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子宮頸がんワクチン失神多発
読売新聞(2010/12/28)
 子宮頸(けい)がんワクチンの副作用として、気を失う例の多いことが、厚生労働省の調査でわかった。
 接種者の大半が思春期の女子で、このワクチン特有の強い痛みにショックを受け、自律神経のバランスが崩れるのが原因とみられる。転倒して負傷した例もあるという。同省は「痛みを知ったうえで接種を受け、30分程度は医療機関にとどまって様子を見るなど、注意してほしい」と呼びかけている。
 子宮頸がんワクチンは、肩近くの筋肉に注射するため、皮下注射をする他の感染症の予防接種より痛みが強い。昨年12月以降、推計40万人が接種を受けたが、10月末現在の副作用の報告は81人。最も多いのが失神・意識消失の21件で、失神寸前の状態になった例も2件あった。その他は発熱(11件)、注射した部分の痛み(9件)、頭痛(7件)などだった。<以下略>

12月28日付けの読売新聞に掲載された「子宮頸がんワクチン失神多発」という見出しで囲み記事は、その『失神多数』という表現や『肩の筋肉に注射…激痛』との見出しに、大いに違和感を感じました。
 この新聞記事は、厚労省の「22年度第8回薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会」(2010/12/6)で提出された資料に基づいて書かれています。
 厚生労働省医薬食品局安全対策課によると、「10代の少女は、他の世代に比べ感受性が高く、血管迷走神経反射性失神(いわゆる失神)の頻度が多い。この世代は、採血でも失神してしまうことがあります。失神は大抵の場合、しばらく時間をおけば回復する性質のもの」との説明でした。
 そもそも40万人のうち21人が失神したことを以て「失神多発」という表現は、統計学的に妥当なのか、「激痛」という余りにも主観的な言葉で、何を言いたかったのか、記事自体の意図がよく分かりません。
 子宮頸がん予防ワクチンには、失神のような副反応が一定程度あることは分かっていて、薬剤の基本的注意にも「ワクチン接種後に血管迷走神経反射として失神があらわれることがあるので、接種後30分程度は被接種者の状態を観察することが望ましい」と記載されています。
 子宮頸がん予防ワクチンへの不安をいたずらに煽る記事としか思えません。
 注意喚起が目的ならば、「失神そのものより、転倒などによる怪我に注意することが必要だ」と、書くべきではないでしょうか。
 いずれにしましても、専門家のこの記事に関するご意見を是非聞きたいと思います。