定数削減は『後ろ向き』の改革
二元代表制の下、議会の役割を再構築すべき

参考写真 2月17日、茨城県議会議長の諮問機関である「県議会改革等検討会」は、定数と選挙区割りの見直しを実質的にスタートさせ、学識経験者と地方4団体の代表から参考人として意見を聴取しました。
 県議会改革等検討会議は、県議会のすべての会派の代表が参加し、今年12月議会までに県議会の定数と選挙区割りを改正する議案を検討することになっています。井手よしひろ県議も公明党を代表して参加しています。
 参考人からの意見聴取では、まず、茨城大学の佐川泰弘教授が、「二元代表制の中での議会の役割」と題して講演しました。
 佐川教授は、「首長から提案された議案を修正しない、議員立法を提案しない、議員個々の議案への賛否を公開しない、の“三ない議会”が問題」と厳しく批判しました。その上で、なぜ“三ない議会”の弊害に陥ったかの理由について「議員個々に、あるいは議会内で多数を占める会派という立場で、議案が議会に出て行く前の段階で非公式に首長に働きかけ、望まれる政策内容を実現しようとすることが、従来の一般的な議員活動だった。典型的なパターンとしては、首長を支持する多数会派が事前の非公式折衝を主な手段とする一方で、首長に批判的な少数派は一般質問や議事質疑などを通して行政の政策の修正を実現しようとしてきました。多数派の意見は、議案が議会に出てきた段階では既に反映済みとなっているので、首長支持会派は改めて議会の議事の中で積極的に自分たちの主張を展開する必要がない。他方、少数派の意見は、事実に基づいた論理的な質問・質疑によって行政の政策修正が実現される例がまれに起こりえないわけではないが、大半の場合は議事の中で表明されるだけにとどまり、結果に反映されないのが通例となってしまった」と、指摘しました。
 また、佐川教授は、大阪や名古屋などの事例を通して、ポピュリストないし劇場型首長の登場にも触れました。「議会内の多数派が支持せず、事前調整にも応じようとしないポピュリスト的首長からすれば、議会は「足を引っ張る」悪玉にすぎない。自らの主張を実現するために、自分を支持する地域政党を組織することになる」と語りました。「例えば、橋下大阪府知事(当時)は“議会内閣制”を提案しました(2010年1月)。地方自治法では二元代表制を採用しているが、首長と議会が対立的な関係になって、住民の意見が適切に反映されず、また効率的な事務処理を阻害するという問題認識をもとに、橋下知事は、政治任用で議員を行政要職(副知事や部長)に就けようとしている。これは、議会を首長に従属させようとする改革案に他ならない」と主張しました。
 結びとして、「地方自治体の財政状況がきわめて厳しい中、議員に対する報酬や議員定数を減らすことも、一つの改革の方向である。しかしながら、議会を小さくしたとしても、議会が果たしている役割が変わらない以上、さらなる縮減を求める住民からの要求が止まることはない。小さくなるのは、『後向き』の改革。県内自治体議会も、全国の状況に目を向け、積極的な役割を果たす『前向き』の改革が求められている」と訴えました。
 参考人に招かれた会田真一県市長会長、渡辺政明県市議会議長会長、野高貴雄県町村会長、小野瀬義之県町村議会議長会長の地方4団体からは、定数削減への厳しい意見が相次ぎました。会田氏は「県内市町村は平成の大合併で85から44に減り、首長や議員は半減した。県議会は手を付けられていない」、渡辺氏「県の財政は厳しい。県議会が行革の範を示すべき」、野高氏「3倍を超える1票の格差是正が必要」、小野瀬氏「県議は選挙の時は活発だが、当選後はその活動の姿が見えないと、住民の目には映っている」と指摘しました。