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 今、茨城県の北部・福島県と境を接する大子町のまちづくりが、県内の自治体関係者から熱い視線を浴びています。
 大子町では、子育て支援の一層の充実を図るため、保育所の保育料、幼稚園の授業料(保育料、入園手数料)と給食費を、この10月1日から無料としました。
 これまで進めてきた妊婦健診や学校給食費の無料化、子育て支援住宅の建設、中学生までの医療費の無料化、全女子けい中学生を対象にした子宮頸がん予防のワクチン接種費用全額助成など一連の子育て支援策に今回の施策が加わることで、妊娠から義務教育が終了するまで保護者に経済的負担をかけないという子育て支援の枠組みが、完成しました。
 これらの施策によって、大子町では、子育て支援策が一段と魅力あるものとなり、若者の定住化と町外からの転入が促進され、少子化のストップと地域の活性化につながることを期待しています。
子育て世代の負担軽減を目的に大胆な施策展開
 こうした子育て支援に使われる大子町の予算は、給食費が年間約5860万円、子宮頸がん予防ワクチン接種1060万円、中学生3年生までの医療費無料化約2350万円、保育料と授業費、給食費は約7760万円。そのほか、乳幼児と妊産婦の医療費と妊婦健診の無料化など、年間予算総額は約1億8800万円に上ります。
 このほかにも、子供の人数によって家賃が減額となる子育て支援住宅の整備や、共働き夫婦のために児童を放課後に受け入れる事業(放課後児童あずかり事業)もスタートさせました。
 これら無料化の背景にあるのが、大子町の深刻な少子高齢化問題に他なりません。今年9月現在の高齢化率は35.7%で県内で最も高くなっています。1995年度から2009年度までの出生児数の推移を見ると、最高が98年度の166人で、06年度から08年度までは100人の大台を割り込んでいます。
 しかし、こうした子育ての製剤的負担の軽減策が功を奏してか、2009年度は、102人と100人台を回復しました。
参考:大子町子育て支援施策
最大の課題は財政的裏付け
 大子町の当初予算額は、83億7900万円。限られた予算の中で、県内トップクラスの子育て支援を行うためには、徹底的な事務事業見直しによる経費削減や人件費減少、税徴収体制強化などの財源確保などの努力が不可欠です。
 大子町議会の9月議会では、財源不足を懸念する意見が相次ぎました。採決の結果は、賛否同数で議長採決にまで持ち込まれました。
大子町、保育料を無料化 県内初来月実施 子育て世代支援 
茨城新聞(2010/9/10)
 大子町議会は9日、町内全保育所の保育料と幼稚園の授業料(保育料)、給食費を無料にする予算を盛り込んだ本年度一般会計補正予算案を可決した。保育料の無料化は県内市町村で初めて、町は10月から実施する。町が進める「若者が住む町づくり」の子育て支援策の一環で、子育て世代の経済的負担が一段と軽減される。
 無料化の対象は、4町立保育所と1私立保育所、1町立幼稚園で、保育所が283人、幼稚園が63人。
 町は無料化に伴う年間の費用を、保育所7148万1千円、幼稚園609万7千円の総額7757万8千円と試算。このうち、本年度分として3986万3千円を計上した。
 町議会では、補正予算案と無料化の関連条例案を審議、財源不足を懸念する意見が相次いだ。採決した結果、いずれも賛成6、反対6の同数となり、議長採決で可決された。
 藤田健議長は「質疑で町長が、財源は十分に確保でき、町内の情勢を見て(5年後の)第5次町総合計画の後期計画策定時期に見直しする必要があればすると答弁したことを踏まえて、可決を判断した」と説明した。
 高齢化が進む大子町では「若者に住んでもらえる魅力ある町づくり」に取り組んでいるる。
 子育て支援策として、これまでに小中学校の給食費完全無料化や、全女子中学生への子宮頸(けい)がん予防ワクチン接種費用全額助成を実施。中学生以下の医療費無料化も10月から実施される。
 綿引久男町長は「子育て支援策が一層充実し、(行政でサポートできる)経済的負担軽減の体制はほぼ整ったと思う。日本一を目指しさらに充実を図っていきたい」と話した。