先のブログ「生活保護受給者数が200万人を突破」で詳しく述べましたが、生活保護受給者が過去最多を記録。厚生労働省によれば今年7月の受給者は205万495人となりました。
その内訳を見てみると、高齢者世帯が4割以上を占め、高齢化が受給者増加の一因であるのは間違いありません。しかし、それ以上に目立つのが傷病・障害、母子などの世帯を除いた「その他世帯」の増加です。全体に占める割合は2008年度の10.6%から、2010年度には16.1%に跳ね上がったいます。この中には、仕事さえあれば、自立して生活保護から脱出できる人が多く含まれています。さらに、経済力があるにもかかわらず、不正に生活保護を受給している者も多い現実も指摘されています。
生活保護の費用はすべて公費で国が4分の3、自治体が4分の1を負担しています。国と地方の負担の合計は、2000年度の1兆9000億円から2011年度当初予算では3兆4000億円と倍近くに増大しています。
生活保護者を減らすためには、経済を活性化し、国民の所得を増やすこと、雇用を増大させることが何よりの対策であることは論を待ちません。
その上で、生活保護者の増大の背景にある、3つの課題に対して具体的に取り組む必要を強調したいと思います。
一つが年金の充実を中心とする高齢者の貧困対策、二つが就業対策を中心とする第2セーフティネットの充実、三つが不正受給対策です。
その内訳を見てみると、高齢者世帯が4割以上を占め、高齢化が受給者増加の一因であるのは間違いありません。しかし、それ以上に目立つのが傷病・障害、母子などの世帯を除いた「その他世帯」の増加です。全体に占める割合は2008年度の10.6%から、2010年度には16.1%に跳ね上がったいます。この中には、仕事さえあれば、自立して生活保護から脱出できる人が多く含まれています。さらに、経済力があるにもかかわらず、不正に生活保護を受給している者も多い現実も指摘されています。
生活保護の費用はすべて公費で国が4分の3、自治体が4分の1を負担しています。国と地方の負担の合計は、2000年度の1兆9000億円から2011年度当初予算では3兆4000億円と倍近くに増大しています。
生活保護者を減らすためには、経済を活性化し、国民の所得を増やすこと、雇用を増大させることが何よりの対策であることは論を待ちません。
その上で、生活保護者の増大の背景にある、3つの課題に対して具体的に取り組む必要を強調したいと思います。
一つが年金の充実を中心とする高齢者の貧困対策、二つが就業対策を中心とする第2セーフティネットの充実、三つが不正受給対策です。
貧困率は50〜54歳を境に上昇、女性の単独世帯が特に深刻
まず、高齢者の貧困対策を考えてみたいと思います。
少子高齢化の進展のなかで、高齢者の貧困という社会保障の根幹にも影響する問題が深刻さを増しています。特に、高齢女性の貧困化が問題となっています。
内閣府の男女共同参画局が公表した資料によると、50〜54歳の年齢層を境に男女ともに貧困率(厚生労働省によると実質年収112万円以下の人々の割合)が上昇。一方で、高齢女性の貧困率は年齢が上がるほど、男性以上に悪化していることが明らかになっています。
男女差が最も大きいのは70〜74歳。女性は男性に比べて1割近く貧困率が高いくなっています。そして、この傾向は未婚や死別など夫を持たない女性でより高くなっています。
高齢者の収入は7割が公的年金ですが、高齢者世帯のうち4割を占める女性の単独世帯は収入が他の高齢者世帯よりも圧倒的に低い状況にあります。
実際のデータでも男性受給者の半数近くが年間200万円以上に集中するのに対し、女性受給者の多くは60〜80万円台に集中しています。
この背景は1961年の国民皆年金制度の成立時にさかのぼります。当時の厚生年金は20年以上の加入が支給の要件。そのため会社勤務を数年で辞めて結婚した女性は、年金が掛け捨てになる恐れがあったため、一時金として年金を受け取る「脱退手当金」を選ぶ人が多くありました。
また、1986年(昭和61年)に第3号被保険者制度が整備されるまで、サラリーマンの妻の国民年金は任意加入とされていました。
こうした背景や離婚の増加など社会情勢の大きな変化が重なって、現在の年金の受取額を結果的に少なくしてしまったと見られています。
今では低所得状況から抜け出すために非正規雇用として働く女性が増えていますが、65歳以上で働いている女性の4人に1人は、働いても暮らしが楽にならない「ワーキング・プア」であるとの指摘もあります。
現在、IT(情報技術)の進歩で、コンピューター操作など、求められる職業能力も大きく変化しています。こうした点も高齢女性が雇用されにくい状況をつくっています。
こうした高齢者の生活保護者を少なくするためには、短期的には国民年金の拡充が喫緊の課題です。現在、国民年金(基礎年金)だけの支給額は年間80万円程度です。(40年間全て「全額納付」であった場合、満額の792,100円 )これだけで生活するのは大変厳しい状況です。医療費の負担などが増加すれば、生活保護に簡単に陥ってしまいます。
公明党は基礎年金への加算年金制度の実現などを通して、“暮らせる年金”への充実に全力を挙げています。
第2のセーフティネットとの整備を
第二の課題は、仕事さえあれば働ける人=自立できる人への対策です。
今年10月からは失業給付を受けられない人などが、生活費をもらいながら職業訓練を受ける新制度「求職者支援制度」がスタートしました。この支援制度は、時限措置として今月末で終了する「訓練・生活支援給付金制度」を恒久化したものです。
雇用保険は失業時のセーフティーネット(安全網)として位置付けられています。加入者は失業給付を受けて、職業訓練を受講しながら求職活動ができる仕組みが整えられています。しかし、近年では雇用保険に加入していない非正規労働者や雇用保険の受給期間を終えても再就職ができない長期失業者が増加しており、こうした人たちが生活保護の状態に移行しています。
2010年の労働力調査をみると、非正規労働者は前年比で34万人増の1755万人、長期失業者は同じく26万人増の121万人となって過去最多を記録しています。
失業時に雇用保険が受けられない場合、時限措置の訓練・生活支援給付金制度がなくなると、残されたセーフティーネットは生活保護だけとなってしまいます。
こうしたことから、雇用保険と生活保護の両方の機能を併せ持つ「求職者支援制度」が、第二のセーフティネットとして創設されました。
支援制度の対象者は、(1)雇用保険に加入していない人(2)雇用保険の受給中に再就職ができないまま雇用保険の受給が終了した人(3)雇用保険の加入期間が足りず、雇用保険を受けられない人(4)学卒未就職者――などです。
本人の希望や能力などを踏まえ、対象者は例えばホームヘルパーや医療事務の資格取得などをめざす「求職者支援訓練」や、より専門性の高い「公共職業訓練」を無料(テキスト代などは自己負担)で受講することができます。
また、訓練終了を待たずに、訓練期間中でもハローワークで訓練開始前に作成する「就職支援計画」に基づき、定期的な職業相談を受けることも可能です。
求職者の月収が8万円以下などの要件を満たす場合には、受講期間中の生活費などに充てられる「職業訓練受講給付金」があります。月額10万円が給付され、訓練の受講に必要な交通費の給付を受けることもできるようになっています。
一方、この支援制度は失業者に対するセーフティーネットであるとの目的から、職業訓練の欠席はやむを得ない場合を除き認められないほか、ハローワークによる就職支援を拒否すると、給付金の支給が停止されることもあるます。
今後この制度を、職業訓練が雇用に結びつく実効性ある制度に育てるための、不断の努力が必要となります。
厳格な不正受給対策を
三点目は不正受給対策です。経済力がある人の不正受給は後を絶ちません。収入を隠すなどして生活保護費を受け取る不正受給は2008年度に100億円を超えています。生活保護制度の厳正な運用が必要です。支出を明らかにしてもらったり、就労支援を前提に支給期間を区切ったりすることも考えらます。
また、貧困ビジネスと言われるような生活保護につけ込む犯罪的行為を厳しく規制することも重要です。最近では、ホームレスをアパートに住ませて生活保護を申請させ、家賃や光熱費名目で大半を取り上げる「囲い屋」と呼ばれる業者の存在が問題視されています。大阪市や福岡市での例では、月額約11万円の保護費のほとんどを取り上げられ、週に3000円を手渡されるだけのケースもあったといわれています。こうした事例には、暴力団が深く関わっている事例も多く、行政と警察の密接な連携のよる、不正受給根絶の流れを強くする必要があります。
まず、高齢者の貧困対策を考えてみたいと思います。
少子高齢化の進展のなかで、高齢者の貧困という社会保障の根幹にも影響する問題が深刻さを増しています。特に、高齢女性の貧困化が問題となっています。
内閣府の男女共同参画局が公表した資料によると、50〜54歳の年齢層を境に男女ともに貧困率(厚生労働省によると実質年収112万円以下の人々の割合)が上昇。一方で、高齢女性の貧困率は年齢が上がるほど、男性以上に悪化していることが明らかになっています。
男女差が最も大きいのは70〜74歳。女性は男性に比べて1割近く貧困率が高いくなっています。そして、この傾向は未婚や死別など夫を持たない女性でより高くなっています。
高齢者の収入は7割が公的年金ですが、高齢者世帯のうち4割を占める女性の単独世帯は収入が他の高齢者世帯よりも圧倒的に低い状況にあります。
実際のデータでも男性受給者の半数近くが年間200万円以上に集中するのに対し、女性受給者の多くは60〜80万円台に集中しています。
この背景は1961年の国民皆年金制度の成立時にさかのぼります。当時の厚生年金は20年以上の加入が支給の要件。そのため会社勤務を数年で辞めて結婚した女性は、年金が掛け捨てになる恐れがあったため、一時金として年金を受け取る「脱退手当金」を選ぶ人が多くありました。
また、1986年(昭和61年)に第3号被保険者制度が整備されるまで、サラリーマンの妻の国民年金は任意加入とされていました。
こうした背景や離婚の増加など社会情勢の大きな変化が重なって、現在の年金の受取額を結果的に少なくしてしまったと見られています。
今では低所得状況から抜け出すために非正規雇用として働く女性が増えていますが、65歳以上で働いている女性の4人に1人は、働いても暮らしが楽にならない「ワーキング・プア」であるとの指摘もあります。
現在、IT(情報技術)の進歩で、コンピューター操作など、求められる職業能力も大きく変化しています。こうした点も高齢女性が雇用されにくい状況をつくっています。
こうした高齢者の生活保護者を少なくするためには、短期的には国民年金の拡充が喫緊の課題です。現在、国民年金(基礎年金)だけの支給額は年間80万円程度です。(40年間全て「全額納付」であった場合、満額の792,100円 )これだけで生活するのは大変厳しい状況です。医療費の負担などが増加すれば、生活保護に簡単に陥ってしまいます。
公明党は基礎年金への加算年金制度の実現などを通して、“暮らせる年金”への充実に全力を挙げています。
第2のセーフティネットとの整備を
第二の課題は、仕事さえあれば働ける人=自立できる人への対策です。
今年10月からは失業給付を受けられない人などが、生活費をもらいながら職業訓練を受ける新制度「求職者支援制度」がスタートしました。この支援制度は、時限措置として今月末で終了する「訓練・生活支援給付金制度」を恒久化したものです。
雇用保険は失業時のセーフティーネット(安全網)として位置付けられています。加入者は失業給付を受けて、職業訓練を受講しながら求職活動ができる仕組みが整えられています。しかし、近年では雇用保険に加入していない非正規労働者や雇用保険の受給期間を終えても再就職ができない長期失業者が増加しており、こうした人たちが生活保護の状態に移行しています。
2010年の労働力調査をみると、非正規労働者は前年比で34万人増の1755万人、長期失業者は同じく26万人増の121万人となって過去最多を記録しています。
失業時に雇用保険が受けられない場合、時限措置の訓練・生活支援給付金制度がなくなると、残されたセーフティーネットは生活保護だけとなってしまいます。
こうしたことから、雇用保険と生活保護の両方の機能を併せ持つ「求職者支援制度」が、第二のセーフティネットとして創設されました。
支援制度の対象者は、(1)雇用保険に加入していない人(2)雇用保険の受給中に再就職ができないまま雇用保険の受給が終了した人(3)雇用保険の加入期間が足りず、雇用保険を受けられない人(4)学卒未就職者――などです。
本人の希望や能力などを踏まえ、対象者は例えばホームヘルパーや医療事務の資格取得などをめざす「求職者支援訓練」や、より専門性の高い「公共職業訓練」を無料(テキスト代などは自己負担)で受講することができます。
また、訓練終了を待たずに、訓練期間中でもハローワークで訓練開始前に作成する「就職支援計画」に基づき、定期的な職業相談を受けることも可能です。
求職者の月収が8万円以下などの要件を満たす場合には、受講期間中の生活費などに充てられる「職業訓練受講給付金」があります。月額10万円が給付され、訓練の受講に必要な交通費の給付を受けることもできるようになっています。
一方、この支援制度は失業者に対するセーフティーネットであるとの目的から、職業訓練の欠席はやむを得ない場合を除き認められないほか、ハローワークによる就職支援を拒否すると、給付金の支給が停止されることもあるます。
今後この制度を、職業訓練が雇用に結びつく実効性ある制度に育てるための、不断の努力が必要となります。
厳格な不正受給対策を
三点目は不正受給対策です。経済力がある人の不正受給は後を絶ちません。収入を隠すなどして生活保護費を受け取る不正受給は2008年度に100億円を超えています。生活保護制度の厳正な運用が必要です。支出を明らかにしてもらったり、就労支援を前提に支給期間を区切ったりすることも考えらます。
また、貧困ビジネスと言われるような生活保護につけ込む犯罪的行為を厳しく規制することも重要です。最近では、ホームレスをアパートに住ませて生活保護を申請させ、家賃や光熱費名目で大半を取り上げる「囲い屋」と呼ばれる業者の存在が問題視されています。大阪市や福岡市での例では、月額約11万円の保護費のほとんどを取り上げられ、週に3000円を手渡されるだけのケースもあったといわれています。こうした事例には、暴力団が深く関わっている事例も多く、行政と警察の密接な連携のよる、不正受給根絶の流れを強くする必要があります。
生活保護の不正受給37%増、県内10年度1億922万円
茨城新聞(2011/11/20)
収入を隠すなどした生活保護費の不正受給が増えている。県福祉指導課のまとめによると、県内の2010年度の決算総額は前年度から37.6%も増え、1億円を突破した。同課は「受給者そのものが増え、相対的に不正受給も増えている。不正受給はあってはならない。防止に向け力を一層入れたい」としている。
県内の不正受給総額は06年度が約7520万円。その後は07年度6758万円、08年度7740万円、09年度7937万円と推移したが、10年度は一気に1億922万円まで増えた。同課は「極めて悪質なケースは少ないが、年金の遡及(そきゅう)があった場合や、高校生の子どものアルバイト収入などを申告しないままにしているケースが目立つ」という。
県内全36の福祉事務所ごとにみると、9事務所が「ゼロ」だったが、人口の多い市を中心に1千万円超は4事務所、500万円以上1千万円未満が3事務所あった。
一方、徴収率は県全体で42.4%にとどまった。不正受給があった27福祉事務所のうち、6事務所が100%を達成したが、少額ながら0%が1事務所、1桁台も3事務所あった。
水戸市生活福祉課は「支給開始時や定期訪問ごとに収入があった場合は、必ず申告するよう徹底しているが、故意に隠された場合は発見は極めて困難だ」と嘆き、日立市社会福祉課は「『少額なら大丈夫』と考えている人も少なくない」と指摘する。県央地区の男性担当者は「受給者が増えれば、ケースワーカーが担当する人数も増え、目がますます行き届かなくなり、不正もさらに増えてしまうだろう」と悪循環を心配する。
10年度の生活保護受給者(平均値)は2万2608人で、前年度比14.8%と急増。今年9月の生活保護受給者は2万4344人で、県内の千人当たりの被保護人員は8.2人になっている。