1月20日、政府は、社会保障と税一体改革で、2015年10月に消費税率を10%に引き上げた際の増税分5%分の使い道について「社会保障の充実に1%、現行の社会保障制度の安定化に4%を充てる」とする統一見解をまとめました。
増税分を全額、社会保障に充てることを明確化し、国民に理解を求める方針です。現行の社会保障制度の安定化に充てる4%の内訳は、基礎年金の国庫負担不足分に1.1%程度、高齢化に伴う社会保障費の自然増や既存制度の財源確保に2.6%程度、消費税率引き上げに伴う社会保障支出の増加に0.3%程度とするとしています。
政府はこれまで、5%分の使い道を「社会保障制度の機能強化に3%、機能維持に1%、消費増税に伴う社会保障支出等の増加に1%」と説明してきましたが、一転、増税分を社会保障に使うと謳うことで、国民の理解が得やすいと考えたようです。
しかし、この増税分の使い道が明確になったことで、新たな疑問が浮上してきました。それは、民主党が2009年の総選挙で国民に約束した「年金制度の抜本改革案」に要する費用は全く含まれないと言うことが明らかになったことです。
増税分を全額、社会保障に充てることを明確化し、国民に理解を求める方針です。現行の社会保障制度の安定化に充てる4%の内訳は、基礎年金の国庫負担不足分に1.1%程度、高齢化に伴う社会保障費の自然増や既存制度の財源確保に2.6%程度、消費税率引き上げに伴う社会保障支出の増加に0.3%程度とするとしています。
政府はこれまで、5%分の使い道を「社会保障制度の機能強化に3%、機能維持に1%、消費増税に伴う社会保障支出等の増加に1%」と説明してきましたが、一転、増税分を社会保障に使うと謳うことで、国民の理解が得やすいと考えたようです。
しかし、この増税分の使い道が明確になったことで、新たな疑問が浮上してきました。それは、民主党が2009年の総選挙で国民に約束した「年金制度の抜本改革案」に要する費用は全く含まれないと言うことが明らかになったことです。
消費税増税だけが明確に・目玉政策の「年金制度の一元化」と「最低保障年金」は依然として不透明
民主党の素案では、年金制度の抜本改革案が提示されず、消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることのみが示されています。
問題の1点目は、消費税増税は国民との約束違反ということです。
民主党は「4年間、消費税の増税はしない」(鳩山由紀夫代表=当時、2009年6月の党首討論)と公言して政権交代を果たしたことを忘れてはなりません。
2点目は、年金制度の抜本改革案が示されなかったことです。
国民が安心し、納得できるような年金改革の全体像を示した上で、必要な財源について理解を得ていく。これが本来の制度改革の在り方です。
ところが、民主党は2009年と2010年マニフェストで「年金制度の一元化」とともに、最低保障年金を実現すると約束してきたにもかかわらず、こうした抜本改革の法案は12年の通常国会には提出せず、13年の国会に提出するとにされています。
民主党は最低保障年金の財源は消費税だと説明してきました。金額は不明ですが、ある試算によると、年間16兆円から18兆円必要とされ、消費税で賄うためには6〜8%の増税がさらに必要となります。仮に2013年にその抜本改革案を提出するなら、素案で示した消費税率に加え、さらなる消費税の増税が必要になるのは間違いありません。
そうした最も大切な議論をすることなく、取りあえず消費税は10%に上げるという姿勢では国民に理解を得られないのではないか。民主党政権は抜本改革案を13年に先送りせず、早急に示すべきです。
ただ、民主党が年金の抜本改革を提唱したのは、2003年衆院選マニフェストのことです。以来、8年以上が経過しましたが、いまだに具体案が示されていなのです。民主党が本気で改革に取り組もうとしているのか大いに疑問です。
いま具体案を示せないのであれば、民主党の年金抜本改革案は「絵に描いた餅」と言わざるを得ません。潔く「マニフェスト違反」を認め、国民に、有権者に謝罪すべきです。
抜本改革と言いながら、その内容は民主党が野党時代に批判し続けた現行制度の改善案ばかり
新しい年金制度について、素案では「国民的な合意に向けた議論や環境整備を進め、引き続き実現に取り組む」との表現にとどまり、抜本改革への道筋は全く示せていません。
今回、素案に示されたのは、民主党が野党時代に批判し続けてきた現行制度の改善案オンパレードです。
無年金・低年金対策として、これまで公明党が強く主張してきた低所得者への年金加算がその一つ。他にも、年金受給資格期間を25年から10年に短縮することや、パート労働者などへの厚生年金の適用拡大など数多くの現行制度改善案が盛り込まれています。
公明党が主張していたことを、一番批判してきた民主党政権が実現するという、皮肉な結果になっています。
改善案を具体化する上でも多くの課題が指摘されています。例えば、パート労働者などへ厚生年金の適用拡大についても、加入条件などは全く決まっていません。
他にも、年金財政の持続可能性を確保するため、基礎年金国庫負担を2分の1にするための財源を2012年度予算の一般会計に計上せずに「年金交付国債」(仮称)で賄うなど、その場凌ぎのまやかしの予算編成となっています。
さらに、年金交付国債の償還財源は将来の消費税増収分が充てられています。まだ決まってもいない消費増税をあてにした粉飾的手法による財源確保策に批判の声が高まっています。
また、仮に消費税を2014年に8%上げた場合、母子家庭など所得の低い人ほど増税の負担が増す「逆進性」という問題への対策も、全く示されていません。
民主党は、所得課税の軽減と現金支給をセットにした「給付付き税額控除」の導入に向けた検討を進めるとしていますが、実施は「共通番号」が導入される15年以降になるとされています。14年の増税実施から控除導入までの“空白期間”をどうするかもはっきりしていません。
今後、中長期的に検討される「支給開始年齢68歳」への引き上げ議論は、国民の不安をあおるだけ
今後の検討項目として、素案には不公平と指摘される第3号被保険者制度の見直しや、サラリーマンなどが加入する厚生年金の支給開始年齢を引き上げる案などが盛り込まれています。
このうち、厚生年金の支給開始年齢を引き上げることについては、12年の通常国会への法案提出は行わないとしていますが、「将来的な課題として、中長期的に検討する」としています。
厚生年金の支給開始年齢は現在、基礎年金部分は60歳から65歳への段階的引き上げが進行中です。報酬比例部分は13年度から段階的に3年ごとに1歳ずつのペースで引き上げて2025年度(女性は30年度)に65歳にすることが決まっています。
素案には具体的な年齢は明記していないが、政府が先に示した検討案では、引き上げペースを「2年ごとに1歳」に速める案や、現行ペースのままで支給開始を68歳に引き上げる案が挙げられています。
支給開始年齢引き上げについては、多くの問題点が指摘されています。中でも65歳までの雇用の確保が十分に進んでいない現状で、仮に68歳まで年金支給を遅らせれば、収入が断たれ、生活に困る人が大幅に増えてしまう結果になります。引き上げよりも雇用確保の議論を先行すべきです。
現在の年金制度は2004年に改革され、現役世代の平均手取り収入に対する厚生年金の標準的な給付水準(所得代替率)は「将来も50%以上を保証する」と約束されているます。
年金制度は5年ごとに財政検証されるが、直近の2009年の調査でも、2050年度の所得代替率は50.1%を確保できることが示されています。
このように、現行の年金制度が安定しているにもかかわらず、68歳への引き上げの議論をすること自体、国民の不安をあおるだけです。
民主党の素案では、年金制度の抜本改革案が提示されず、消費税率を2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることのみが示されています。
問題の1点目は、消費税増税は国民との約束違反ということです。
民主党は「4年間、消費税の増税はしない」(鳩山由紀夫代表=当時、2009年6月の党首討論)と公言して政権交代を果たしたことを忘れてはなりません。
2点目は、年金制度の抜本改革案が示されなかったことです。
国民が安心し、納得できるような年金改革の全体像を示した上で、必要な財源について理解を得ていく。これが本来の制度改革の在り方です。
ところが、民主党は2009年と2010年マニフェストで「年金制度の一元化」とともに、最低保障年金を実現すると約束してきたにもかかわらず、こうした抜本改革の法案は12年の通常国会には提出せず、13年の国会に提出するとにされています。
民主党は最低保障年金の財源は消費税だと説明してきました。金額は不明ですが、ある試算によると、年間16兆円から18兆円必要とされ、消費税で賄うためには6〜8%の増税がさらに必要となります。仮に2013年にその抜本改革案を提出するなら、素案で示した消費税率に加え、さらなる消費税の増税が必要になるのは間違いありません。
そうした最も大切な議論をすることなく、取りあえず消費税は10%に上げるという姿勢では国民に理解を得られないのではないか。民主党政権は抜本改革案を13年に先送りせず、早急に示すべきです。
ただ、民主党が年金の抜本改革を提唱したのは、2003年衆院選マニフェストのことです。以来、8年以上が経過しましたが、いまだに具体案が示されていなのです。民主党が本気で改革に取り組もうとしているのか大いに疑問です。
いま具体案を示せないのであれば、民主党の年金抜本改革案は「絵に描いた餅」と言わざるを得ません。潔く「マニフェスト違反」を認め、国民に、有権者に謝罪すべきです。
抜本改革と言いながら、その内容は民主党が野党時代に批判し続けた現行制度の改善案ばかり
新しい年金制度について、素案では「国民的な合意に向けた議論や環境整備を進め、引き続き実現に取り組む」との表現にとどまり、抜本改革への道筋は全く示せていません。
今回、素案に示されたのは、民主党が野党時代に批判し続けてきた現行制度の改善案オンパレードです。
無年金・低年金対策として、これまで公明党が強く主張してきた低所得者への年金加算がその一つ。他にも、年金受給資格期間を25年から10年に短縮することや、パート労働者などへの厚生年金の適用拡大など数多くの現行制度改善案が盛り込まれています。
公明党が主張していたことを、一番批判してきた民主党政権が実現するという、皮肉な結果になっています。
改善案を具体化する上でも多くの課題が指摘されています。例えば、パート労働者などへ厚生年金の適用拡大についても、加入条件などは全く決まっていません。
他にも、年金財政の持続可能性を確保するため、基礎年金国庫負担を2分の1にするための財源を2012年度予算の一般会計に計上せずに「年金交付国債」(仮称)で賄うなど、その場凌ぎのまやかしの予算編成となっています。
さらに、年金交付国債の償還財源は将来の消費税増収分が充てられています。まだ決まってもいない消費増税をあてにした粉飾的手法による財源確保策に批判の声が高まっています。
また、仮に消費税を2014年に8%上げた場合、母子家庭など所得の低い人ほど増税の負担が増す「逆進性」という問題への対策も、全く示されていません。
民主党は、所得課税の軽減と現金支給をセットにした「給付付き税額控除」の導入に向けた検討を進めるとしていますが、実施は「共通番号」が導入される15年以降になるとされています。14年の増税実施から控除導入までの“空白期間”をどうするかもはっきりしていません。
今後、中長期的に検討される「支給開始年齢68歳」への引き上げ議論は、国民の不安をあおるだけ
今後の検討項目として、素案には不公平と指摘される第3号被保険者制度の見直しや、サラリーマンなどが加入する厚生年金の支給開始年齢を引き上げる案などが盛り込まれています。
このうち、厚生年金の支給開始年齢を引き上げることについては、12年の通常国会への法案提出は行わないとしていますが、「将来的な課題として、中長期的に検討する」としています。
厚生年金の支給開始年齢は現在、基礎年金部分は60歳から65歳への段階的引き上げが進行中です。報酬比例部分は13年度から段階的に3年ごとに1歳ずつのペースで引き上げて2025年度(女性は30年度)に65歳にすることが決まっています。
素案には具体的な年齢は明記していないが、政府が先に示した検討案では、引き上げペースを「2年ごとに1歳」に速める案や、現行ペースのままで支給開始を68歳に引き上げる案が挙げられています。
支給開始年齢引き上げについては、多くの問題点が指摘されています。中でも65歳までの雇用の確保が十分に進んでいない現状で、仮に68歳まで年金支給を遅らせれば、収入が断たれ、生活に困る人が大幅に増えてしまう結果になります。引き上げよりも雇用確保の議論を先行すべきです。
現在の年金制度は2004年に改革され、現役世代の平均手取り収入に対する厚生年金の標準的な給付水準(所得代替率)は「将来も50%以上を保証する」と約束されているます。
年金制度は5年ごとに財政検証されるが、直近の2009年の調査でも、2050年度の所得代替率は50.1%を確保できることが示されています。
このように、現行の年金制度が安定しているにもかかわらず、68歳への引き上げの議論をすること自体、国民の不安をあおるだけです。