参考写真 厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の児童部会が1月19日、親から虐待を受けて児童福祉施設などに入所中の子どもについて、父母の親権よりも施設長の判断を優先する制度の創設を柱とする報告書案を取りまとめました。政府はこれを受け、今通常国会に児童福祉法改正案を提出する方針です。
 親権とは未成年の子に対して、父母らが持つ財産などの保護監督や教育に関する権利・義務のことです。児童福祉法の改正は、実質的な親権の一部制限につながりますが、子どもの命にかかわる緊急事態の場合もあり、やむを得ない措置といえます。
 現行の児童福祉法でも、施設長の親権代行が規定されています。しかし、施設長のこうした権限と、父母の親権のどちらが優先されるかは明記されていなかったため、施設入所後も、父母が親権を盾に「子どもを強引に連れ去る」「必要な医療を受けさせない」「高校などへの入学を認めない」といったケースがあり、子どもたちは再び虐待を受ける危険にさらされていました。
 一方、親権に関しては、法制審議会(法相の諮問機関)の専門部会が、児童虐待を防止するため、親権を2年間停止できる制度の新設を求めた答申案を既にまとめています。政府は、この答申案に基づく民法改正案も今国会に提出する方針です。
参考写真 もちろん、二つの法律の改正だけで児童虐待が根絶できるわけではありません。
 仮に親権が一時停止や一部制限になった場合、この期間に虐待する親を更生させ、今後の親子関係の修復ができるかどうか、その取り組みが重要になってきます。
 母親の育児不安や社会・地域からの孤立化が虐待に結び付いていることを踏まえ、子育てに悩む親に対する相談支援事業の強化などのきめ細かい対策も必要になります。学校や警察、地域社会の協力も欠かせません。
 また、児童虐待の相談件数が増える現状に対し、現場を担う児童相談所の職員が慢性的に不足している。その解消も急ぐべきです。
 公明党は、児童虐待防止法の成立をリードするなど児童虐待防止対策に一貫して取り組んできました。今後も、あらゆる政策を総動員して取り組むよう政府に迫っていきます。
児童養護施設:1部屋の定員を3分の1に
 虐待や親の病気などのために家庭で暮らせない子供が生活する児童養護施設は、全国で575カ所あり、約3万人の子どもたちが暮らしています。
 今回、厚生労働省は関連省令を改正し1948年以来「1部屋15人まで可」としてきた居室定員を見直すことを決定しました。上限を4〜6人とする方向で検討しています。
 現行の「児童福祉施設最低基準」では、居室の居住定員と面積について、年齢に関係なく「1部屋15人以下、1人あたり面積3.3平方メートル以上」とされています。
 1人当たりの面積は、国の「住生活基本計画」は「最低居住面積水準」を10歳以上は1人約5平方メートルとしています。養護老人ホーム(1部屋原則1人、10.65平方メートル以上)や、障害者支援施設(4人以下、9.9平方メートル以上)より低い基準で、児童養護施設の住環境整備の立ち後れが目立っています。