野田総理の二枚舌外交は許されない
参考写真 世論を二分し、慎重な判断を求める声が沸き上がっていたにもかかわらず、野田首相はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で環太平洋連携協定(TPP)の交渉参加に向けて関係国との協議に入る方針を表明しました。
 菅前首相が昨年秋、唐突に打ち出したTPPへの参加方針は今なお、その賛否や影響をめぐる議論が交錯したままです。そうした中で、与党内の反対派への配慮から交渉参加を明言せず、「関係国との協議に入る」という玉虫色の表明は、「国民を欺く二枚舌」以外の何ものでもありません。
 こうした野田首相の姿勢からも、TPP交渉参加への決断は、あまりにも拙速です。これでは、国民が抱くTPPへの懸念は、増幅するばかりです。
 TPP論議が噴出する原因は、TPPが対象とする分野が物品に限らず、金融サービスや知的財産、環境など多岐にわたり、国民に与える影響が計り知れないためです。
 特に、わが国では農業や食品産業への影響は避けられません。TPPの参加によって食料自給率は現在の40%から13%に低下するとの農林水産省の試算に加え、食品の安全性に対する危惧も根強いものがあります。
 さらに国民がTPP参加への懸念を強めたのが、その効果についてです。経済産業省はTPP不参加で10.5兆円の損失を見込み、農水省は参加で7.9兆円の損失を試算しています。さらに内閣府は参加で2.7兆円の効果を推計するなど、大きな隔たりが埋まっていません。
 政府内ですら省庁の利害が激突し、TPPへの評価はバラバラで議論は尽くされていないのです。国民がTPPを評価する状況にないことは明白です。
 共同通信が11月5、6の両日に実施した世論調査によれば、TPPに参加した場合の影響について、政府が「あまり説明していない」「全く説明していない」との回答が計78.2%にも達しました。他の世論調査を見ても、同様の傾向が出ています。
 この結果は、政府が国民に対してTPPの情報提供を怠ってきた証左です。国民の理解が得られないまま、TPP交渉に突き進む野田首相の行為は、まさに“見切り発車”であり、絶対に許されるものではありません。
日本国民への説明とは異なるホワイトハウスの公式ホームページ
参考写真 11月15日、野田総理が帰国し最初の国会審議で、首相の「二枚舌」の姿が国民の前に露わになりました。
 ホワイトハウスは、オバマ大統領と野田首相との会談で「すべての物品とサービスを貿易自由化交渉のテーブルに載せる」と発言したと公式発表しています。この件について質問された野田首相は発言を否定し、「(自分は)一言も言っていない」、「事実関係はなかったと米国も認めた」と強調しました。質問した自民党の山本一太議員は、アメリカ政府に抗議するよう訴えましたが、首相は解決済みの問題との認識を示しました。藤村官房長官も記者会見で、アメリカ政府に訂正を求めないと話しています。
 井手よしひろ県議が、このブログをアップしている11月15日午後7:50現在、ホワイトハウスの公式ホームページには、この内容はそのまま掲載され続けられています。事実と異なった内容が、一国の公式見解として掲載され続けていることに抗議しないという姿勢は、私には全く理解できません。これを「二枚舌」と言わず、何と言うのでしょうか?
 問題の箇所をホワイトハウスのホームページから引用します。(管理者が翻訳したものです)
Readout by the Press Secretary on the President's meeting with Prime Minister Noda of Japan
(2011/11/12)
The President noted that all TPP countries need to be prepared to meet the agreement's high standards, and he welcomed Prime Minister Noda's statement that he would put all goods, as well as services, on the negotiating table for trade liberalization.
オバマ大統領は、すべてのTPP協議参加国が、高い基準の合意を満たすために準備する必要があると指摘し、貿易自由化交渉のテーブルに、すべての財だけでなく、サービスもまた載せるとの野田総理の声明を歓迎した。