れがなかったら、救える命がもっとあったかもしれません。
 欧米では約10年前からアシネトバクターの拡大が警戒されるようになりましたが、日本では病院で見つかった場合、国への報告が義務付けられていませんでした。
 人間の命を預かる病院側の認識の甘さとともに、多剤耐性菌に対する政府の危機感の欠如が事態を深刻化させています。
 一方、抗生物質を分解する「NDM―1」という酵素の遺伝子を持つ新型の耐性菌についても、政府の迅速な対応を求められています。
 これは獨協医科大学病院でインドから帰国した患者から検出されたもので、院内感染はもちろん、健康な人でも膀胱炎や肺炎などに罹ることが懸念されています。
 現時点では、警戒するような広がりはありません。多剤耐性菌は、空気感染することはなく、手洗いなどの予防策が有効とされています。
 公明党は、多剤耐性菌の発生を防ぐため、抗生物質の乱用防止策や、海外渡航者への注意喚起の徹底を政府に強く求めています。政府は危機感を持って感染防止対策に取り組むべきです。