相次ぐ“掛け声倒れ”、人件費削減 実現の見通し立たず
 民主党政権の発足以後、わずか1年4カ月の間に公務員制度改革担当相が4人も入れ替わるなど、改革への本気度を疑うような姿勢が続いています。民主党政権は昨年の通常国会に、国家公務員法改正案を提出しましたが、改革の工程表もなく、全体像の見えない極めて不十分な内容でした。
 2009年の衆院選マニフェストで民主党が、公務員制度改革の目玉として打ち出した「国家公務員の総人件費2割削減」、それによる約1.1兆円の財源確保については、実現の見通しが全く立っていません。
 菅直人首相は、昨年の民主党代表選で「人事院勧告を超えた削減」を掲げていたにもかかわらず、フタを開けてみれば「勧告通り」。歳出の削減効果は約790億円と、掛け声倒れに終わってしまいました。
 さらに民主党政権は、労働基本権の一つである労働協約を結ぶための「協約締結権」を公務員に付与することで、従来の人事院勧告制度を廃止し、労使交渉によって人件費を削減させようとしていますが、かえって待遇改善や賃上げ要求が強まる可能性もあります。果たして、自治労など公務員の労働組合から支持を受けている民主党に改革ができるのか疑問です。
 また、人事院の廃止も検討されているようですが、人事評価などの中立・公正性が確保できるのか懸念が残ります。まずは、公務員について憲法に定められている「全体の奉仕者」との観点に立って改革のあり方を議論すべきです。
 一方、「天下り根絶」についても民主党は、マニフェストで「定年まで働ける環境をつくる」としていましたが、昨年提出の国家公務員法改正案は、民主党が野党時代に提出した「天下り根絶法案」に記載された「国家公務員の早期退職勧奨(肩たたき)の禁止」が盛り込まれず、事実上の「天下り自由化法案」と化してしまうありさまです。
 掲げる政策を次々と覆し、マニフェスト違反を繰り返す民主党政権に改革などできるはずがありません。
公務員の人件費削減に壁 天下り規制で50代大幅増、新卒枠減?
朝日新聞(2010/3/26)
参考写真 仙谷由人国家戦略相や原口一博総務相が公務員制度改革で苦慮している。マニフェスト(政権公約)に掲げた「天下りのあっせん禁止」を先行して決めた結果、50歳代の官僚数が大幅に増え、その分新卒採用を減らす必要が出てきたためだ。人件費総額の上昇も避けられず、「公務員人件費の2割削減」という公約にも黄信号がともっている。
 官僚機構は、課長、部長、局長と昇格するに従ってポスト数が減る。出世コースから外れた官僚は、所管の関連団体や企業に「天下り」してきた。再就職先を用意した上で早期退職を勧奨する「肩たたき」という慣行だ。勧奨退職者は年間2500人いる。
 鳩山政権は、公務員制度改革の第1弾で「官民人材交流センター」の廃止を決め、天下りの「あっせん」を禁止した。再就職先がないのに「肩たたき」を続けるのは難しいため、マニフェストに盛り込んだ「定年まで働ける環境」も整えていく方針だ。
 だが、あっせん禁止が先行した結果、勧奨退職者の扱いが宙に浮いてしまった。総務省の試算では、肩たたきをしないで公務員の定員数を守るには、2011年度の新卒採用者数を、09年度比で約44%少ない約4千人にする必要があるという。年功序列の給与体系のため、ベテランが残って新人が減れば、人件費は年900億円増える。
 原口氏は23日の記者会見で、民間企業への出向者の拡大に取り組む姿勢を見せた。民間出向で公務員数を減らし、新卒枠への影響を抑えるねらいだ。ただ、業績悪化に苦しむ民間企業に大量の官僚を受け入れる余地は乏しい。
 民間も含め、公務員の人事異動の柔軟化を目指す仙谷氏は、「早期退職勧奨は一つの手段としてある。民間で言えば希望退職みたいな制度を作る必要もある」と、公務員の自発的退職を促す方針。だが、「割り増しの退職金だけで辞めろというなら、再就職に有利な仕事ばかりをやる」(経済産業省幹部)と、士気低下を懸念する見方もある。