10月31日、井手よしひろ県議は仙台市を訪ね、東日本大震災で住宅地が大規模に崩壊の危機に瀕している青葉区折立団地を現地調査しました。この地域は、仙台市のベットタウンで、人口が急増した昭和40年代の高度成長期に、郊外の丘陵地を切り崩して造成された新興住宅地です。折立団地は宮城県住宅供給公社が、1973年から分譲地を販売しました。7ヶ月半もたった今でも、現地を歩くと、大きな地割れが走り、地割れに向かって地面が傾いている様子がつぶさに確認されました。災害対策基本法に基づき、40戸以上が警戒を要する区域に指定され、多くの住民がマイホームに戻れない状況が続いています。
 今回の大震災では、津波被害が大きくクローズアップされていますが、宮城県によると、地割れなどが起きて、「危険」と判定された宅地の擁壁やのり面は、内陸部だけで705カ所に上っています。東北大学の森友宏助教(地盤工学)が行った実態調査では、仙台市内だけで全壊18、半壊101、一部損壊154で、計273棟の宅地崩壊による住宅被害が発生しています。
 この内146棟が団地造成の際、「切り盛り境界部」と呼ばれる場所に立っていました。団地は山の部分を削り(切り取り)、その土で谷を埋めて(盛り土)水平にするが、その境界部は軟弱地盤で、地震が起きると沈下して段差が生まれやすいと、森助教は指摘しています。
沢を埋め立てた造成地に排水用暗渠が整備されず?
 また、造成の際に沢を埋め立てて建設された部分が、地震の大きな振動で動き、地盤崩落を招いたとの分析もあります。
 今回の視察では、地元の住民から詳しいお話を聞くことができました。その住民から見せていただいた団地造成の青写真には、沢だった場所の排水のために暗渠設備が計画されていたことが明示されていました。しかし、実際にはこの排水用暗渠は整備されておらず、震災による大きな振動で、地下に溜まった地下水に大きな圧力がかかり、擁壁の崩落、地すべりの原因になったのではないかと推測できました。
 宅地は個人資産であるため、現行の法制度では有効な救済措置がありません。折立団地を視察した民主党の枝野幹事長や大畠国交大臣(いずれも役職名は視察当時)は、「知恵と工夫で、支援できるスキームを検討する」、「1000年に一度という震災の被害に対して、住民に最も近いそれぞれの首長が復興の青写真を描くことが必要だ。制度がなければ、考えていくのが政治家の役割であり、まず基礎自治体が方針を示すことが重要となる」などと語っていますが、未だにその青写真は出来上がっていません。言葉だけが先行する民主党政治の限界を見た思いがしました。
 まして、地震という自然災害が唯一の原因と見られた宅地の崩壊でしたが、排水用の暗渠が設置されていないという造成工事の人為的なミスも明らかになったことで、国や行政の責任はより一層重くなっている実感した視察となりました。