復興への司令塔“復興庁”を創設。特区設置し被災地の意向を最大限に尊重
 5月19日、公明党は「人間の復興」を基本理念に掲げ復興庁や復興特区の創設などを盛り込んだ東日本大震災復興基本法案の骨子を発表しました。
 山口代表は、基本理念について「被災地の人々の『人間の復興』をめざすもので、憲法にある個人の尊厳に基づく幸福追求権を根拠とし、生存権を実質的に進めていくとの考えだ」と指摘しました。
 そのための具体策として、「一元的な推進力、司令塔として復興庁を設け、企画立案・調整だけでなく事業の実施までも行える権限を与え、その推進役として復興担当相を設ける」と述べ、被災地域と連携し迅速に対応するため地方支分部局を設置する考えを示しました。
 復興財源については「『復興債』を発行して他の会計と分離して透明化を図り、償還の道筋を示していくことが重要だ」と述べ、骨子には併せて「歳出の徹底した見直しと削減を図る」と明記しました。
 被災地域の創造的な復興を推進するため「復興特区」の創設を盛り込んだことについては、「規制(緩和)や税制、金融の特例を設けて、地域の自主性を生かす仕組みにした」と強調。復興の推進には、被災地域の住民の意向を最大限に尊重する考えを示しました。
【復興基本法案骨子のポイント】
  • 復興は「人間の復興」を基本理念とする
  • 国は基本理念にのっとり復興基本指針を定める
  • 地方公共団体は基本理念・基本指針を踏まえ復興計画を策定、実施する
  • 内閣に施策を一元的に実施する復興庁を設置する
  • 首相は復興庁を所管する復興担当相を任命する
  • 復興財源を確保するため歳出の徹底した見直しと削減を図る
  • 国会の議決を経て復興債を発行する
  • 被災地域を「復興特区」に指定する
公明党の復興基本法案骨子

1、目的
この法律は、被災地域が広範にわたる等極めて大規模なものであるとともに、地震および津波ならびに原子力発電所の事故による複合的なものであるという点において未曽有の大災害となった東日本大震災の復興に取り組むに当たり、基本理念を定めるとともに、国および地方公共団体の責務と国民の努力、復興支援を一元的に実施する東日本大震災復興庁の設置、復興の財源、および被災地の迅速かつ創造的な復興を可能にするための復興特区制度の創設に関する事項を定めることとする。
2、基本理念
(ア)東日本大震災からの復興は「人間の復興」を基本理念とする。人間の復興とは、一人一人の人間に光を当て、日本国憲法第13条に定められるところの「個人の尊厳」「幸福追求権」ならびに第25条に定められるところの「生存権」に基づくものである。
(イ)東日本大震災からの復興に当たっては、国の内外の英知を結集して、これを推進することとする。
(ウ)東日本大震災からの復興の推進に当たっては、被災地域の住民の意向を最大限尊重しつつ、これを行うこととする。
(エ)被災地域の復興後の姿については、「支えあう社会」「共生社会」としての21世紀の地域社会の範となるべく、先駆的取り組みを集積することとする。
(オ)原子力発電所事故による災害を受けた地域の復興については、事故による深刻かつ長期にわたる影響等を十分に勘案しつつ、これを推進することとする。
3、国および地方公共団体の責務、国民の努力
(ア)国は、基本理念にのっとり、東日本大震災復興基本指針を定めなければならない。
(イ)地方公共団体は、基本理念にのっとり、かつ基本指針を踏まえ復興計画を策定し、実施しなければならない。
(ウ)国民は、基本理念にのっとり、被災地域の迅速かつ創造的な復興ならびに被災者への支援に努めるものとする。
4、東日本大震災復興庁、復興担当大臣および東日本大震災復興委員会の設置
(ア)政府は、別に法律で定めるところにより、内閣に東日本大震災からの復興に関する施策を一元的に実施する東日本大震災復興庁(以下「復興庁」という)を設置するものとする。
(イ)内閣総理大臣は、東日本大震災からの復興に関する施策を一元的に実施する復興庁を所管する専任担当大臣を任命するものとする。
(ウ)復興庁は、次に掲げる事務をつかさどるものとする。
(1)東日本大震災からの復興に関する企画および立案ならびに総合調整に関する事務
(2)東日本大震災からの復興に関する施策の実施に関わる事務
(3)その他復興に関し必要な事務
(エ)復興庁には、行政組織の内外から幅広く人材を登用することとする。
(オ)復興庁は、被災地域に地方支分部局を置き、復興庁の事務を分掌させることができる。
(カ)政府は、復興の施策に関わる事項等の調査審議のため、復興庁に東日本大震災復興委員会を設置する。
(キ)東日本大震災復興委員会は、次に掲げる事務をつかさどるものとする。
(1)復興担当大臣の諮問に応じて復興の施策に関わる重要事項を調査審議し、必要と認められる事項を復興担当大臣に提言すること。
(2)被災地域の復興の施策の実施状況を調査審議し、必要な意見を随時復興担当大臣に述べること。
(ク)東日本大震災復興委員会委員長および委員については、関係団体の長および優れた識見を有する者のうちから、復興担当大臣が任命する。任命に当たっては、委員会の提言に、女性、子ども、障がい者等多様な社会的立場からの意見が反映されるよう、最大限の配慮がなされなければならない。
5、復興財源
(ア)政府は、復興に関わる歳出の財源を確保するため、復興関連施策以外の施策に関わる歳出の徹底した見直しと削減を図ること。
(イ)政府は、東日本大震災からの復興に関わる歳出の財源に充てるため、財政法の規定(第4条1項)に関わらず、国会の議決を経た金額の範囲内において、復興債を発行できることとする。
(ウ)復興債は、他の国債と区分して経理するとともに、資金の流れの透明化を図り、その償還については、道筋を明らかにしなければならない。
(エ)国は、東日本大震災からの復興に関わる施策を強力に実施するため、必要な措置を講じて、民間資金の活用を図ることとする。
6、復興特区
(ア)政府は、別に法律で定めるところにより、被災地域の迅速かつ創造的な復興を推進するため、被災地域を「東日本大震災復興特別区域」(以下、「復興特区」)として指定するものとする。
(イ)国は、復興特区においては、地方公共団体からの申請に基づき、法律・政省令で規定している規制の特例措置の整備、税制・金融制度に関わる特例制度の整備、その実施のために必要な措置を行うことができる。
(ウ)復興特区における規制・税制・金融制度の特例措置の整備の申請は、復興特区内の県および市町村が復興庁に対し行うこととし、国と当該県および市町村との協議を経て、特例措置の整備を速やかに実施することとする。
(エ)復興特区においては、復興の施策に関わる地方公共団体の事務について、政省令で規定する事項の条例委任の特例を認めることとする。
7、附則
(ア)この法律は、公布の日から施行する。
(イ)この法律は、東日本大震災からの復興が実現されたと認められるに至った時は、廃止するものとする。