参考写真 12月9日、国家公務員に冬のボーナスが支給されました。マスコミ報道によると、管理職を除く一般行政職の平均支給額は61万7100円で、驚くことに昨年より4.1%増2万4200円の増額となりました。東日本大震災の復興財源を生み出すために政府は、ボーナスの一律1割カットを目指していましたが、結局国会対応の稚拙さから増額に至るというていたらくです。
 2011年度の国家公務員の給与をめぐり、政府は9月の平均0.23%引き下げという人事院勧告を無視して、ボーナスの10%カットを含む平均7.8%削減する特例法案を国会に提出しました。しかし、人事院勧告を実施しないのは憲法違反に他なりません。こうした無節操な特例法を簡単に認めることはできません。
 民主党政権は“政治主導”をはき違えています。法を曲げることが政治主導ではありません。
 自民党と公明党は12月7日、政府提出の国家公務員給与削減特例法案(特例法案)に対する修正案を共同で国会に提出し、政府に法治主義の厳守を迫りました。
 10月28日、政府は今年の人事院勧告の実施を見送る閣議決定を行いました。人事院勧告は人事行政を担う人事院が、国家公務員の労働条件適正化のために、国会、内閣、各省庁に給与水準などの改定を求めるもので、歴代政府はそれを尊重してきました。
 今回の勧告は、民間企業の給与水準と国家公務員給与を均衡させるため、国家公務員給与を平均0.23%引き下げる内容でした。そこで政府は、特例法案の給与引き下げ率(平均7.8%)が勧告の引き下げ率(同 0.23%)よりも大きく、法案の中に勧告の趣旨も「内包されている」(川端総務相)として、人事院勧告 の実施を見送りました。しかし、これは詭弁であり、人事院軽視にほかなりません。
 自民、公明両党の修正案は、まず平均0.23%引き下げの勧告を実施し、 それと合わせて平均7.8%の給与引き下げをする内容です。
政府特例法では2年後に給与水準が元に戻ってしまう
 人事院勧告実施見送りの裏には、実は重大な問題が隠されています。
 特例法案は13年度までの時限立法です。それ以降は現在の給与水準に、自動的に戻ることになります。人事院は、現在の給与水準を下げるよう求めているのに、実施見送りで、2年間我慢すれば現在の水準に復帰してしまうことになります。
 民主党支持の労組が給与水準引き下げを嫌って、実施見送りを求めていたとの問題も国会質疑の中で取り上げられました。民主党の姑息な対応の要因がここにあります。
 さらに、憲法軽視、人事院の否定にもつながる重要な問題をはらんでいます。江利川人事院総裁は「人事院勧告は憲法に保障された労働基本権が、国家公務員は制約されていることの代償措置」「人事院勧告は憲法に基づく制度であり、きちんとやるべき。(引き下げ率が)小さいから(法案に)含まれているという議論は成り立たない」と国会で述べ、政府・民主党を厳しく批判しました。国家公務員制度に関する新たな制度改正の合意がない以上、現行制度の人事院勧告に基づく措置を実行し、その下で給与を臨時特例的に引き下げるのが筋であり、民主党政権の姿勢は厳しく批判されるべきです。