
ダヴィンチは、内視鏡手術を支援するロボット。内視鏡手術は、体の切開部分を極小にすることが出来るため、患者の身体的負担を減らすことができます。反面、医師の手では難しい手術となるために、手術を支援するロボットが開発されました。
アメリカのベンチャー企業“イントゥイティブ・サージカル社”が製造するダヴィンチ。ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)の日本法人が、厚生労働省に製造販売を申請し、2010年度に承認され、日本でも一般外科や泌尿器科、婦人科などで利用できるようになりました。
ダヴィンチは3つのユニットで構成されています。操作部と本体はそれぞれ高さが約1.7m、幅が1m弱。本体には内視鏡のほか、電気メスなど手術器具を体内に入れるアームが3本搭載されています。操作部は、医師が椅子に座り双眼鏡ような3Dビジョンをのぞき込み、両手両足でダビンチを捜査します。モニター部は患部の映像や超音波エコー、心電図の画像などを映し出すほか、プロジェクターなどを装備し拡大映像を投影することも出来ます。

第1は、その操作性です。まったくの初めてこのロボットに触れた井手県議らですが、ほとんど説明なしにダヴィンチを操作することが出来ました。ダヴィンチは、操作レバーを操る手の動きを、一定の比率で小さく再現することができます。この比率を3分の1に設定してのデモでしたが、例えば、左右に3cm動かすと、アームの先端についたクリップは3cm動きます。手の動きをより微細な動きに再現することが簡単にできます。
第2は、アームのスムーズな可動性です。先端部は多関節機能となっており、ほとんど人間の手と同じくらいの可動性があります。痒いところに手が届くという実感がしました。
第3は、患部を3次元画像(3D)で映し出す技術のすごさです。内視鏡の先端にCCDカメラを2台搭載し、操作部にある左右のディスプレーにそれぞれ画像を送ることによって、患部を立体的に確認できます。デモでは、小さなゴムの突起に、輪ゴムを欠ける操作を体験しましたが、前後の距離感が手に取るよう実感することが出来ました。
ダヴィンチは、欧米ではすでに10年前から医療現場で広がり始めました。2000年に米食品医薬品局(FDA)から腹腔鏡手術用として承認され、累計販売台数は、世界で約1500台に達しています。しかし、日本ではまだ18台しか導入されていないと説明されました。
課題は価格3億円、保険はまだ不適用
こうした手術支援ロボットの普及には、まだ課題もあります。
1つは価格の高さ。ダヴィンチの本体価格は3億円程度という途方もない金額です。さらに装置の保守・点検に年間2500万円程度がかかります。
2つには、健康保険の適用にならないということです。費用の全額が患者負担となります。当然、患者の体に優しい手術でありながら、ダヴィンチを使っても保険請求点数に加算はありません。
こうした最新技術の導入を、地方の基幹病院に導入することは、医療技術の進歩にとって重要な視点です。さらに、意欲あふれる優秀な医師を確保する方策としても、積極的に検討する価値があります。