参考写真 太陽光や風力などによる発電促進を目的とした再生可能エネルギー特別措置法案が、民主・自民・公明の3党が修正で合意し今国会で成立する見通しとなりました。
 公明党が掲げる再生可能エネルギー社会への一里塚となることが期待されます。
 日本の再生可能エネルギー比率は、水力を含めても10%程度に過ぎず、原子力発電への依存度を減らすには、まだまだ力不足です。法施行は来年7月で、1年先の話になりますが、風力や太陽光などで発電した電力をすべて電力会社に買い取るよう義務付けており、各方面からの参入に弾みがつくことが期待されます。
 3党合意の主なポイントは二つあります。一つ目は買い取り価格設定の透明性確保、二つ目は電力の大口需要者や低所得者、被災地への負担軽減措置です。
 ヨーロッパの先進事例を見ると、再生可能エネルギー普及の最大のポイントは価格の設定です。太陽光以外は1キロワット時当たり20円程度、太陽光はそれ以上とした経産省の試算に対し、新たに発電事業に参入しようとする新規発電事業者側からは、さらに高い買い取りを求める要望が出されています。高ければ、これら電力は一定程度普及することが見込まれます。しかし、高値に安住して技術革新が進捗しないことも考えられる。新規参入者が経営努力を怠り、そもそも既存電力に比べて高いとされる発電コストの低減が進まない恐れもあります。この、価格の設定に客観性を担保することが大切です。
 修正前の政府案では、価格の設定を、ほぼ経済産業相に委ねる内容でしたが、これでは裁量行政の範囲を出ません。このため、公明党、自民党の主張で、買い取り価格ならびに、買い取り価格算定の基礎に用いた数や算定の方法まで細かく国会報告を義務付けました。
参考写真 また、政府による恣意的な価格の決定がなされないよう、中立の第三者機関として「調達価格等算定委員会」を新設し、委員の任命には国会の同意を求めることとしました。
 さらに、政府案では、買い取り価格の種類について、住宅用と住宅用以外の太陽光発電、太陽光以外の発電の3種類という大ざっぱな分類でしたが、修正案では、欧州の先進事例に倣い、きめ細かな価格設定を行うよう条文に盛り込んでいます。
 このほか、経産相による最終的な価格決定の前には環境相や国土交通相、農林水産相との協議を経て、消費者担当相の意見を聞くよう法律で定め、電気事業者には、買い取りに要した費用を電気料金に過度に上乗せしないよう経費削減の努力義務を課しています。
 修正案は、徹底して価格決定過程の透明性を高めたことで、政府案とは全く次元の違うモノとなりました。
 また、買い取り費用は電力会社が電力料金に上乗せできます。経産省試算では1キロワット時当たり0.5円、標準家庭で月150円程度の値上げが見込まれます。この負担をどのように軽減させるかも重要な視点となります。
 特に、電気料金が上がれば中小企業を含む電力多消費産業には過度の負担となり、企業の海外流出による産業空洞化や国際競争力の低下が懸念されていました。このため、電気の使用にかかる原単位(1キロワット時当たりの売上高)が製造業平均の8倍を超える事業者を対象に電気代への料金転嫁額を8割以上、減額します。財源については、国民への負担転嫁がなされないよう、エネルギー特別会計で賄うなど必要な予算上の措置を講ずることを、法案に明記しました。
 低所得者への配慮についても、付帯決議に盛り込まれ、東日本大震災の被災地の企業や家庭には、復興が妨げられないよう電気代の上乗せを2013年3月末まで免除します。
 このほか、見直し規定も付則に盛り込まれています。見直しは、(1)来年にも予定されるエネルギー基本計画の変更時点(2)基本計画の変更ごと、または少なくとも3年ごと(3)2020年度までに抜本的見直し―の3段階で行われます。
(写真上:茨城県企業局が水戸浄水場に設置したメガソーラー発電機、写真下:神栖市の海上に設置された風力発電機)