公明党が強く求めていた東京電力福島第1原発事故に伴う学校の校庭などの放射線被曝量基準値(年間20ミリシーベルト)の見直しについて、5月27日、高木文部科学大臣は記者会見で、福島県内の学校で子どもたちが受ける放射線量を、今年度は、当面、年間1ミリシーベルト以下を目指すことを表明しました。
 さらに、1時間当たり1マイクロシーベルトを超えた学校は、校庭の表面の土を取り除く費用のほぼ全額を国が負担することになりました。
 会見で、高木文部科学大臣は、学校での屋外の活動を制限する放射線量の目安は、これまでどおり年間の累積で20ミリシーベルト以下としながらも、「当面、年間1ミリシーベルト以下を目指す」としました。
 公明党は、昨日(5月26日)政府に提出した「東日本大震災復旧復興ビジョン」で、学校の放射線量基準の見直しと国費による校庭の表土処理実施を求めていました。
■学校放射線基準の見直し
・年間20ミリシーベルトとした学校での放射線量基準や保育所等での暫定基準を速やかに撤回し被曝量を最小化するよう努めること。
・子ども達の生活実態に即した放射積算線量の実測評価を強化すること。
■校庭等の表土処理による安全性の向上
・放射性物質に汚染された校庭・公園等の表土の処理方法について、子どもの健康を守るためにより厳しい基準を設定し表土を除去するなど、安全性の向上に取り組むこと。
参考写真
 子どもの放射線量の限界についての文科省などの対応をまとめてみました。
 文科省は4月19日、福島県内で子どもたちが学校で安全に過ごすための放射線量の限度について「年間20ミリシーベルト未満」という目安を発表しました。詳しくは、子どもたちの受ける放射線量の限界を年間20ミリシーベルトと暫定的に規定。そこから16時間が屋内(木造)、8時間が屋外という生活パターンを想定して、1時間当たりの限界空間線量率を屋外3.8マイクロシーベルト、屋内1.52マイクロシーベルトとし、これを下回る学校では年間20ミリシーベルトを超えることはないとしました。
 世界の放射線医学などの研究者でつくるICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に基づいて、日本では「一般の人が浴びても差し支えないとされる1年間の被ばくの基準は、1ミリシーベルト」という基準が採用されています。
 一方で放射線は、年間100ミリシーベルトを超えなければ「健康への影響は確認できない」とされています。100ミリシーベルトを越えるとがんになる確率が0.5%増えるとの研究がありますが、それ以下ではどのような影響があるかは、現時点で分かっていないのが現実です。
 ICRPが年間1ミリシーベルトという基準を設定したのは、「放射線は浴びないのに越したことはない」という発想があるからです。ICRPは被曝は極力避けるべきだとして、放射線管理を徹底することを各国に求めているのです。
 また、ICRPはこれとは別に、原子力市発電所の事故のような「緊急時」の値も参考として示しています。「緊急時」において、原発の周辺に住む人たちの被ばくが年間1ミリシーベルト以下に抑えられない場合、多くても年間20ミリシーベルトから100ミリシーベルトの範囲にとどまるよう対策を講じるべきだとしているのです。
 この緊急時の目安である20ミリシーベルトという値で、政府は4月11日に計画的避難区域の根拠を定めました。
 さらに、ICRPはまた「事故が収束したあとの復旧期」になり、住民がその土地に住み続ける場合は、年間の被曝量を1ミリシーベルトから20ミリシーベルトまでにとどめるべきだ、と示しています。
 そして、長期的にはもともとの基準である年間1ミリシーベルト以下に抑えるよう提唱しています。
 今回の学校での放射線量の目安は、ICRPの「復旧期」の指標のうち、上限にあたる年間20ミリシーベルトを採用したものです。
 ICRPは子どもと胎児については放射線に対して感受性が高く、生涯のリスクは大人と比べて3倍になるとしています。しかし、基準に使われる放射線量に年齢による区別は設定していません。それなのに、なぜ、文科省が20ミリシーベルトという基準を設けたのか、納得のいく説明は今まで全くありません。
 逆に、基準を1ミリシーベルトに設定してしまうと、多くの学校で学校生活が出来なくなり、その対策費が莫大になってしまうから、との憶測がまかり通ってしまいます。