10月28日、井手よしひろ県議等が所属する文教治安委員会の休会中審議が行われ、4人の参考人を招き、専門家の立場から貴重な意見を聴取しました。
 教育分野の参考人として、筑波大学大学院の石隈利紀教授を迎えました。石隈教授は、学校心理学の第一人者アラン・カウフマン博 士に師事し、アラバマ大学大学院博士課程修了。現在、筑波大学人間総合科学研究科教授(附属学校教育局担当)。学校心理士・特別支援教育士スーパーバイザー・臨床心理士等の資格を持ち、文部科学省中央教育審議会専門部会委員をつとめています。
参考写真 東日本大震災以降、被災地の子どもたちが受けているストレスについて、石隈教授は以下の3つのストレスをあげました。1.外傷後ストレス:トラウマ(心の傷)としてその時の映像、匂い、音と感情を取り込む。トラウマ記憶の問題。2.喪失によるストレス:否認、怒り、自責、悲嘆、抑鬱など。3.日常生活上のストレス:疲労、心身の状況、意欲の低下。
 こうしたストレスに対して、1.子どもたちには潜在的な悲しみや、不安、ストレスがあることを理解する。2.子どもたちが気持ちを表現できる場・機会を作る。3.子どもたちが互いに支え合うのを支援する。などが、教育現場でも重要だと、強調しました。
 たとえば、津波の被害を受けた被災地では、今まで大きな家に住んでいた子どもたちが仮設住宅に移ると、狭い部屋の中で両親が喧嘩をしたり、今後のお金や仕事の不安を語ると、その話にショックを受けてしまう子どもが多くいるという事例を紹介。教師は、まず子どもの話しを聞いてあげることが大切。その上で、クラスなどで取り上げて『自分だけじゃなかった』と思わせることも必要、と語りました。また、保護者は、今までとは環境が大きく変わっているということを十分に理解して、子どもが親の話を聞いていうることを念頭に入れて話すことや、後で子どもを安心させる言葉をかけることが大事と話しました。
 講演の後の意見交換で、井手県議が「大きな被災を受けた茨城県ではあるが、東北の被災地と状況は異なると思われる。茨城の子どもたちに必要なサポートは何か?」と質問しました。
 これに対して、石隈教授は、「防災教育や避難訓練などを通して、被災地の子どもたちに何が起こったのかを理解させることが重要。そして、その子どもたちに自分たちが何ができるかを考えさせることもさらに大事です」「つくば市では、福島県から転校してきた子どもに、震災の状況を積極的に語ってもらい、体験を共有した。震災にあった子どもが、次第に元気になっていく様子を皆で見守るのも効果がある」と語りました。
 また、井手県議は「マスコミ報道の子どもたちへの影響」について質問しました。
 マスコミ報道は、2つの意味で被災地の子どもたちに影響を与えました。一つは、津波などの衝撃的なシーンがテレビから家庭に繰り返し流されることで、子どもたちが深刻なストレスを受けることになりました。二つ目に、取材時のマスコミの心ない対応に、影響を受けた子どもたちも少なくありません。こうした現状の中で、石隈教授は「津波などの映像を子どもたちだけに見せるのはリスクが高い。小さな子どもには、未だに津波が続いているという恐怖感が醸成されます。是非、大人がクッション役になって、もう安心であるということを子どもに納得させてあげる必要がある」と指摘しました。