参考写真 12月5日、野田政権は、今臨時国会の会期を延長せずに、明日9日に閉会する方針を固めたようです。一川保夫防衛相や山岡賢次国家公安委員長の問責決議採決後の混乱を避け、政権の弱体化を防ぎたいのが本音のようです。多くの課題がありながら、懸案を先送りする愚かな行為です。
 特に、国家公務員の給与削減の問題は重要です。6日、公明党の山口那津男代表は、政府・民主党が今国会の会期延長の方針を示さず、国家公務員給与削減法案の成立を先送りしようとしていることについて、「政府・与党として非常におかしな対応だ。(国会の)会期を終わらせれば、結果として人件費は削られず、(震災復興の)財源に寄与できない」と批判しました。さらに、民主、自民、公明の3党協議で、民主党の前原誠司政策調査会長が法案修正に応じる姿勢を示していたにもかかわらず、修正に関する実務者協議が打ち切られたことに言及。「(民主党の)与党としての責任感、政策決定の仕組みに課題が残っていると思わざるを得ない」と述べました。
 野田首相は増税路線を前面に押し出しています。消費税10%への段階的引き上げの時期や幅を明記した社会保障と税の一体改革の素案を、年内にまとめるように指示したばかりです。国民に負担を強いる案を打ち出すのであれば、公務員給与のカットなど目に見える形で予算の削減を示すのが筋です。それを棚上げにしたままの国会閉幕では、国民は全く納得できません。
 これに対して、自民、公明両党は7日、東日本大震災の復興財源確保のために2011年度の国家公務員給与を平均7.8%引き下げる特例法案の修正案を共同提出しました。修正案は、国家公務員の給与削減について、政府が見送りを決めた平均0.23%の引き下げを求める人事院勧告を完全実施した上で、さらに引き下げ幅を7.8%にまで拡大するものです。
 また地方公務員の給与削減については、公明党の主張を受け、政府が地方自治体に対し、国家公務員の給与削減に準じた措置を講じるよう「要請するとともに、助言その他必要な対応を実施」するとしています。
 あわせて、国会議員の歳費の削減もスルーされようとしています。東日本大震災を受け、減額していた国会議員の歳費は、10月から再び満額支給されています。毎月50万円を半年間減額してきた国会議員歳費減額特例法の期限は、とうに切れており、これで公務員の給与だけを問題にすることは、片手落ちです。
 野田首相は、10月28日の所信表明演説で「政治家自身も自ら身を切らなければならない」と述べ、首相や閣僚らの給与の一部自主返納を表明しました。しかし、政府の提案した特例法案には首相や閣僚らの給与減額が盛り込まれているのみで、国会議員すべての歳費を見直そうという気概は、全く見えてきません。
 増税先行、敵前逃亡ともいえる野田政権。この政権下で明るい新年は迎えられるのでしょうか?