国の支出1兆8千億円が不適切、「埋蔵金」で指摘金額が急増
参考写真 去る11月5日、会計検査院は税金の無駄遣いなどを指摘した2009年度決算検査報告書を、菅直人首相に提出しました。指摘金額は前年度の2364億円を大幅に上回る1兆7904億8350万円。指摘額、件数(986件)とも過去最高となりました。
 指摘金額が急激に増えたのは、適正な規模を上回る剰余金など、いわゆる「埋蔵金」を積極的に指摘したからです。
 国土交通省に対しては、独立行政法人の鉄道建設・運輸施設整備支援機構の利益剰余金(09年度末で1兆4534億円)について、「約1兆2000億円は国庫に納付しても支障を生ずることはない」として国庫納付を要求。これが全体の指摘金額を押し上げる結果となりました。
 また、経営破綻した金融機関の不良債権を買い取る整理回収機構が、約10年前に業務で得た1837億円の利益を剰余金として保有していることを見つけ出し、金融庁に国庫納付などの対応を促しました。
 国の財政が“借金漬け”となる中、こうした資金をそのままにしておくことは許されません。有効活用に向けた検討が急がれます。
 一方、特別会計の検査では、一般会計からの繰り入れが過剰などとして厚生労働、農林水産、国交の3省が所管する7つの特別会計で計1623億円を指摘、改善を求めています。
 08年から3年間にわたり検査した地方自治体の不正経理は、47都道府県と相模原市を除く18政令指定都市の全てで不正経理が発覚し。その総額は約54億円に上りました。政令市以外の53市でも計14億円を超える不正経理が見つかりました。
 環境省や防衛省などの省庁でも、翌年度に納入した物品を年度内に調達したように装うなどの不正経理が相次いで判明しています。
 不正経理の続発は、公務員らの税金に対する意識の低さを物語っています。「税金は一円たりともムダにしない」という意識への変革が求めらます。
未返還の公金130億円、公明党は対処報告の義務化提案
 今回の検査報告では、法律や政令に違反するなどの不当事項が874件、202億円に達し、前年度(593件、123億円)から大幅に増加しました。
 会計検査院法では、検査で不当事項が見つかった場合、その省庁や団体に対し意見の表示や是正措置の要求を行い、「その後の経理について是正改善の処置をさせることができる」(第34条)とされています。
 しかし、規定通りになっているとは言い難い現状があります。実際の是正措置は、指摘を受けた省庁や団体に任されているのが実態です。
 公明党が06年度の検査報告を受けて実施した調査では、不正使用などで公金の返還を求められたにもかかわらず、返還されていない公金が20年間で約100億円にも上ることが明らかになっています。
 会計検査院は翌07年度の検査報告から、公金の未返還額など不当事項に対する是正措置の状況を公表することになりましたが、09年度の報告でも約129億円(1946~2008年度)が未返還のままとなっています。
 こうした実態は早急に改める必要があります。
 公明党は会計検査院の指摘の実効性をさらに高めるために、昨年7月と11月、今年4月の3回にわたり、会計検査院の機能を強化する会計検査院法改正案を参院に提出してきました。
 具体的には、「不当事項への対処に関する検査」の項目を設け、会計検査院が不当事項の是正措置や不正な行為をした職員の処分状況を検査することを規定。そのために、不当事項の指摘を受けた省庁や団体に対して、是正措置などの状況報告を義務付けるとしています。
 また、不適切な予算執行を行った職員に対しては、原則として「懲戒処分を要求しなければならない」と義務化。その上で、処分の決定については、事前に人事院から意見を聴く仕組みをつくり、公正で妥当な処分を行うようにしています。
 会計検査院法改正案は、いずれも審議未了、廃案となっていますが、公明党は今後も、不正経理に罰則を設ける不正経理防止法案とともに同改正案を国会に提出し、成立に全力を挙げる方針です。
事業仕分けより会計検査院の機能強化が有効
 民主党政権が進める事業仕分けには、何ら法律的な裏付けがないことを考えると、全体の予算に見直しなどについては国会での議論で、個別の無駄遣いの解消については、会計検査院の機能強化が必要だと考えます。
 そもそも会計検査医院は、国の収入支出の決算を検査するため、憲法第90条の規定に基づいて設置された機関です。内閣から独立して、省庁などの国の機関や国が資本金の2分の1以上を出資する団体などの会計を検査し、税金のムダ遣いや徴収漏れなどを指摘することになっています。毎年11月に前年度の検査報告をまとめ首相(内閣)に提出、内閣が検査報告とともに決算を国会に提出します。
 こうした法的な裏付けのある、強制力を持つ機関の活用が、事業仕分けよりより有効であることは火を見るより明らかです。
公明党提出の会計検査院法改正案の骨子

◆不当事項の指摘を受けた省庁・団体は、是正の状況や不正行為をした職員の処分内容などを会計検査院に報告しなければならない
◆会計検査院は、不正な予算執行を行った職員の任命権者に対し、その職員の懲戒処分を要求しなければならない(一部を除く)
◆任命権者は、懲戒処分をしようとするとき、あらかじめ人事院の意見を聴かなければならない