いかに多言を弄しても誠実さを欠けば国民を説得することはできない
 1月27日、衆院本会議で公明党の井上義久幹事長が代表質問を行い、当面する緊急課題や民主党マニフェスト、「政治とカネ」の問題など、民主党政権の政治姿勢を厳しく問いただしました。
 井上幹事長は、わずか1年前に「民主党が日本経済を破壊する」と断言した与謝野馨氏を無節操にも経済財政担当相に起用したことに対し、民主党の経済無策を証明するもの、と痛烈に批判。菅首相は「その指摘は当たらない。大きな志は同じ」と、恥ずかしげもなく開き直りました。
 「マニフェストありき」で迷走を重ねた揚げ句、2年連続で税収を上回る新規国債を発行、一段と国民にツケを膨らませる結果になった来年度予算案に対して、井上幹事長は、約束した歳出見直しに失敗した民主党政権の財政運営の限界を浮き彫りにしたと厳しく指摘しました。
 子ども手当に高速道路無料化、ガソリン税の暫定税率廃止など、民主党マニフェストの看板政策は財源の手当てに行き詰まり、国民と約束した期限内の達成は誰が見ても困難だと批判。井上幹事長はマニフェストの破綻を認め、撤回の上、国民に謝罪すべきと訴えました。
 しかし、首相は謝罪はおろか、引き続き実現を目指すと強弁。その一方で、マニフェストについては今後党内で再検証し見直す可能性を強くにじませました。
 公明党は、昨年12月、「新しい福祉社会ビジョン」の中間取りまとめを発表。政党間競争の枠組みを超え、真摯に社会保障のあるべき姿を検討するため、与党に対し早急な与野党協議機関の設置を提案しています。にもかかわらず、民主党は社会保障の基本政策を提示できていません。井上幹事長が「まずは民主党案を示すことが、すべての大前提」と指摘したのは至極当たり前です。
 それに対して菅総理は、「4月ごろまでに方向性を明らかにし、6月までに具体的な制度改革案と消費税を含む税制抜本改革案を提示したい」と答弁するに止まり、社会保障や年金の具体像の国民への提示に関しては、言及できませんでした。
 「いかに多言を弄しても誠実さを欠けば国民を説得することはできない」―。井上幹事長の指摘に首相が答えなかったことが、菅政権と国民とのズレを雄弁に物語っています。
 公明党の井上幹事長の菅首相の施政方針演説などに対する代表質問の要旨は次の通りです。

 民主党政権の政策的な矛盾や不誠実な政治姿勢、国民感情とのズレ。公明党は、あなたの政権担当能力に大きな疑問を持たざるを得ません。
 そして、あなた方民主党が「国民との契約」とうそぶいたマニフェストを修正するのであれば、国民・有権者に契約不履行を心からお詫びし、改めて信を問うべきです。それができないのであれば、総理の職を潔く辞すべきです。
 財政規律を無視し財源探しに明け暮れた予算編成、マニフェスト修正の暴言、そして消費税増税のための内閣改造と、その閣僚起用に見る議会人としての矜持の欠如。あなたが今、語るべきは、国家の危機ではなく、わずか4カ月で改造せざるを得なかった失政への謙虚な反省の弁です。
 あなたが強調する、消費税と社会保障の一体改革、平成の開国というTPP(環太平洋連携協定)などは、まさに内閣改造をせざるを得なかった事から生まれた副産物であり、現政権の延命のためのキーワードとして利用しているにすぎません。
 菅総理、そもそも、あなたは日本の針路を左右する政策を判断するための信任を国民から得ておりません。得たのは、先の代表選という党内での審判と、参議院選挙での不信任という洗礼ではないですか。
 「平成の開国」「最小不幸社会の実現」「不条理をただす政治」と、言葉は躍りますが、中身は具体性を欠き、その先にあるべき国の姿が、あなたから示されたことはありません。
 「今度こそ熟議の国会」と言いながら、その一方で、われわれ野党に対し「歴史への反逆」と挑発する、謙虚さの微塵もない、あなたのいわれなき高揚感に、私は現政権の劣化や、不安を感じないわけにはいきません。
当面する緊急課題・雪害対策
 昨年末から続く記録的な豪雪により、雪下ろし作業中の転落事故などで、すでに45人の方が亡くなっています。また各地で長時間の交通渋滞、孤立地区の発生など甚大な被害が発生しています。亡くなられた方々、被災された皆さまに対し、心からお見舞いを申し上げます。
 自治体では補正予算を組むなど復旧へ向けた取り組みが懸命に行われていますが、その後も大雪が続いていることから、財政支援はもとより、除雪作業や公共交通機関の復旧、生活に必要な電力などのライフラインの確保には、国による適切な支援が必要です。
 また、今回の豪雪で除雪体制の弱体化が浮き彫りになっています。命にかかわる除雪体制を今後どうするのか、総理に答弁を求めます。
家畜等伝染病予防対策
 昨年末から渡り鳥の飛来地を中心に野鳥の鳥インフルエンザ被害が発生しており、今月に入ってから、宮崎、鹿児島、さらに愛知県の養鶏場でも発生が確認されました。昼夜を徹して対応に当たっておられる関係者のご労苦に心よりお見舞いを申し上げます。
 政府に対し、拡大防止へ、迅速な殺処分や発生農場周辺での鶏や卵の移動制限と消毒、鶏舎への野生動物の侵入防止対策などに全力を挙げるよう求めます。
 また今後、拡大が心配される野鳥からの感染を防ぐため、第1に、正確な情報に基づく広報を迅速に行い、風評被害を防止すること。第2に、野鳥の監視体制を強化すること。第3に、養鶏農場へのウイルス侵入を防止するため鳥ネットの整備・点検を徹底すること。第4に、渡り鳥のルートや飛来地での発生状況などの情報共有について韓国、中国、ロシア各国と協力して行うことを求めます。
 また、韓国で感染拡大に歯止めがかからない口蹄疫についても、国内での水際対策の一層の強化と併せて、アジアにおける検疫・防疫能力向上をサポートする国際協力体制を強化すべきです。
 そのためには、現行の家畜伝染病予防法の抜本改正も必要と考えます。
景気・経済対策/司令塔も展望もなき菅政権
 日本経済は、依然としてデフレ状況から抜け出せないばかりか、足元の経済も雇用不安が増し、欧州をはじめ世界経済の先行きも不透明です。
 少子高齢化・人口減少社会の本格的な到来、そして新興国の台頭など世界経済の劇的な変化に対して日本はどう立ち向かうのか。民主党政権の司令塔なき経済無策では、その展望はまったく見通せません。
 「民主党が日本経済を破壊する」。これは菅総理がこのたびの内閣改造で任命された与謝野・経済財政政策担当大臣が、わずか1年前に発刊された著作のタイトルです。日本経済の現状はまさに、その通りになりつつあります。
 また仮に、総理が与謝野氏の経済政策を十分に認識された上で大臣に任命されたとすれば、民主党マニフェストを直ちに撤回すべきではありませんか。
 日本経済は、確かにマクロの数字だけを見れば、エコカー補助金やエコポイントなどの政策効果もあり、一時期の危機を脱した感はあります。
 しかし、地域経済やそれを支える中小企業の現状は、依然として厳しく、雇用はもちろん、そもそも仕事がない状況です。
 菅総理は、公共事業を2010年度18.3%の削減に続き、11年度予算案でさらに5.1%削ろうとしています。地域における雇用創出や需要創出の有効な方策もないまま、どう地域経済を回復させていくのか。社会インフラ整備の遅れも心配です。
 なぜここまで公共事業を大幅に削減するのか、地域経済やそれを支える中小企業の活性化をどのように推進するのか。
2011年度予算案、税制改正/再び借金が税収上回る異常さ
 来年度予算案は、総括すれば、“国民不在”“理念不在”“リーダーシップ不在”の中で、昨年同様「マニフェストありき」で迷走を重ね、国民生活の安心・安全のための予算とは程遠い内容であると断じざるを得ません。
 まずは、2年続けて新規国債の発行、いわゆる国の借金が税収を上回る異常な予算である点です。民主党は、歳出の見直しなどで財源はいくらでも生み出せると言ってきました。
 しかし、歳出の見直しはまったく進まず、結局、昨年と同じ44.3兆円もの新たな借金をつくる。総理、こんな手法で、どうして財政健全化ができますか。
 第2に、「成長戦略」も、その本気度がまったく見えません。
 成長戦略に重点配分するとした「元気な日本復活特別枠」は、本来の趣旨を大きく逸脱。「思いやり予算」など成長戦略とは無関係な予算が含まれるなど、“ごまかし”と“架空計上”がなされています。
 第3に、“マニフェストの破綻”がさらに明確になりました。特に2年目に達成・進捗すべき「子ども手当」「高速道路の無料化」「暫定税率廃止」などは、恒久的な財源手当ても不明確なままで、期限内の達成は到底困難です。
 第4に、税制抜本改革の全体像がまったく見えてきません。
 総じて、「足し算と引き算」だけの場当たり的、財源あさりの税制改正であると断じざるを得ません。
「新しい福祉社会ビジョン」中福祉・中負担、共助社会確立へ
 公明党は昨年12月、充実した「中福祉・中負担」の実現や共助社会を確立する「新しい福祉社会ビジョン」の中間取りまとめを発表しました。ここではセーフティーネットの機能強化や国民目線に立った制度改革、新たな福祉社会の方向性を提案しています。
 公明党は年金、医療、介護、子育て支援など、社会保障をより充実させるための安定的な財源として、景気回復などの前提のもとに消費税を含めた税制の抜本改革は必要との立場です。
 しかしその前に、あるべき社会保障の姿を示し、それを受けて必要な費用、財源を論議してこそ国民の理解を得られると考えます。
 そのために公明党は、まずは社会保障のあるべき姿、機能強化を検討するための「与野党の協議機関」を立ち上げるべきと提案しています。
 総理は施政方針の中で、社会保障の費用負担のあり方について「与野党間で協議を始めようではありませんか」と呼び掛けています。
 しかし総理、その前に民主党にはなすべきことがあるのではないですか。
 民主党は、年金制度を一元化して月額7万円の最低保障年金をつくると提案して以来、7年以上が経過した今も、具体案をまとめていません。後期高齢者医療制度についても「うば捨て山」と批判し、制度廃止を掲げたにもかかわらず、今度は13年3月末まで存続させると言っています。
 公明党の「新しい福祉社会ビジョン」に触れていただくことは結構ですが、まずは民主党案を示すことが、すべての大前提ではありませんか。
農林水産業/担い手育成へ大胆な仕組み
 菅総理が、突然「協議開始」を表明したTPPに対して、全国の農林漁業者、自治体関係者から批判の声が上がっています。
 総理は「平成の開国」を断行すると言われましたが、日本の全品目を通した平均関税率は世界で最も低い水準にあります。農産物関税に限っても11.7%とEUよりも低く、すでに世界有数の開かれた市場になっています。総理は、日本の現状について何か勘違いされているのではないでしょうか。
 加えて、自由化と農業の再生を両立させると言いますが、施設園芸、果樹、畜産などはすでに国際競争の中で戦っており、農産物の生産額ベースの自給率も70%に達するなど健闘しています。課題は水田稲作をはじめとする土地利用型農業の構造改革ですが、政府・与党からは具体策がまったく見えてきません。11年度予算案も構造改革を進める中身にはなっていません。
 日本農業に必要な事は、担い手、特に水田稲作をはじめとする土地利用型農業の担い手を育成することです。そのためには、二つの視点が重要です。第1に徹底した農地情報の整備と共有です。農地基本台帳を法定化するなど、農地情報の整備を進めずして、規模拡大も構造改革も進みません。
 第2は、新しく農業を始めようとする将来の担い手に対して長期的な支援を行う必要があります。農業技術を習得し、自立した農業経営者になるまでには数年間かかります。その間の生活費を保障するなど安心して農業に参入できる大胆な仕組みをつくることです。
 農業ビジョンを明確にする。特に農地情報の整備や担い手の育成・支援について、その行程を早急に示すべきです。
林業への対応
 国際森林年である本年、国内では国産の杉やヒノキの需要が高まり、林業復興の好機が到来している一方で、国内林業の後継者不足や高齢化により生産量が追いついていません。公明党が推進してきた「緑の雇用」などをテコに人材育成を一層進めることはもちろん、林業に欠かせない路網整備が急務です。森林情報の収集や路網整備計画の作成と併せて、公共財として必要な基幹的な路網は国による整備が必要です。
水産業への対応
 わが国は、水産資源の持続的利用の方法として、漁獲可能量(TAC)を設定していますが、現在のような一律の割り振りには疑問の声が上がっています。各県で調整できる仕組みが必要ではないでしょうか。現在、7魚種にとどまる対象魚種の拡大も検討すべきです。
地域発まちづくり
 私は地域活性化の一つの方策として、1次産業に支えられたまちづくりを一層推進すべきと考えます。
 日本の津々浦々で地域ビジネスが注目を集めています。例えば、徳島県上勝町の葉っぱビジネスなどです。上勝町は過疎化と高齢化が進む町ですが、一方で全国でも有数の地域活性型農商工連携のモデルとなっている町でもあります。
 1次産業を基盤とする地域産業が持続可能となるためには、地域に眠る資源と消費者ニーズをつなぐコーディネーターやプロデューサーの存在が不可欠です。地域活性化の中核を担う協同組合やNPOなどの育成・支援を大胆に行うべきと考えます。
科学技術立国/国の総力挙げ戦略・方針示せ
 いま、わが国は国際競争力が著しく低下する厳しい現実に直面しており、その基盤である科学技術の振興に、国の総力を挙げて取り組む必要があります。
 科学研究費補助金いわゆる科研費の来年度予算案について、減額の方向が一転、増額となったことは評価しますが、その過程については疑義を抱かざるを得ません。
 「何とかしろ」の総理の一言で増額が決まったと伝えられています。もしそれが本当なら、どういう戦略・方針に基づいて予算を組んだのか、そもそも菅内閣に科学技術研究の戦略がなかったのではないかと疑わざるを得ません。
 科学技術は天然資源に乏しいわが国にとって国を成長、発展させ、世界に貢献していく生命線です。
 当然のことながら研究には戦略性、中長期の一貫性が求められます。科学技術研究の戦略、また予算の確保についての総理の見解を求めます。
地域主権、地方議会の活性化/「義務付け・枠付け」の廃止
 民主党が公約の一丁目一番地と位置付けてきた地域主権改革は、政権発足から1年たった現在も遅々として進んでいません。
 地方自治体の自治事務について国が法令で事務の実施やその方法を縛っている「義務付け・枠付け」の見直しさえも進んでいません。
出先機関の廃止・縮小
 さらに、国の出先機関の廃止に向けて昨年12月に閣議決定されたアクションプランに、広域ブロックへの移譲推進が盛り込まれたものの、ブロックの運営自体の課題も山積しており、いまだ設立見通しの立たない地域が多くあります。さらに何をいつどれくらい移譲するのかもまったく明確になっていません。どの出先機関をいつまでにどう廃止しようとしているのか。明快にお答えください。
一括交付金
 マニフェストで民主党は「ひも付き補助金」を廃止し、地方が自由に使える「一括交付金」として交付する、としています。その考え方自体は否定しませんが、今回の一括交付金は少額であるのみならず、結局、継続事業に消化されるだけで、地方の裁量拡大に寄与するとはとても思えません。今後、段階的にひも付き補助金を廃止するというものの、将来的な配分や行程表・スケジュールははっきりせず、地方からは不満と不安の声が上がっています。一括交付金化の将来像とスケジュールを明確にすべきであります。
地方議会改革
 一部自治体で起きた首長と議会との対立などを契機に、地方自治の「二元代表制」における首長と議会のあり方等について、地方自治法改正の問題が浮かび上がっています。
 私たち公明党は、この課題を重く受け止め、住民の視点で改革を進めるべく、今月12日に「地方議会改革への提言」を発表しました。提言では、首長や行政に対する議会のチェック機能を強化するために、議長への議会招集権付与や通年議会化、今後、重要性を増す地方議員の役割・責務を踏まえて地方議員の法的な位置付けを明確にすべきとしています。
 また、議会と首長が対立した場合、第三者機関の調停や住民投票を行うなどのルール化も進めるべきと考えております。地方自治法改正について、総理の見解を求めます。
がん対策/検診受診率50%の達成めざせ
 がんによる死亡者は年々増え続け、1981年よりわが国の死亡原因の第1位になり、今では国民の3人に1人ががんで死亡しています。
 公明党は、がん対策を「国家プロジェクト」として取り組むよう訴え、07年4月に施行された「がん対策基本法」の制定に全力を挙げました。そして与党時代から、がん対策予算の増額を毎年実現してきたのも公明党であります。
 がん対策基本法の理念に基づき閣議決定された「がん対策推進基本計画」は、公明党の主張が3本柱として盛り込まれています。一つは、放射線治療や化学療法を普及させ患者自身が治療法を選択できるようにするための環境整備です。二つ目は、治療の初期段階から痛みを取り除く緩和ケアの実施。三つ目に、基礎データを把握するためのがん登録の推進です。
 基本計画は11年度までの5年間を対象として、数値目標を定めていますが、5年後の時点での目標達成度報告では不十分な結果になる恐れがあるため、中間報告を義務付けるよう公明党が提案し、昨年6月、中間報告が行われました。
 基本計画では、5年以内に「すべてのがん診療に携わる医師に緩和ケア研修を行う」ことや、「すべてのがん診療連携拠点病院で放射線療法・外来化学療法を実施できる体制を整備する」などのほか、10年後のがん死亡を20%減らす大きな目標を実現するため、11年度末までに「がん検診受診率50%をめざす」など、さまざまな目標を掲げ国民に約束しています。
 菅政権に、この目標を達成し、国民を、がんの恐怖から守るお気持ちはありますか。例えば、がん治療の切り札である早期発見のためには、がん検診しかありませんが、現状のがん検診受診率は25%程度。あと1年余りで受診率50%をどう実現するのか。そして、5年以内に医師への緩和ケア研修を終える目標についても、国民、患者の皆さまのために何としても実現すべきです。
高額療養費制度の見直し、自己負担限度額引き下げよ
 高額な医療費負担に苦しんでいる方がたくさんおられますが、現行制度は、中低所得者の自己負担限度額が重いことや要件に該当せず制度の恩恵を受けられないなど、患者の負担軽減を図る観点から制度の見直しが必要です。これまで公明党は、70歳未満の自己負担限度額の引き下げや、レセプト(診療報酬明細書)が2万1000円を超えない場合でも合算対象とすることなど、具体的な改善策を国会論戦の場で繰り返し求めてきました。
 しかし、政府の来年度からの対応は外来診療における現物給付化を決定しただけで、患者の要望の強かった自己負担限度額の引き下げは見送られました。総理、なぜ見送ったのですか。明確な答弁を求めます。
B型肝炎への対応
 去る1月11日、札幌地裁より和解に向けての所見が示され、政府も前向きに検討する方向と伝えられています。
 公明党はこれまで、命にかかわる問題は党派を超えて最優先で取り組むべきと主張し、C型肝炎患者の救済法や肝炎対策基本法の制定に尽力してきました。
 B型肝炎訴訟の全面解決に向け、政府は原告との和解、合意をめざし最大限の努力を行うとともに、患者の幅広い救済を行うため、新たな立法措置について、政府において早急に検討すべきと考えます。
外交・安全保障/ご都合主義的見直しは言語道断
 昨年末、新たな「防衛計画の大綱」が閣議決定されました。
 新・大綱では、「基盤的防衛力」に代わって「動的防衛力」という概念が採用されました。「基盤的防衛力」は、軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが「力の空白」となって周辺地域の不安定要因とならないよう独立国として必要最小限の防衛力を保有し均衡に配備するという、日本の防衛力整備の基本となってきた方針です。
 6年前に作成された現大綱では、「基盤的防衛力構想」の上に立って、テロや地域紛争などの「新たな脅威や多様な事態」に対処できるように「多機能で弾力的な実効性ある防衛力」を打ち出しました。これとどう違うのか。なぜ今「基盤的防衛力構想」を変えるのか。政府から明確な説明がありません。原則なき不明確な「動的防衛力」の強調に対して、これまでの憲法の恒久平和の原理に基づく専守防衛を逸脱するのではないかとの懸念さえ指摘されています。
武器輸出三原則等の見直し
 熟した議論などあったかに思えない大綱の策定プロセスで、総理のリーダーシップがあったかのように見られているのは、「武器輸出三原則等の見直し」の明記を断念したことです。しかし、これも明確な信念に基づく判断からなされたものではなく、政局的判断からなされたものであることは明白で、今後に火種を残しただけの先送りにすぎないといわざるを得ません。
 長年にわたる国会での安全保障論議の中から生まれ、衆参両院それぞれの国会決議でも「武器輸出三原則」は取り扱われてきました。つまり、国家の基本的なありように関わる極めて重要な原則です。それを見直すかどうかの判断は、その原則に基づく政策展開が果たしてきた効果を詳細に検証することが最初になされなければなりません。
 その上で、国民を巻き込んだ形での国会での徹底した議論が必要です。いわば、防衛計画の大綱よりももっと上位に位置する「平和国家の基本理念」ともいうべきものです。それを大綱の変更にあたって政府与党のご都合主義的な姿勢で見直そうというのは言語道断です。
普天間基地移設問題
 鳩山前総理の辞任の二つの理由のうちの一つが、普天間移設問題の失敗です。その後を受けて首相の座についた菅総理は、何が何でもこの問題の根本的解決を図る責務があります。例えば、地位協定の見直しをどう進めるのか等について、具体的な一歩が示されない限り、沖縄県民は政府民主党への疑念を晴らすことはない、と思います。総理の明確な答弁を求めます。
政治改革/国民の信頼失墜 首相の責任重大
 相次ぐ政治とカネの問題で国民の政治に対する信頼を失墜させた民主党政権、とりわけ総理の責任は極めて重大です。
 国会における鳩山氏、小沢氏の説明責任はいまだに果たされていません。
 昨年10月、小沢氏喚問に関するわが党議員の質問に対し、総理は「場合によれば御本人の意向に沿った形、場合によれば沿わないでもこれ(証人喚問)をやらざるを得ないという時には党として判断をしていきたい」と答えられました。また、報道によれば岡田幹事長が「国会での説明の場は政倫審と証人喚問の二つしかないので、残りは一つになる」と述べています。総理は、小沢氏にどう国会における説明責任を果たさせるのか。
 鳩山前総理については、実母から資金提供を受けた献金偽装問題をめぐって約6億円の贈与税を納付したものの、そのうち約1億3000万円が時効で還付されたと報道されていますが、それは事実でしょうか。もしそれが事実であれば、納税者である国民感情からいって、到底、納得できるものではありません。まさに与謝野大臣が指摘した通り「平成の脱税王」になるのではないですか。
 鳩山氏の修正申告を受けてどのような税務調査が行われ、結論はどうだったのか国民の前に明らかにすべきです。
 もし明らかにできないというのであれば、鳩山氏自ら国民の前で説明すべきだと思いますが、総理の見解を伺います。
国会議員の監督責任
 昨年11月、「秘書がやった」との政治家の言い逃れを許さないために、公明党が提出した政治家の監督責任を強化する「政治資金規正法改正案」についてわが党議員の質問に、総理は「次の通常国会のある時期までというところで、何らかの結論を出してお示しをしたい」と答えられました。いつまでも先延ばしせず、今国会で直ちに成立させるべきです。答弁を求めます。
企業・団体献金の禁止
 企業・団体献金の禁止も同様です。
 民主党は直近の衆・参マニフェストで企業・団体献金の禁止を掲げていました。ところが昨年、自粛していた献金の受け入れを再開しました。施政方針演説で総理は、政治改革の推進について、「それぞれの提案を持ち寄って、今度こそ国民が納得する具体的な答えを出そうではありませんか」と呼び掛けました。
 まるで人ごとのような言いぶりにはあきれるばかりです。総理、あなたが決断すれば実現できるのです。明快な答弁を求めます。
 最後に総理、私は今回の施政方針演説を聞いていて、あなたの言葉に謙虚さがまったくなかったことに正直驚きました。
 政権交代からわずか1年4カ月、昨年の参議院選挙における民主党惨敗の原因が、「期待を裏切った民主党」に対する国民の怒りだったことへの反省はないのですか。
 公明党は、誰よりも国民の声を真摯に受け止め、「闘う野党」として、真剣な議論を通して国民生活を守り、国益を守るために、全力で闘います。