参考写真 7月21日、東海第2原子力発電所の東日本大震災の影響と安全対策に関する説明会が、日立市の多賀市民会館で開催されました。平日の夜にも関わらず、約150名の市民が熱心に説明に耳を傾けました。
 東日本大震災で東海第2発電所に到達した津波は推定5.4メートルで、海水ポンプエリアが浸水し、3台ある非常用発電機1台が使用 できなくなりました。
 設置者である日本原子力発電(原電)は、4月末までに緊急安全対策を終えており、現状安定停止している状態で原子炉建屋にまでに達する津波が再来したとしても、炉心や使用済み燃料の破損を防ぐことができると説明しました。
 その上で、さらなる安全性を確保するために、◎海水ポンプの浸水阻止◎使用済み燃料プールへの給水機能強化◎非常用発電機を冷却する可搬型ポンプの配備◎中央制御室用の仮設電源配備◎非常用発電機の代替電源設備確保◎電源喪失を想定したアクシデントマネジメント訓練の強化などを図るとしました。
 原電の説明後の質疑応答では、「さらなる安全向上策の実施期限を明示すべきだ」、「使用済み燃料はどのくらい備蓄されているのか。青森の再処理施設の稼働見込みが明確でない中で再開は難しい」、「東海原発が万一の事態になった場合の影響の大きさを考えると、再稼働は難しいと思う」、「原電からの直接周辺住民に対する情報公開が不足しているのではないか」、「日立市で2回の説明会は少なすぎる。影響の及ぶ20キロ、30キロ圏まで広げた説明会が必要」、「大規模事故を起こした場合、周辺住民をどこに逃がすのか。原電では補償ができるのか」などの質問が寄せられました。
説明会で原電が配布したQandA
東北地方太平洋沖地震に伴う東海第二発電所状況について数多くのご意見、ご質問をいただきました。その中から特に関心の高いと思われるご質問と、その回答についてご紹介いたします。

参考写真質問:対策として15メートル以上の津波を想定しなくていいのか?
回答:実際に15メートルの津波が福島第一原子力発電所(福島第一)を襲っているので、まず15メートルの対策を実施することとしました。今回の津波について再現解析を実施し、その結果を基に東海第二発電所で想定すべき津波高さを議論していきます。現在、東海第二発電所に15メートルの津波が来たとしても、今回とった安全性向上対策によって、発電所は安全に守られます。
質問:東海第二に津波があと1メートル高かったら、福島第一と同じ事故現象になったのか?
回答:今回、東海第二発電所には、最大で5.4メートルの津波が来ましたが、6.1メートルの壁で守られました。今回の津波より1メートル高い約6.4メートルの津波が来たと仮定しますと、東海第二発電所の全ての海水ポンプが浸水することにより全ての海水による冷却機能は失われますが、安全系などの重要な設備の電源盤は原子炉建屋付近(標高8メートル)に配置されていることから、外部の電源をつなぎ込むことが可能であったと考えます。
質問:炉心損傷や使用済燃料プールの損傷防止として、海水を注入する必要が生じた場合、誰が判断するのか?また、格納容器ベントの判断は誰がするのか?
回答:現場の状況を速やかに把握し、必要な対応を指示することのできる発電所長が判断します。
質問:今回、冷温停止までに時間が掛かったいるが、どうしてか?
回答:原子炉が自動停止して、通常であれば1日〜1日半程度で冷温停止になりますが、今回は3日半かかっています。それは津波の影響で3台ある非常用ディーゼル発電機のうち1台を停止しましたが、原子炉圧力は約1日半でほぼ大気圧にまで下がっています。また、炉内温度は100℃近くまで下がっています。その後、復旧した外部電源に電源を切り替える操作を優先したため、冷温停止までに時間がかかりましたが確実に冷却していました。
質問:今回の地震の揺れに対して発電所の設備は大丈夫だったのか?
回答:地震直後に試験可能な全ての安全設備を試験し、機能に異常がないことを確認しています。今回の地震による原子炉建屋の揺れは基準地震動の値を下回っていました。Sクラスの機器・配管については現在解析にて確認作業を実施しています。B・Cクラスについては現在順次点検を実施中で必要に応じて修理します。また、現在、第25回定期検査を実施中ですので、この中でも確認をしています。
質問:地震後の発電所の情報を速やかに提供すべきでは?事故が起こった時の住民への連絡方法はどうなるのか?
回答:原子力発電所災害時の対応については、茨城県地域防災計画(原子力災害対策計画編)で決められています。この中には、地域の皆様への広報、避難指示、避難所等についても記載があり、県・市・町・村が行なうことになっています。ただし、今回の地震を教訓として、今接、地元の皆様にどうしたら安心していただけるのか、自治体とも相談していきたいと考えています。
質問:電源車より恒久的な空冷式発電機のほうが信頼できるのでは?
回答:発電所構内に海抜20メートル程の高さの場所がないため、場所の確保を含め空冷式の非常用大容量発電機等を恒設化することを検討しています。
質問:30年以上使った原子炉にさらに多くの対策を施すのが適切か?
回答:東海第二発電所は1978年から営業運転して32年ほど運転しています。日本の原子力発電所は30年を超える前に高経年技術評価を行い保全計画に反映します。津波対策等に加え、今後も高経年化対策もきちんと実施し、地元の皆様にもきちんとご説明をして、ご理解を賜りたいと思います。
質問:非常用ディーゼル発電機は、どのくらいの時間継続運転できるのか?
回答:非常用ディーゼル発電機3台をフルに運転して、7日分の燃料を発電所内に保管しています。今回の地震では、油の供給が滞りましたが、毎日満タン状態を確保しました。今後は、タンクローリーを確保して、調達をより容易にしていきます。
質問:東海第二発電所の起動はいつ頃になるのか?
回答:現在第25回定期検査を進めていますが、これに加え、十分な津波等の対策を順次実施し、地震の影響について心配ないことを確認した上で、これらを十分理解していただけるよう説明を行うことを優先します。
質問:日本で原発に代わって自然ネルギーでまかなえるのか?
回答:太陽光、風力等の自然エネルギーの活用を促進していく必要があると考えますが、現状では風力や太陽光による発電は、原子力発電と比較して広大な敷地が必要になるだけでなく、それらの稼働率は、風力では約2割、太陽光ではそれ以下であるため、具体的には原子力発電所1基分を賄うには太陽光で山手線の内側程度、風力ではその3倍以上の広大な面積と設備が必要になると言われています。