参考写真 東北3県や茨城県などの東日本大震災の被災県においては、住宅が全壊したり、津波により流失したりして居住する場所が無くなってしまっている方が多く発せしています。
 国は災害救助法により、応急仮設住宅の建設を進めましたが、用地の確保などの問題があり全ての需要に応えることが出来ていません。そのために、被災者が民間賃貸住宅に入居した場合、家賃などを一定限度内で国が補助する制度=民間賃貸住宅の借上げ制度が、早くから東北3県では導入されていました。
【民間賃貸住宅の借上げ制度の概要】
  • 災害救助法による応急救助は、県が、現に救助を要する被災者に対して行うものとの考え方に沿って、被災者に、県が民間

  • 賃貸住宅を借り上げて提供した場合に、災害救助法の適用となり、その費用に対して国庫負担が行われる。

  • すでに被災者名義で契約したものであっても、その名義を県または市町村名義の契約に置き換えた場合、国庫負担の対象となる

  • 民間賃貸住宅借上げの場合の国庫負担対象経費は、敷金、礼金、仲介手数料等の入居に当たっての費用、撤去の際に必要な費用、並びに、月ごとの家賃、共益費及び管理費となる。

  • 月ごとの家賃については、一戸当たり月額6万円とする。また同一住居への入居者が5名以上の場合は、月額9万円とする。
  • 民間賃貸住宅借上げ予定期間は2年間とする。
参考写真 東北三県には、厚生労働省援護局からは数度にわたって民間賃貸住宅借上げ制度の取り扱いについて、具体的な通達が発せられていましたが、茨城県には具体的な制度導入の見解が示されてきませんでした。
 そのために、茨城県では、実際に被災した茨城県民と茨城県内に避難した東北3県の被災者の整合性を図るために、東北の被災者にも民間賃貸住宅の借上げ制度が適用されていませんでした。
 こうした現状を問題視した県議会公明党では、国や県に対して一刻も早く制度の創設を強く働きかけてきました。
 7月になって、厚労省より茨城県も借り上げ制度の対象になるとの明確な見解が示され、茨城県では市町村毎に制度導入の準備に入りました。
 しかし、市町村によっては借上げ制度の対象者を7月末日までにすでに民間賃貸住宅に入居しているものと規定したり(高萩市)、月額家賃を4万円と設定したり、制度の趣旨が徹底できない状況が続いていました。
 特に、県は7月末日以降の新規の入居者を対象にすることに慎重な姿勢を崩さず、これから壊れた住宅を取り壊して新築などを行おうとする被災者がこの制度を使うことは出来ないとしてきました。
 井手よしひろ県議は、公明党の石井啓一政調会長を通じて、厚労省の援護局の見解をただしたところ、9月20日までに新規の申請も受け付けられることを確認しました。
 こうした紆余曲折を経て、県内の33市町村が制度の運用を開始しました(10月1日より開始する市町村も含む)。
 こうした制度導入の混乱は、国が茨城県に対して明確な通達等を怠ったことに原因があります。茨城県の18万4000戸という被害住宅件数を、国は過小評価していると言わざるを得ません。
 9月30日付け毎日新聞の茨城版には、井手県議が連係を取りながら支援を行ってきた福島から避難されたご一家のこの半年のご苦労が掲載されています。参考のために長文ですが引用させていただきます。(なお、プライバシー保護のため個人名は伏せさせていただきました)
ようやく普通の生活へ
民間賃貸住宅借り上げ制度:日立市も来月開始

毎日新聞(2011/9/30)
 東京電力福島第1原子力発電所のある福島県大熊町から事故の影響で日立市に避難してきた美容師、Tさん一家が、事故から半年が過ぎてようやく、「普通の生活」へ向けた第一歩を踏み出そうとしている。同市が10月から被災者向けの民間賃貸住宅借り上げ制度を始めることになり、市が避難所としているビジネスホテルからアパートに住居を移すめどがたったためだ。東北3県で早くから実施されていた同制度の適用が遅れた背景には、県外からの避難者と被災者を同時に抱える本県ならではの複雑な事情があった。
 「日立市でも民間借り上げができる予定ですので、10月末で避難所を閉めます」。Tさんは9月上旬、県の職員からそう告げられた。福島県双葉郡に5店舗を展開していた美容店で勤務していたTさんは、3月12日に大熊町を出て、避難先を転々とした。4月上旬ごろから日立市内の新たな店で以前と同じ従業員と共に働き、家族4人で市の避難所となっているビジネスホテルで生活してきた。
 「ホテルの人にはよくしてもらった。でも、やはり普通の生活とは違う」と冨沢さんは言う。一刻も早い生活基盤の確保のため、県営や市営住宅の入居を考えた時期もあったが、小学3年と5年の娘2人がホテル近くの小学校に通い出したことから、校区内にない県営・市営住宅は選べなかった。また民間賃貸住宅を借りようにも、1年半前に新築した二戸建てのローンが残っており、敷金、礼金などの自己負担は困難。ホテルで生活し続けるしかなかった。
 福島県内では5月から、自主的に民間住宅を借りて生活する避難者に対し、県が住宅を借り上げ、家賃も全額負担する措置(契約置き換え制度)が取られた。国も4月30日、岩手、宮城、福島の被災3県に対し、こうしたケースが災害救助法に基づく国庫負担の対象になると通知した。一方、茨城県では震災対応の関連事務を各市町村が行っており、県外からの避難者のためだけに県が住宅借り上げに乗り出すのはバランスを欠く、というのが県の判断。さらには、契約置き換え制度が被災3県以外にも適用されるかどうかについて、国の基準が不明確だったという。
 津波被害がひどかった日立市は、市民の避難世帯が125戸。県外からの避難者数とさほど変わらない。県は「避難者の福島県民が家賃補助などを受けられるのに、同じ被災者の茨城県民が自己負担のままという不均衡が生じるのでは」と懸念。県が厚生労働省に問い合わせ、7月中旬に「適用される」との回答を得てようやく、準備が整った市町村から順次、契約置き換え制度を始めた。
 Tさんは、市が制度を始めると決まったことからアパートを探し、住居確保のめどが立ったという。次の課題は新居で必要な家電製品をそろえること。日本赤十字社が無償で提供する家電を活用するつもりだ。「早く元のような生活に戻りたい」と冨沢さんは話す。

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