行財政改革を徹底し、地方自治体の財政を健全化させる手法として注目されているのが、「公会計制度」の改革です。
日本の官庁会計は明治時代の「大福帳」以来、「単式簿記・現金主義会計」に基づいて制度設計されてきました。現在でも、自治体の会計では、地方自治法に基づき、単年度の収入と支出を現金の動きとして現金主義の単式簿記による、予算と決算の手続きをとっています。
しかし、この「単式簿記・現金主義会計」は、会計管理の簡便化は図れるメリットはありますが、財務会計としては不備があるために、企業会計ではほとんど使用されていないのが実状です。
つまり、自治体が現時点でどのくらいの資産をもっているのか。施設のコストがどれだけかかっているのか。将来負担すべき負債がどのくらいあるのか。こうした問いかけに、単式簿記と現金主義会計では、答えられないという大きな欠点があります。
現状の公会計の欠点を是正し、財政の「見える化」を進めるのが公会計改革であり、「複式簿記・発生主義会計」の導入の取り組みです。

日本の官庁会計は明治時代の「大福帳」以来、「単式簿記・現金主義会計」に基づいて制度設計されてきました。現在でも、自治体の会計では、地方自治法に基づき、単年度の収入と支出を現金の動きとして現金主義の単式簿記による、予算と決算の手続きをとっています。
しかし、この「単式簿記・現金主義会計」は、会計管理の簡便化は図れるメリットはありますが、財務会計としては不備があるために、企業会計ではほとんど使用されていないのが実状です。
つまり、自治体が現時点でどのくらいの資産をもっているのか。施設のコストがどれだけかかっているのか。将来負担すべき負債がどのくらいあるのか。こうした問いかけに、単式簿記と現金主義会計では、答えられないという大きな欠点があります。
現状の公会計の欠点を是正し、財政の「見える化」を進めるのが公会計改革であり、「複式簿記・発生主義会計」の導入の取り組みです。

その具体的事例を東京都に見てみたいと思います。
都議会公明党などのリーダシップより、東京都は、2006年度より全国の自治体で初めて「複式簿記・発生主義会計」を導入しました。
これにより、都の「隠れ借金」一兆円が明らかになり、翌年度にはほぼ解消することに成功するなど、都の財政は飛躍的に改善されるキッカケとなったといわれています。
現在の公会計では、費用や収入の出し入れしか把握できません。そのために、税金を投入して建設した建物などの資産の現時点での価値が掌握できません。建物など資産には使えば使うほど老朽化し、価値が落ちていくという実態があります。これを把握するのが減価償却という考え方です。
現金主義会計では減価償却の考え方を取り入れないため、東京都では施設の資産価値がどれだけ落ちているか、裏を返せば、何年後に施設を更新していけばよいのかという認識がなされない状態が続いていました。減価償却により施設の耐用年数の見積もりができれば、将来の建て替え計画を策定することも可能となるし、建て替えに備えて基金の積み立てもできます。東京都はこのような考え方より、社会資本整備積立金を4000億円積み立てることができました。
また、東京都の決算貸借対照表を見ると驚くべき数字に遭遇します。例えば、平成22年度の決算ベースで、「退職給与引当金」が1兆2346億に達します。職員の退職手当が将来の東京都の財政に甚大な影響を与えることが手に取るように分かることになり、そのために対策の必要性が都民にも知らされることになります。
反面、茨城県ではこうした公的資産の評価をリアルタイムで行うことが出来ません。一つの例を上げれば、平成8年1月に着工し、平成10年12月に竣工した県庁舎、県議会議事堂、県警察本部庁舎の総事業費は周辺道路の整備などを除くと757億円でした。完成後12年が経過し、この建物の価値はどのようになっているか、現在の公会計システムではつぶさに県民が知ることが出来ません。
また、もし茨城県が複式簿記による発生主義公開制度を当初から採用していたならば、住宅供給公社やTX沿線開発などの土地資産の含み損は、これほど莫大な金額な金額にふくれ上げる前に清算できたはずです。
一般企業であれば、複式簿記と発生主義会計を用いるのは当たり前です。お金が出ていったときに資産になるのか費用になるのか、また、お金が入ってきたときに負債なのか収入なのかを勘定科目により処理していきます。これにより、企業の財政状態や経営成績を明らかにすることができるのです。
単式簿記と現金主義会計に頼っていると、施設を建て替えるたびに、退職者が発生する毎に、その年度の税収で足りなければ、借金をして賄うという行き当たりばったりのやり方になってしまいます。
さらに重要なことは、現時点での財政の状況を出来るだけリアルタイムに把握することと事業毎のミクロ的分析が不可欠であるということです。
現在、総務省が指針を出している「総務省方式改訂モデル」でも、単式簿記・現金主義的会計を決算後に読み替える方式であるために、この課題に十分答えることが出来ません。公会計改革を財政改革、行政改革の大きな推進力とするためには、現在の単式簿記、現金主義会計の読み替えに過ぎない「総務省方式モデル」では、その実を果たすことは出来ません。
東京都では現在、複式簿記をシステム化し、都全体のデータを会計別、局別、部別、さらには事業別にまで落とし込み、貸借対照表や行政コスト計算書を作成しています。これにより一つひとつの事務事業を客観的に評価し、事業の見直しを行うことができるようになりました。
「基準モデル」的手法の東京都方式に移行することは、初期投資が莫大になる、あるいは他の自治体との整合性がとれず比較検討が難しくなる、など欠点もあることは否定できません。しかし、こうしたリスクに挑戦しても、「総務省モデル」「総務省改訂モデル」の導入に止まるのではなく、東京都方式による公会計改革に着手すべきだと考えます。
(このブログ記事は、総合月刊誌「潮」2011年3月号「都議会公明党の“見える化”で借金一兆円を解消」東山邦宏著、「第三文明」2011年1月号「“財政再建”への道はまず“財政の見える化”から」東山邦宏、竹谷のり子対談、を参考にして掲載しました)
参考:東京都の新たな公会計制度
都議会公明党などのリーダシップより、東京都は、2006年度より全国の自治体で初めて「複式簿記・発生主義会計」を導入しました。
これにより、都の「隠れ借金」一兆円が明らかになり、翌年度にはほぼ解消することに成功するなど、都の財政は飛躍的に改善されるキッカケとなったといわれています。
現在の公会計では、費用や収入の出し入れしか把握できません。そのために、税金を投入して建設した建物などの資産の現時点での価値が掌握できません。建物など資産には使えば使うほど老朽化し、価値が落ちていくという実態があります。これを把握するのが減価償却という考え方です。

また、東京都の決算貸借対照表を見ると驚くべき数字に遭遇します。例えば、平成22年度の決算ベースで、「退職給与引当金」が1兆2346億に達します。職員の退職手当が将来の東京都の財政に甚大な影響を与えることが手に取るように分かることになり、そのために対策の必要性が都民にも知らされることになります。
反面、茨城県ではこうした公的資産の評価をリアルタイムで行うことが出来ません。一つの例を上げれば、平成8年1月に着工し、平成10年12月に竣工した県庁舎、県議会議事堂、県警察本部庁舎の総事業費は周辺道路の整備などを除くと757億円でした。完成後12年が経過し、この建物の価値はどのようになっているか、現在の公会計システムではつぶさに県民が知ることが出来ません。
また、もし茨城県が複式簿記による発生主義公開制度を当初から採用していたならば、住宅供給公社やTX沿線開発などの土地資産の含み損は、これほど莫大な金額な金額にふくれ上げる前に清算できたはずです。
一般企業であれば、複式簿記と発生主義会計を用いるのは当たり前です。お金が出ていったときに資産になるのか費用になるのか、また、お金が入ってきたときに負債なのか収入なのかを勘定科目により処理していきます。これにより、企業の財政状態や経営成績を明らかにすることができるのです。
単式簿記と現金主義会計に頼っていると、施設を建て替えるたびに、退職者が発生する毎に、その年度の税収で足りなければ、借金をして賄うという行き当たりばったりのやり方になってしまいます。
さらに重要なことは、現時点での財政の状況を出来るだけリアルタイムに把握することと事業毎のミクロ的分析が不可欠であるということです。
現在、総務省が指針を出している「総務省方式改訂モデル」でも、単式簿記・現金主義的会計を決算後に読み替える方式であるために、この課題に十分答えることが出来ません。公会計改革を財政改革、行政改革の大きな推進力とするためには、現在の単式簿記、現金主義会計の読み替えに過ぎない「総務省方式モデル」では、その実を果たすことは出来ません。
東京都では現在、複式簿記をシステム化し、都全体のデータを会計別、局別、部別、さらには事業別にまで落とし込み、貸借対照表や行政コスト計算書を作成しています。これにより一つひとつの事務事業を客観的に評価し、事業の見直しを行うことができるようになりました。
「基準モデル」的手法の東京都方式に移行することは、初期投資が莫大になる、あるいは他の自治体との整合性がとれず比較検討が難しくなる、など欠点もあることは否定できません。しかし、こうしたリスクに挑戦しても、「総務省モデル」「総務省改訂モデル」の導入に止まるのではなく、東京都方式による公会計改革に着手すべきだと考えます。
(このブログ記事は、総合月刊誌「潮」2011年3月号「都議会公明党の“見える化”で借金一兆円を解消」東山邦宏著、「第三文明」2011年1月号「“財政再建”への道はまず“財政の見える化”から」東山邦宏、竹谷のり子対談、を参考にして掲載しました)
