4月5日、茨城県と太平洋沿岸の9市町村は、菅直人首相と東京電力にたいして、「放射性汚染水の海洋放出等に対する抗議」文を送付しました。4日夜から、福島第1原発では低レベルの放射性汚染水の海洋放出が始まりました。この異例の事態を受けて、抗議文では、「原発事故で本県の農畜産、水産業への影響は極めて深刻」と指摘し、「政府発表は低レベル廃液とのことだが法令規制値の数百倍、通常では考えられない行為」と強く抗議しています。さらに、汚染水の排出やベントは住民が適切に対応できるよう関係自治体に事前連絡すべき、と情報開示を強く求めました。
放射性汚染水の海洋放出等に対する抗議

原子力災害対策本部長 内閣総理大臣 菅 直人 様
東京電力株式会社取締役会長 勝俣 恒久 様
平成23年4月5日
茨城県知事 橋本 昌
日立市長 樫村 千秋
高萩市長 草間 吉夫
北茨城市長 豊田 稔
ひたちなか市長 本間 源基
鹿嶋市長 内田 俊郎
神栖市長 保立 一男
鉾田市長 鬼沢 保平
大洗町長 小谷 隆亮
東海村長 村上 達也

 東京電力福島第一原子力発電所の事故においては、数回にわたる爆発と施設の損傷、さらにはベント作業などによる放射性物質の放出により、本県では大気汚染や水道水への影響など様々な面で大きな被害を被っている。 
 特に、出荷制限や風評被害による農業・畜産業・水産業への影響は極めて深刻なものがあり、その被害は日一日と大きくなりつつある。
 県民は原発事故の行方に先の見えない不安を抱えており、長期間現在のような状況が続けば県民の生活基盤そのものが破壊されるのではないかと懸念している状況にある。
 このような中、昨日から、放射性汚染水11,500トンの海洋放出が続いている。
 水産業従事者が多く、海水浴場等に多くの観光客が訪れる地元自治体としては、その影響を大いに危惧しているところである。
 政府発表では「低レベノレ廃液」とのことであるが、放出されたのは法令の規制値の最大で数百倍という高濃度な汚染水であり、通常では考えられない行為である。こうした汚染水の排出は住民の健康や環境に大きな影響を及ぼすものであり、やむを得ない緊急措置であったとしても申請から20分後に容認されているのは、極めて疑問である。
 我々地元自治体としては、汚染水の排水やベントに当たっては、住民が適切に対応できるよう、関係自治体などに事前に連絡してから行われるべきものと考えており、ベントに続いて今回の排出作業にあたっても、我々に何らの情報も提供されない中で行われたことに強く抗議するものである。
 国及び東京電力株式会社にあっては、今後、十分な情報開示に努めるとともに、地元自治体と十分な連携をとり、誠意ある対応を行うよう強く要請する。
 今、茨城県の漁業者は地震による被害、津波による被害、そして福島第1原子力発電所事故による放射能被害と風評被害という四重苦に苛まされています。漁業どころか日々の生活さえも続けられない状況にまで追い詰められていると言っても過言ではありません。
 4月4日、北茨城市の平潟漁協が北茨城で1日に採取したコウナゴから、1キログラム当たり4080ベクレルの放射性ヨウ素が検出されたことを公表しました。放射性ヨウ素の暫定基準値は野菜類が2000ベクレル/キログラムと定められていますが、魚類についてはその半減期が短いこともあり基準値が設定されていませんでした。厚生労働省は同日付で、茨城県側に食用にしないよう要請し、新たに基準値を定めることになりました。4月6日、政府は放射性ヨウ素の魚介類に関する暫定基準も、2000ベクレル/キログラムとすることが決定されました。
 また、4月5日には、北茨城沖で4日採取したコウナゴから暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されました。セシウムの基準値は1キロ当たり500ベクレル。4日採取したコウナゴからは526ベクレルのセシウムが検出されました。
 この事態を受けて、茨城県内の漁協関係者らでつくる県漁業関係東北関東大震災災害対策本部は、県内のコウナゴ漁を一斉に休漁することになりました。
 また、5日には、漁を再開したはさき漁協所属の漁船が、茨城県沖で取った魚の水揚げを、銚子漁港に拒否される事態が発生しました。
 水揚げを拒否されたのは、はさき漁協所属の底引き漁船「第五松丸」。第五松丸は5日早朝、神栖市沖35キロ付近で、キンキやボタンエビなどを取り、銚子漁港の銚子魚市場に水揚げしようとしたところ受け取りを拒否されました。
 同日、はさき漁協所属の他の漁船が、千葉沖で取ったサワラは水揚げが許されており、茨城県沖と言うだけで入荷が拒否されると言うことは、法的にも問題があると考えられます。風評被害もここまで極まったかという感があります。
 ここに至っては、茨城県内の漁業者に対して、一定期間全面休漁を要請し、その間の所得補償を全面的に国と東京電力が行うよう強く求めるべきです。