参考写真 10月14日、厚生労働省の研究班は、永年の懸案であった「脳脊髄液減少症」の診断基準を発表しました。
 脳内の脊髄液が交通事故などの衝撃で、漏れ出すことにより、激しい頭痛などを引き起こすとされるのが、脳脊髄液減少症。原因の一つであるの髄液の漏れを判定するための画像診断基準が発表されました。これにより、そもそも髄液の漏れがあるのかという議論が一応決着し、今後、その有効な治療法とされるブラッドパッチ療法への保険適用を目指して検討が進められることになりました。
 公明党は、当初から患者団体とともに対策推進を強く求めていました。脳脊髄液減少症は交通事故やスポーツなどで頭部や全身を強打することで脳脊髄液が漏れ、頭痛や倦怠感など、さまざまな症状を引き起こす疾病です。
 これまで医学界では、何らかの衝撃で髄液漏れが起きることはないとの否定的な見解が支配的でした。事故による脳脊髄液減少症の発症を訴える被害者と、保険会社の間で、補償をめぐる訴訟が各地で相次いでいました。こうした事態を重く見た公明党は2006年4月、他党に先駆けて脳脊髄液減少症対策チームを設置。地方議員や患者団体とも連携して、政府に対し対策強化を繰り返し求めてきました。
 その結果、2007年に厚労省は診断基準を定めるための研究班を立ち上げ、今年6月には研究班が外傷による発症は「決してまれではない」との中間報告書をまとめました。今回、発表された診断基準では、頭を上げていると頭痛がすることを前提に、CT(コンピューター断層撮影装置)やMRI(磁気共鳴画像診断装置)で頭部や脊髄を観察し、画像から髄液漏れが確認できれば脳脊髄液減少症と認めるとしています。
 治療には、自身の体液を採取して腰や脊髄の硬膜外側に注入する「ブラッドパッチ療法」が有効とされています。しかし、保険適用外のため、1回に約30万円もの自己負担が必要です。このため患者団体は、保険適用も強く求めていますが、今回は、残念ながら診療報酬改定の審議に診断基準の決定が間に合わなかったため、見送られる方向です。
 そこで研究班は、脳脊髄液減少症を厚労相が定める「先進医療」として位置付けるよう申請する見込みです。これが、認められればブラッドパッチ以外の検査や入院費が保険適用となり、患者負担は大きく軽減されます。
 診断基準が決定したことについて、脳脊髄液減少症患者・家族支援協会の中井宏代表理事は、「10年余り訴え続けた結果、やっと病気として認められた」と評価。その半面、「労災の場合は先進医療の給付に準拠するようだが、交通事故の場合は国土交通省での審議が進んでいないため、どこまで考慮してもらえるか不透明だ」と懸念を示しました。
 そらに、画像による診断基準に合致しなければ、かえって補償されなくなるのではないかとの不安が患者・家族の中に高まっています。中井代表は、「患者の7割は今回の基準に合わないと言われる。海外では、より多くの患者を想定した基準が提案され始めている」と語っています。