参考写真 厚生労働省が唐突に打ち出した“年金支給開始年齢の引き上げ”について、10月17日、井手よしひろ県議は恒例の街頭県議会報告で取り上げました。その内容を以下のようにご紹介します。


 厚労省は、厚生年金の支給開始年齢を68歳に引き上げる案や、65歳への引き上げ時期を前倒しする案を、厚生労働相の諮問機関である社会保障審議会の年金部会に示しました。
 これは、民主党政権が6月に「社会保障・税一体改革案」で示した「68〜70歳への引き上げ」を受けて議論を始めたものであり、あくまでも「検討」の域を出ているものではありません。
 年金部会では、厚生年金の支給開始年齢を3年ごとに1歳ずつ引き上げて2025年度(女性は5年遅れ)に65歳とする現行のスケジュールを、1年ずつ前倒しし、21年度に65歳とする案を議論。さらに、現行のスケジュールのまま支給開始を68歳に遅らせる案や、引き上げペースを早め、支給開始を68歳にする案も取り上げました。
 しかし、厚生年金の支給開始年齢は、基礎年金部分は60歳から65歳への段階的引き上げが進行中であり、報酬比例部分は、現在は60歳からですが、13年度から段階的に65歳に引き上げることが法律で決まっています。
 その引き上げの途中段階で、さらに支給開始時期の先延ばしを議論すること自体、若年世代の年金不信をあおりかねません。
 また、65歳までの雇用の確保が進んでいない現状で68〜70歳まで年金支給を遅らせれば、収入が断たれて生活困窮者が大幅に増えることは必至。極めて非現実的な案といえます。
 ただ、年金部会でも「(65歳までの雇用など)前提条件がなく、検討に入る段階にない」(逢見直人・UIゼンセン同盟会長付)、「年金の理屈だけではなく、高齢者雇用と連携して進めるべきだ」(森戸英幸・上智大教授)などの慎重論が相次ぎ、実現性は低いと見られまています。
 公明党の坂口力副代表(元厚労相)は、「65歳から年金を支給することは、2004年改革での国民との約束。現在の制度は、65歳からの支給でも100年先まで大丈夫なように設計してあり、何より、今現在も厚生年金の支給開始時期を65歳へと段階的に引き上げている最中だ。さらなる引き上げは無用であり、公明党は断固反対だ」と述べています。
 唐突に飛び出した“年金支給開始年齢の引き上げ”の議論。完了をコントロールできない民主党政権のひ弱さを露呈したに過ぎません。