1月25日、懸案だった国家公務員の給与の削減が実現する方向となりました。
 先の臨時国会では、国家公務員給与の削減問題で与野党が合意できず、結果的に冬のボーナスが一昨年に比べて引き上げられるという結果になってしまいました。この問題では、政府・民主党も、自民、公明両党も平均7.8%削減する法案を提出していますが、その意見の相違点は、人事院勧告(人勧)を実施するか、しないかという点にあります。公明党は、日本国憲法の精神を無視して、人勧を実施しないことは問題があると考えていました。
 公務員は、ストライキなどをすると、国民生活に大きな影響を与えるため、民間のように労使交渉で給与を決めるなど労働基本権が制約されています。このため、その代償措置として、民間給与との適切な水準を保つため人勧制度というものが設けられているのです。
 人事院は昨年(2011年)9月30日、国会と内閣に対して、(1)月例給を平均0.23%引き下げる俸給表の改定(2)2006年4月の給与構造改革から実施している経過措置額の段階的廃止―などを勧告しました。
 現在の国家公務員の給与水準を年齢別で見ると、50歳台では民間給与を大きく上回り、若年層では下回っているため、人勧では、50歳台を中心に最大0.5%給与を引き下げるほかに、経過措置を廃止して抑制されていた若い人たちの給与を引き上げることにより、給与構造のゆがみを解消することをめざしています。
 一方、政府・民主党は昨年6月3日、東日本大震災の復興財源を確保するため、国家公務員の給与を課長級10%、課長補佐級8%、係員5%引き下げて、平均7.8%削減する給与臨時特例法案を国会に提出しました。その後に出された人勧については、臨時特例法案の引き下げ幅平均7.8%が、人勧の平均0.23%よりも大きく、趣旨を内包しているものとの考えから、実施しないとしています。
 公明党は、厳しい財政状況の中で、東日本大震災の復興財源を捻出する観点から、国家公務員給与の削減には賛成です。同時に法律に基づいて人勧も実施すべきと考えていました。そこで、公明党は、自民党と共同提案で、人勧を実施し、復興財源を確保するため国家公務員給与を削減するという対案を昨年末に提出していました。
 民主党は昨年、支持団体である連合側との間で、労使交渉で給与を決めることができる「労働協約締結権」を付与する公務員制度改革法案の成立をめざすことを条件に、国家公務員給与を削減する方針で合意しました。
 こうした背景もあり、民主党政権は、人勧を実施した上で公務員給与の削減を行うべきとの自公の要求に応じませんでした。
 政府・民主党の臨時特例法案は一部の組合との合意を優先して法的な手続きを無視しようとするものです。人勧が国家公務員の労働基本権の代償措置とされていることから、人勧を実施しないことは、憲法違反に当たるという指摘もあります。これらの観点からも、人勧を実施すべきと、強く主張してきました。