不安払拭は重要、なぜ、浜岡原発だけ停止なのか説明は不十分
参考写真 筋書きのない菅直人劇場が続いています。5月6日夜、菅直人首相の緊急会見が行われ、中部電力へ浜岡原発の停止を要請したことが告げられました。
 中部電力は、その首相の要請を受け入れました。日本にある54基の商用原発のうち3基が、最低でも2年は止まることになります。しかし、なぜ浜岡原発だけが停止の対象なのか。ここ茨城の東海2号路は大丈夫なのか、一言の言及もありません。
 政府は浜岡原発の停止要請の理由を、大規模地震発生の確率が圧倒的に高いという特殊事情によるもの。一方、原子力発電に関する基本政策に変わりはないとの見解を示していています。
 東電福島第一原発の危険な状況が続く中、この福島原発より危険と言われ続けてきた浜岡原発を止める判断は、間違いではないと思います。その判断自体は支持します。
 しかし、その判断はあまりにも唐突で、地元との話し合いもなし、その理由や判断の基準の説明もなしでは、政権の延命策と批判されても仕方ありません。
 茨城県の橋本昌知事は5月11日の定例記者会見で、浜岡原発停止要請について、次のように厳しく批判しました。「正直言って、びっくりしたというところです。理由、根拠を我々もまだ詳しく知りませんので、報道等で見ている範囲では、東海地震については今まで言われてきた範囲内でありまして、それ以上に何かが変わったわけではありません。ただ、今回の東日本大震災で福島の事故が起きてしまったということが一番大きな変更点だと思いますが、昭和51年に東海地震の指摘があって以来、ずっといつ起きてもおかしくないということが言われてきたわけでありまして、そこで、今、あのような形の要請がされたということについては、政府として、随分踏み込んだ判断をされたと思っております。ただ、先ほど申し上げたように、その根拠、どういう理由で、今回、あのような極めて大きな決断をされたのかがまだ私どもとしては十分に承知していませんので、それを知らされた後でなければ、今後の県としてのさまざまな活動をしていくに当たっても判断ができないのではないかと思います」と……。
 5月10日、公明党の山口那津男代表は、浜岡原発の停止要請について、大要次のような見解を発表しました。
  • 浜岡原発の立地状況からすると、東海地震や津波に対する国民の強い懸念があったことは事実であり、政治が不安や懸念を払拭する対応を検討する姿勢は重要だ。しかし、首相が突如、(記者会見をテレビ中継して)発表したことについては警鐘を鳴らさなければいけない。
  • まず首相の発表は、あまりに唐突で説明不足の印象だ。中部電力や大口使用の事業者、関連する中小企業やそこで働く従業員、一般家庭、関係自治体、他の電力会社やその他の原発立地地域など、さまざまに影響が及んでいく。これらに対する政府の配慮、説明が全く十分でない。
  • 民主党政権や菅内閣は(新成長戦略の柱として)日本の原発システムを外国に(売り込みを)推進してきたが、政権のこれからのエネルギー政策の考え方が整理されないまま、突如あのような要請をしたことも大きな疑念を呼んだ。また、大きな地震の可能性や(敷地内の)活断層の存在は、かねてから議論、指摘されていた。なぜ、各方面へ調整もせず、あのタイミングで発表しなければならないのか。
  • 首相は法的根拠がないことを知りながら要請している。営業の自由や基本的人権にかかわる制約をする場合は、立法府(国会)の意思に基づいて行政が行うのが法治主義の原則だ。法的根拠のないことを自らの判断で行うことには、大局的に見ると危惧を感じざるを得ない。「政治主導」に名を借りた、誤った行政権の独断専行と言わざるを得ない側面もある。
  • こうした対応は東京電力福島第1原発事故の対応にも見られる。菅政権の暴走とも言うべき行為に対して、立法府としてしっかりチェックし監視を強めていかなければならない。衆参両院に原発の対応を含め東日本大震災に関する特別委員会を設置し、常時議論する体制を整え、行政権を厳しくチェックし監視する機能を高めることを提案したい。復旧・復興を切れ目なく国会が監視し提言していく場とすべきだ。
  • (結果として浜岡原発の停止が決まったことについて)住民や国民が指摘する危機への懸念が払拭される点は、一定の評価がなされるべきだが、結果が良ければ、どういうやり方も許されることにはならない。