参考写真 東京電力福島第1原発事故後に、内部被ばくを予防する「安定ヨウ素剤」を住民に投与するよう原子力安全委員会が政府の原子力災害対策本部に助言していたが、政府は対応を怠っていた事実が明白になりました。
 公明党の浜田昌良参院議員が提出していた、「安定ヨウ素剤をめぐる政府の混乱に関する質問主意書」に対し、政府が10月7日に送付した答弁書でこうした実態が明らかになりました。
 浜田氏は「(安定ヨウ素剤の)政府の配布・服用指示に混乱があり、全く役に立たなかったと指摘されており、国民は疑念を抱いている」と指弾。原子力安全委が3月13日に2度行った助言を政府対策本部が無視し、政府の投与指示が3月16日にまでずれ込んだ事実関係を追及しました。
 答弁書では、原子力安全委の助言について「記録が確認されていない」と回答。配布・服用指示の適切なタイミングは、今後検討するにとどまっています。
 8月27日開催された放射線事故医療研究会で、原子力安全委員会の助言組織メンバー、鈴木元・国際医療福祉大クリニッ ク院長は、「当時の周辺住民の外部被曝の検査結果などを振り返ると、安定ヨウ素剤を最低1回は飲むべきだった」と指摘しています。
 3月17、18日に福島県で実施された住民の外部被曝検査の数値から内部被曝による甲状腺への影響を計算すると、少なくとも4割が安定ヨウ素剤を飲む基準を超えていた恐れがあると説明しています。
 放射性ヨウ素は甲状腺に集まりやすく、甲状腺被曝では放射性ヨウ素の中では比較的、寿命が長い放射性ヨウ素131(半減期約8日)だけが考慮されてきました。
 しかし、広島大原爆放射線医科学研究所の細井義夫教授は「半減期が2時間と短いヨウ素132も考慮が必要」と指摘。理化学研究所などが3月16日に原発30キ ロ圏外の大気を分析した結果、放射性物質の7割以上が放射性ヨウ素132や、約3日で放射性ヨウ素132に変わる放射性物質だったとの指摘もあります。
参考:「安定ヨウ素剤をめぐる政府の混乱に関する質問主意書」