参考写真 11月9日、茨城県議会の一般質問が行われ、金子道夫病院事業管理者は、「県立中央病院は来年3月以降、婦人科医が新たに3人着任することがほぼ決定している。壊滅的な県央、県北での婦人科の悪性腫瘍に対する強力な拠点となる」と述べました。
 茨城県の県央・県北地域では、これまで医師不足から婦人科のがん手術や放射線治療ができず、その治療態勢の強化が大きな課題となっていました。県病院局によると、自公政権当時に国の予算で創設した「地域医療再生基金」を活用し、筑波大から医師1人を確保、残る2人もほぼ着任が確定しました。来年4月以降にさらに1人増え、医師4人態勢になる見通しです。
 県立中央病院は、がん治療に中心的な役割を担う「県がん診療連携拠点病院」に指定されています。以前は産婦人科医が複数おり、婦人科がんも年間70〜80人を治療していました。しかし、2005年に東大などから派遣されていた産科医が引きあげたため、その後、婦人科医は1人態勢となり、婦人科のがん治療などは出来なくなりました。
 同じく、県央・県北地域では、国立病院機構水戸医療センターや日製日立総合病院でも、婦人科医不足から、手術がほとんどできなくなっています。
 こうした現状を打破するために、県病院局では新たに筑波大学病院の副院長だった金子医師を病院事業管理者に迎え、筑波大との連携強化を図りました。国の地域医療再生基金を活用し、県立中央病院を筑波大の教育拠点病院と位置づけ、地域医療を担う医師の養成・確保を行う協定を締結しました。
 実際に4名の婦人科医師が確保できれば、県央地区だけではなく、茨城県全体の医療バランスの改善にも役立つと考えられています。
 朝日新聞(11月12日茨城県版)の記事によると、婦人科のがん治療が受けられる病院は県南地域に偏在しており、深刻な弊害が起きているとされています。
 筑波大付属病院産婦人科の吉川裕之教授は、朝日新聞のインタビューに「筑波大病院の新規の婦人科がん患者数は、2004年に128人だったが、昨年は200人に迫った。常勤医師12人とレジデントと呼ばれる専門研修医6、7人というスタッフの数はここ数年間ほとんど変わらず、年間700〜800件の分娩と合わせ、増え続ける婦人科がんの治療にあたっているのが現状だ」「この結果、初診から手術までの時間は4、5週間待ちだった半年前に比べ、現在は8週から10週間近く待たなければならない」「大学病院を受診する人は重症の人が多いので、手術はもっと早くしたい。4、5週間の手術待ちは他院に比べれば早かったが、今はそのペースを維持できる状況ではない」と、語っています。
 県立中央病院の産婦人科の充実は、こうした県央・県北地域の危機的状況を回避する有効な政策となると期待されます。
金子病院事業管理者の一般質問の答弁
(2010/11/8)
 中央病院が今後、発展的になうべき政策医療の中で、現時点で最も実現性が高く重要なものは、高度のがん医療を提供することにあると考えています。
 すでに、がん治療の優れたエキスパートを有していますが、地域医療再生基金事業を契機として、来年三月以降、婦人科医が新たに3名着任することがほぼ決定しております。これに寄りまして、現在崩壊的な状況にある県北・県央における婦人科の悪性腫瘍に対する強力な拠点になるもと考えています。