Q:「最低保障年金」で安心?
A:消費税、最大17.1%。大半の人が年金減額
参考写真 民主党の抜本改革案には、(1)最大17.1%もの消費税が必要(2)大幅増税の上、もらえる年金額は下がる(3)最低保障年金がもらえるのは40年も先―という“三つのまやかし”があります。
 なかでも消費税率については、2月10日に民主党が公表した試算によると、月額7万円の最低保障年金を導入した場合、2015年10月の10%への引き上げとは別に、75年度には最大7.1%分が必要になり、税率は合計17.1%にまで達することが分かりました。
 生涯平均年収420万円を超える大多数の世帯では、現行制度よりも年金受給額が減ることも判明しました。消費税の大増税に加え、もらえる年金額が減ることに納得できますか。野田佳彦首相はこの試算について、「(民主党の)一部幹部による頭の体操」などと弁解していますが、あまりにも無責任な発言です。
 さらに、2月22日の衆院予算委員会の社会保障に関する集中審議では、少子化の影響で現行制度と給付抑制策を想定していることを明らかになり、その結果、「月額7万円」と公約してきた最低保障年金の実質価値が、新制度下では5万8000円となることも判明しました。
Q:国民・厚生・共済の三年金「一元化」は理想的か
A:自営業者の保険料が大幅に増加する恐れ
 民主党案は国民、厚生、共済年金の一元化を掲げています。シンプルで理想的な制度に聞こえますが、問題が多すぎて、実現性を大きく欠いています。
 野田政権は、職種を問わず「所得が同じなら同じ給付額」と、“理想の年金像”のように説明していますが、全業種の所得を正確に把握することは極めて困難です。
 一元化が断行された場合、今の厚生、共済年金の人は民主党案の保険料15%のうち、事業主が半分を負担してくれるので7.5%で済みます。ところが自営業者など事業主がいない人は、保険料を全額自己負担しなければなりません。
 例えば現行の国民年金保険料は月額約1万5000円ですが、月収25万円の人の場合、2.5倍の3万7500円を負担することになるのです。負担は2.5倍になりますが、貰える年金は1割程度しか増えないのです。このように極端に保険料が増える案を、自営業者らが納得するとは思えません。
 その上に、22日の衆議院の集中審議では、15%の負担の中には障害年金や遺族年金の負担部分が含まれず、これらを加えると18%になることを、政府は認めました。

Q:無年金者らを救えるか
A:新制度へ移行に40年。今、救済するのは困難
 民主党は「抜本改革」にこだわる理由を、「無年金者をなくすため」(菅直人氏 2007年6月29日、衆院本会議)と説明し、政権を獲得した2009年の衆院選でも声高に主張。すぐにでも月額7万円の最低保障年金を受け取れると思い込んだ有権者も多いはずです。
 ところが抜本改革をしても、新制度への完全移行には40年もかかると言われています。最低保障年金の実現も40年後の話です。つまり、それまで無年金・低年金者の救済には、全く役に立たないのです。「誤解されていたら申し訳ない」(小宮山洋子厚生労働相)では済みません。
 しかも移行期間中は、現行制度と新制度が併存することになり、大変な混乱を来たし、新たな「年金記録問題」が生じかねません。そこまでして制度を変える必要があるのでしょうか。民主党政権は、実現不可能な「抜本改革」の旗を降ろし、潔く国民に謝罪すべきです。