11月2日、茨城県保険医協会は「医療機関における患者受診実態調査結果について」記者会見を行い、県内の医療機関を対象に実施したアンケート結果を公表しました。
 それによると、回答した施設の約3割が「患者が医療費を払えないため治療を中断または中止したことがある」と答えたことが分かりました。
 調査は8月9日から9月6日にかけてファックス回答方式で行い、県保険医協会に加盟する医療機関1,946件から456件(病院4、医科診療所275、歯科診療所177)の回答を得ました。回収率は23.4%でした。
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設問−1:患者の経済的理由から、治療を中断または中止する事例があったか?

 治療の中断・中止が「あった」と回答した医療機関は全体の35.5%。
 個別に見ると、医科診療所で31.6%、歯科診療所で41.8%、病院で25%となっています。
 治療を中断した際の病名として、医科では糖尿病(44件)、高血圧(29件)などの慢性疾患が、歯科では歯周病(43件)、う触(20件)などが突出していました。
設問−2:患者から、医療費負担を理由に治療や検査、投薬を断られたことがあったか?

 治療や検査・投薬を断られたことが「あった」と回答した医療機関は全体で37.5%。
 個別に見ると、医科診療所で44.4%、歯科診療所で27.1%、病院で25%となっています。
 断られた際の内容をみると、医科では諸種の検査・投薬が突出していました。歯科では検査や投薬、義歯の製作などで断られる場合が多く見られました。
設問−3:患者一部負担金の未収金があったか?

 「あった」と回答した医療機関は全体で45%。
 個別に見ると、医科診療所では44.7%、歯科診療所で44.1%となっています。
 未収金となった理由としては(※複数回答)、医科・歯科全体を通して、生活困窮(73件)、悪質滞納(20件)、保険資格喪失後の受診(81件)という結果となりました。
 未収金となった理由詳細に目を向けると、生活困窮に属する回答では「治療費(マル福)600円の支払を給料日まで待って欲しい」「年金が入るまで支払が出来ないので待って欲しい」「体調不良による就労困難のため支払を待って欲しい」「患者一部負担金未払いの件で督促の電話を患者の勤める会社にしたら、会社が倒産していた」「受診時に受付で、持ち合わせの金額内で治療して欲しいと依頼される」など、経済的理由による治療費の支払が困難と想定されるケースが多数あることがわかりました。
 また、生活困窮か悪質滞納かの把握はできないが、受診日に保険証を忘れたり、手持ちのお金が無いということで後日支払うと言い残しそのまま未払いとなってしまうケースが上記とは別に34件ありました。
 保険資格喪失後の受診については、資格喪失していても手元に保険証があるうちはその保険証で保険診療を受けることが出来ると間違った解釈をしているケースがある一方、資格喪失後は保険証の使用が不可能と理解していながら医療機関を受診するケースの二通りあることが調査の「未収金となった理由詳細」から判明しました。
 生活困窮に関するケースでは、経済的理由により医療費の負担が困難となり、支払に苦悩する患者の姿が見受けられます。また、保険資格喪失後の受診については、患者の保険証に対する認識の向上が求められる一方、生活困窮により期限切れの保険証を使用不可と解っていながらそのまま使用してしまうケースも想定されます。
 こうした結果に対して、茨城県保険医協会の宮?三弘会長(医師)は、「糖尿病、高血圧などの生活習慣病は進行するまで自覚症状が乏しく、治療の中断・中止に結びつきやすい。治療の基本は合併症や臓器障害の進展を抑制することであり、定期的かつ継続的管理が重要である。経済的理由による治療の中断・中止は将来的に個人的にも社会的にも大きな負担増をもたらすことになろう。安心して医療が受けられる救済策の創設を強く求める」との見解を明らかにしています。