公費負担で抗体検査、母子感染防ぐため妊婦健診時に実施へ厚労省が通知
参考写真 10月6日、厚生労働省はヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV―1)の母子感染を防止するため、同ウイルスの抗体検査を肝炎やエイズウイルス(HIV)などとともに、妊婦健診時の標準的な検査項目に追加し、公費で実施するよう都道府県・政令市などに通知しました。
 検査は妊娠30週ごろまでに実施し、費用は妊婦健康診査臨時特例交付金を活用。妊婦一人あたりの補助単価を6万3790円から6万6080円へ、2290円上乗せします。
 HTLV―1は、致死率の高い成人T細胞白血病(ATL)や脊髄症(HAM)を引き起こす原因ウイルスで、全国の感染者数は推計約108万人。感染しても多くの人が生涯、発病しない半面、ATLの死者は毎年1000人にも上っています。
 ウイルスの主な感染経路は、母乳を介した母子感染。妊婦健診時に抗体検査を実施し、母親の感染が判明しても、出産後に母乳を与えず粉ミルクなどの人工栄養で育児することで、子どもへの感染率を大きく下げることができます。
 全国の感染者のうち、およそ半分が九州・沖縄地方に集中。“風土病”などともされ、国は対応を自治体の判断に委ねてきました。ところが近年の調査で、関東など都市部を中心に感染者が増大していることが判明。全国的な対策が求められていました。
 感染者が多かった長崎県では、1987年から妊婦への抗体検査を実施(2008年度から全額公費負担)。感染が分かった人への授乳制限の指導も行い、これまでに1000件以上の母子感染を防ぎ、約50人のATL発症を抑えたとされています。
 HTLV―1対策について公明党は、参院選マニフェストで「全国一律の妊婦健診での抗体検査を実施」と明記。江田康幸衆院議員が「日本からHTLVウイルスをなくす会」の菅付加代子代表ら患者団体と二人三脚で総合対策の策定を訴えていました。ウイルス研究の専門家でもある江田氏は、政府の要請に応じて特命チームにもオブザーバーとして参加。感染予防に向けた議論をリードしてきました。