参考写真 11月9日付けの地元紙茨城新聞の一面トップに、唐突な記事が掲載されました。曰く、「小型衛星の拠点に 茨城空港テクノパーク 技術組合が計画」。茨城空港に隣接して整備される「茨城空港テクノパーク」に、小型衛星の開発・製造などに携わる企業7社で設立された「スペースランド技術研究組合」(以下、SLJとの略称を使用します)が、小型衛星の組立や地上実験施設を計画しているという記事です。
 SLJは、小型衛星の設計・製造、運用支援などにかかわる企業7社で組織された協同組合です。今年(2010年)2月に、技術研究組合として経済産業省の認可を受けています。
 SLJの設立目標は、そのホームページによると以下のようになっています。
※地球環境保全、資源開発、安全保障、観光、レジャー、不動産など、あらゆる産業分野に対する宇宙利用機会の提供
※宇宙利用産業の利益型事業化の実現
※エアロンチなどの即応型の衛星打上げ機会の提供
※宇宙利用における基礎研究、および衛星の開発・試験・打上げまでのワンストップサービスの提供
 SLJは、組合の設立構想計画である「スペースランド計画の概要」の中で、第1段階として、茨城空港に小型衛星の組み立てや地上試験などができる開発棟を建設するとしています。さらに、茨城空港をスペースプレーンによる小型人工衛星の打ち上げ基地や成層圏宇宙旅行の拠点とすると、ぶち上げていています。さらには宇宙関連のテーマパーク建設も視野に入れています。
 空港テクノパークは、茨城空港の東側に位置する工業用地で、広さは約52ヘクタール。うち、37ヘクタールが分譲可能面積となっています。茨城県は、2007年度から、茨城空港や常磐道、北関東道に隣接する交通利便性をアピールしながら分譲をすすめています。現在のところ、企業誘致の見込みはたっていません。なお、造成工事はオーダーメイドメイド方式とし、進出企業が決まってから着工することにしています。
 さて、なぜ11月9日付けの地元紙の記事が唐突と表現したかを、説明する必要があります。空港テクノパークにこうした未来性のある企業集団が進出することは、大変喜ばしいことです。しかし、この報道にはいくつかの疑問があります。
 まず、新聞報道によると「SLJの進出計画が7日に分かった」と、記載されています。しかし、このSLJ構想は、すでに1年以上前の2009年9月に策定されており、以前から公式ホームページに掲載された内容です。なぜ、今の時期に一面のトップ記事で扱う内容なのか理解できません。
 さらに、9日現在で、空港テクノパークを所管する県の担当部門に確認したところ、県は事業の説明は受けたが、テクノパークの購入希望などの具体的な話しはなかったと説明しています。
 また、スペースプレーンなど、茨城空港の滑走路を直接使う構想がある以上、空港管理者である防衛庁との計画段階でのすり合わせが不可欠ですが、それも行われていないようです。(2700メートルという短い滑走路でスペースプレーンは運用できるのか。航空自衛隊の首都圏防衛の最前線基地に、このような実験施設がなじむのかは、別途議論する必要があります)
 その上、資金調達に当たっても、国や県の補助金などの申請は行われておらず、どのような裏付けがあるのか判明していません。
 時あたかも、12月12日には県議選が行われます。特定の候補者が、SLJ構想の推進を公約にあげています。こうした動きにSLJ構想が利用されれば、構想自体が矮小化されてしまいます。
 茨城空港が宇宙ビジネスのフロンティアとして活かされる絶好の機会です。SLJが早期にその具体的計画や資金調達の可能性を示すことを期待したいと思います。
 茨城空港の利活用を積極的に進めてきた県議の一人として、SLJ構想の推進にエールを送りたいと思います。
参考:スペースランド技術研究組合
参考:茨城空港テクノパーク

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