
8月12日、NEXCO東日本(東日本高速道路株式会社)は、東日本大震災による被災者支援及び当面の復旧・復興支援として、平成6月20日より開始された東北地方無料措置の実施状況について、記者発表を行いました。
それによると、無料措置後の主な断面交通量(ある一カ所を通過する車両の交通量)は、東北道の仙台南IC〜仙台宮城IC間で日平均54,200台/日、措置前に比べ1.3倍に増加したのに対して、常磐道の水戸IC〜那珂IC間では日平均50,700台/日に達し、措置前の1.6倍に増加しました。
インターチェンジの利用状況では、無料措置対象エリア内のICの出口交通量は、日平均50.7万台で、措置前に比べ1.2倍に増加しています。増加は無償化対象の南端のICで顕著で、東北道の白河インターは日平均で6600台となり、無償化前の2.4倍に増加。常磐道の水戸ICでは日平均18,800台で、措置前に比べ2.1倍に増加しました。水戸ICではその内、15,700台は無料措置車で、実に通行量全体の8割に達しています。
それに対して、ETCの利用率は22.4%に減少し、無償措置前より50.6%と半分以下になりました。


(写真は、狭い側道を利用して強引にUターンする佐賀ナンバーの大型車)

こうした一連の調査結果は、政府・民主党の政策立案能力のなさを白日の下に曝す結果となりました。
8月13日付けの読売新聞は、その社説で「東北高速無料化『ただ乗り』許せば意味がない」と、「菅民主党政権のポピュリズム体質のひずみが、また一つ露呈した」と厳しく指摘しています。
この社説の結論を待つまでもなく、民主党が公約に掲げる全国の高速無料化は、利用しない人にも負担を強いるおかしな制度です。今回の東北無料化での混乱を、見直しの契機とすべきです。
東北高速無料化 「ただ乗り」許せば意味がない
(2011/8/13読売新聞社説)
菅民主党政権のポピュリズム体質のひずみが、また一つ露呈したと言えるだろう。東北地方の高速道路無料化に便乗したトラックの「ただ乗り」問題である。
西日本から東京方面などへ向かう長距離トラックが、わざわざ遠回りして無料化の対象区間で乗り降りし、高速料金を浮かせるという“裏技”が横行している。
トラックを対象とした無料化は本来、輸送コストを引き下げて被災地向けの物流を円滑にすることが目的だった。
ところが、復興支援とは無関係のトラックが制度の不備を突き、ただ乗りを繰り返している。料金所から走行車線まで続く長い渋滞に、一般ドライバーからは不満の声が上がっている。
一方で、被災地の運送業者などは無料化を歓迎している。国土交通省は地元の意見や実態を調査し、無料化による副作用の方が大きいと判断したら、トラックの無料化を打ち切るべきだろう。
そもそも東北無料化の制度自体に無理があったのではないか。
6月20日から始まった無料化は、被災者が乗る車と、トラックなど中型以上の車が対象になった。東北全域と茨城、新潟両県の一部の高速20路線で乗り降りした場合、料金がかからない。
被災者は自治体の被災証明が必要だが、トラックは不要で、走行目的もチェックされない。途中で料金所を通過しない路線を選べば、全区間を無料で走れる。
例えば、こんな具合だ。
関西から名神、中央、圏央、北関東などの高速を走り、無料化対象の常磐道水戸インターチェンジ(IC)で降りる。すぐにUターンして水戸ICから乗り、本来の目的地の東京方面を目指す。
国土交通省が先月下旬に調査したところ、午前7時から午後7時までに水戸ICを降りたトラック約6000台のうち、約800台が1時間以内に戻ってきた。10台のうち1〜2台は、便乗トラックの疑いがあるという。
IC付近の狭い通学路や生活道路に大型トラックがあふれ、危険なUターン走行や騒音を訴える声が相次いでいるのも問題だ。
周辺の国道はUターン禁止になったが、トラックは沿道の商業施設駐車場などで転回しており、事態は一向に改善していない。
民主党が公約に掲げる全国の高速無料化は、利用しない人にも負担を強いるおかしな制度だ。今回の東北無料化での混乱を、見直しの契機とすべきである。