参考写真 6月10日、公明党の井上義久幹事長は、二重ローン・リース契約問題について、党プロジェクトチーム(PT)が取りまとめた対応策を発表しました。
 二重ローン問題では、既存の借金のほか、東日本大震災に伴う住居の建て直しなどで新たな借金を抱える事態が懸念されています。
 対応策は、基本認識として(1)住み慣れた地域に住み、働き続けられるよう最大限の支援策を用意する(2)国が主導して、新旧債務への対応を通じた重層的な救済スキーム(仕組み)を準備する(3)震災被害の深刻さを踏まえ、現行の法制度の枠を超えた特例的な措置も講じる―と提示。その上で、中小企業や農林水産業の事業ローンと住宅ローンなどの個人ローンに対する具体策を提言しています。
 事業ローン対策の柱の一つが公的機関(東日本大震災被災中小事業者再生支援機構=仮称)による金融機関からの債権買い上げです。機構は債務免除のほか、事業再生に向けた専門家の派遣など事業再生への支援を幅広く行うこととします。支援対象は被災地での事業継続の意思を持ち、再生の見通しがある事業者などです。
 既往債務(リース契約含む)の支払いを一定期間(例えば10年)猶予することも対策の柱。猶予期間に国が利子補給を行うための基金創設も盛り込みました。
(写真は液状化のために不等沈下してしまい傾いた新築の家)
 一方、個人ローンに対しても、新たに住宅を取得する場合、一定期間(同)の支払い猶予と国による利子補給を提案。金融機関の債務免除を促すため、無税償却(税負担のない損失処理)ができる基準「個人向けの債権放棄ガイドライン」の策定を訴えています。
 このほか、新たな住居の確保に向け低利・無利子で融資できる制度の拡充や復興公営住宅の整備も提言しました。
 記者発表の席上、井上幹事長は、今回の対応策について「与野党の協議を通じて実現をしたい」と述べ、与野党協議を積極的に呼び掛けていく意向を強調しました。今後、相談が増える事態に備え、「できるだけ早く成案を得たい」とし、「政治、政局がどうあろうと必要なことはきちんとやる。国会がその責務を果たすのが基本だ」との考えを示しました。
東日本大震災における二重ローン問題への対応策<要旨>
1・被災中小企業などに対する支援スキーム
○震災の特殊性に鑑み、既存の仕組み(中小企業再生ファンドなど)とは別に、被災された中小企業、農林水産関係者などの事業再生を支援するための新たな公的な「機構」(仮称・東日本大震災被災中小事業者再生支援機構)を設立する。
○機構は、被災された中小企業、農林水産関係者などに対する金融機関の既存債権の買い上げを行う。あわせて、債務免除や債務の株式化、劣後債権化、債務保証、出資、融資、専門家の派遣・助言など、幅広く事業再生を支援する。
○金融機関等が被災事業者の既往債務の支払いを猶予した場合、一定期間(例えば10年)国が利子補給を行う(利子補給のための「基金」を創設)。
○政策金融機関における長期にわたる元本返済措置・猶予を認める貸付制度を拡充する(据置期間5年以内→10年以内など)。
あわせて、既往債務と新規借入れの一本化・借換制度を創設する。
○被災中小企業等が事業再生に必要な設備投資のための新規のリース取引を円滑に進めるため、リース契約に係る信用補完制度を創設する。
○中小企業の再生及び既存債務の整理にあたっては、中小企業再生ファンドや中小企業再生支援協議会、企業再生支援機構などを積極的に活用する。
○債務免除を行った金融機関等の無税償却の要件緩和、被災事業者の債務免除益の非課税措置
○金融機関が個人事業者に対し債務免除を行った場合に無税償却等ができるよう「個人向けの債権放棄ガイドライン」を策定する。
○公的機関による被災者中小事業者向けの長期の低利(無利子)の融資制度
○民間金融機関等による被災中小事業者向け低利(無利子)融資への利子補給制度創設
2・被災者個人の住宅(自動車)ローンの負担軽減のための支援スキーム
○新たに住宅を取得する場合について既往ローンと新規の借り入れによる負担を軽減するため、民間金融機関が既往ローンの支払いを猶予した一定期間(例えば10年)、国が利子補給を行う(利子補給のための「基金」を創設)。
○金融機関が住宅ローンの債務免除を行った場合に無税償却等ができるよう「個人向けの債権放棄ガイドライン」を策定する。
○住宅金融支援機構の「災害復興住宅融資」(低利<無利子>)の拡充
○新たな住宅等の確保にかかる税制措置の拡充(印紙税、登録免許税、固定資産税等)
○復興公営住宅の整備