参考写真 8月25日、東京電力株式会社の西澤俊夫社長は、福島第一原発事故発生後初めて県庁を訪れ、事故に関して謝罪しました。これに対し、橋本昌知事は、事故の早期収束、事故に関する迅速・適切な情報開示、早急な損害賠償金の支払等について、各団体とともに申入れを行いました。
 この日の西澤社長の来県は、7月4日、皷紀男筆頭副社長らが謝罪に訪れた際に、井手よしひろ県議らが「西澤社長または勝俣会長が茨城に来る予定は決まっているのか?」と厳しく追及したことを受けて実現しました。
 午前10時から県庁内の庁議室で行われた謝罪と申し入れには、茨城県の橋本知事をはじめとして、田山県議会議長、豊田北茨城市長(県市長会副会長)、野高河内町長(県町村会長)、県JA中央会加倉井会長、県漁連小野会長、県商工会外山会長、県ホテル旅館組合村田理事長などが出席しました。
 冒頭、西澤社長は「茨城県の皆さまに多大なご迷惑、ご心配、それからご不安をお掛けいたしましております。心からお詫び申し上げます」と、深々と頭を上げ謝罪しました。
 その上で、原発の安定停止への努力と補償の迅速化に務めていく姿勢を強調しました。
 安定停止に向けては、「原子炉を冷温停止状態にする工程表ステップ2を成し遂げるのが責務。循環水処理などで高い線量の水を減らしていく作業を進めます。また、汚染水が海に流れ出ないよう遮水壁の設置作業も始めた」と説明しました。
 賠償問題については「9月に請求の受け付けを始め、10月の早期に本払いを始めたい。賠償に社員3千〜4千人を投じ、グループ社員も含めその倍の数であたりたい」と述べ、算定基準や手続き、日程などを8月30日に公表する方針を明らかにしました。
参考写真 これに対して、橋本知事は西澤社長に対して6項目にわたる申入書を手渡しました。
 また、「東電として、謝罪説明というものが大変遅れているしまっているということについては、大変遺憾に思っている。被害を受けさせる、あるいはまた、迷惑を掛けたらまず謝りに来るというのが普通ではないかと思っています。まだまだ、当事者意識といいますか、自分のせいというよりは、地震・津波のせいだという意識が強いのではないか。茨城県民は、はらわたが煮えかえっている状況です」と、怒りを露わにしました。
 さらに、「地震・津波による被害から着実に回復を遂げようとしているところを、原子力事故によりことごとく足を引っ張られている。今回の原発事故については、一刻も早く収束させること。これが一番に願いであります」と訴えました。さらに、「住民の不安や不信をこれ以上拡大させないためにも、事故に関する情報開示を適切にすること。被害者の生活を元に戻すため、イメージダウンの影響も踏まえながら、積極的な補償を実施すること。原子力損害賠償紛争審査会の“中間指針”に基づく損害賠償と“原子力事故被害に係る緊急措置法”に基づく仮払いと相互の連携を図り、賠償金ができる限り早く、全額支払われるようにすること」の3点を要望しました。
 引き続き参加者から各々の立場で、西澤社長への要望が述べられました。
 田山県議会議議長は、「(茨城県内の)観光地は惨憺たる状況。今年は、大洗町に夏は来ませんでした。(東電は)現場におもむいてしっかりと現状を把握していただきたい。相談窓口を地域地域、あるいは産業、県民向けの出前相談の窓口をしっかり作ってもらいたい」と語りました。
 豊田北茨城市長は、「(東電には)9回目の陳情となる。8月18日に線量計を購入してほしいと要望したところ、無理であると(拒否の)回答を得ただけで、後は回答がありません」と、東電の姿勢を厳しく批判しました。そして、「今日は、社長さんにお土産を持ってきました」と語り、ごみ焼却灰を詰めた袋を示しました。「(この焼却灰が)毎日3トン出る。茨城県には20カ所あるんです」「茨城県には約千の小中高等学校がある。2センチ(校庭の地面を削って)除染すると(茨城県では)56億円掛かるんですよ」と茨城県や北茨城市が置かれている厳しい現状を力説しました。「皆さん方が(原発の)安全神話をつくったんですよ。補償弁償するのは当たり前のことです」と結びました。
 野高河内町長は、「東京電力はどこにあるのでしょうか。5カ月も経たないと茨城まで来られない」と、東京電力の対応の遅さを痛烈に批判しました。さらに、「河内町には農産物の直売所がある。去年産の米が凄く売れている。今年の米については大変な不安がある。行動を起こしてください。目に見える行動を。よろしくお願いいたします」と訴えました。
 加倉井県JA中央会会長は、「JAは217億円を請求しています。今のところ27億円程度しか支払いが行われていません。先程の説明によると、全額10月に支払われるという理解でよろしいですね。そこを確約をお願いしたい」「新たな問題として、米について、暫定基準の10分の1とはいえセシウムが検出されました。これはどうゆう影響を及ぼすか、生産者として非常に心配しております。これに対して東電はどういう対応をなされるのか、お聞かせいただきたと思います」と、強い口調で西澤社長に詰問しました。
 村田県ホテル旅館組合理事長は、「全体の稼働率が8割減となっている。一刻も早く補償の問題をお願いしませんと、自殺者も出てくるのではと心配しています」と窮状を訴えました。小野漁連会長、外山県商工会長も、原発の一刻も早い安定と補償の早期完全実施を訴えました。
 一連の発言に対して西澤社長は、「申入書の課題には、最大限取り組んでいく。被害者に対する補償については、中間指針に基づく本格的な補償の手続、算定基準などを8月30日に公表し、9月に請求の申し込みを受け付け、10月に支払を行う。放射線のモニタリングなど、地域の安全・安心のためにお手伝いできることは何でもやっていく。情報の開示はしっかりと取り組んでいく」などと、出席者への要望に対し回答しました。
(写真は茨城県のホームページより転載させていただきました)
参考:東京電力への申入書