参考写真 2月25日、井手よしひろ県議は日立市内の10ヶ所で県議会報告を行いました。その中で、放射能対策の充実に対策に触れ、食品の新たな放射性物質に対する規制にあり方に言及しました。
 このままでは、消費者も生産者も戸惑うばかりで、混乱が拡大するおそれがあるからです。
 食品中の放射性物質に関する厚生労働省の新規制値案に対し、文部科学省の放射性審議会が異例の注文を付けました。
 「新たな基準値が放射線防護の効果をさらに高めるとは考えにくい」というもので、新規制値案に真正面から疑問をぶつけた格好です。厚労省案は国産食品の大半が汚染されているとの“誤った仮定”に基づいているとして、「実際より高い汚染割合を算出している」とも指摘しています。
 果たして厚労省案が正しいのか、審議会の主張が正しいのか。基準値づくりの大詰め段階でこれほど意見が食い違っていては、国民は混乱するばかりです。民主党政権の政策決定の未熟さ、不透明さをあらためて指摘しないわけにはいきません。
 両者の主張の隔たりからは、縦割り行政の弊害も透けて見えきます。消費者の視点にも生産者の視点にも立ったバランスある総合的な議論が必要なのに、その形跡がまるでなく、「消費者」対「生産者」という対立構造をかえって、政治不信、行政への不信を深める結果となってしまっています。
参考写真 政府は、新基準値を採用する科学的根拠や包括的な放射能対策の指針などを早急にまとめ、消費者にも生産者にも丁寧に説明してもらいたいと思います。
 審議会は“異見”を表明したものの、新規制値案そのものについては了承しています。このため厚労省は予定通り、4月1日から新しい基準値を適用するとみられます。
 しかし、不統一感が払拭できないまま新基準を敷いても、合理的な運用はできないのではないか。実際に食品を扱う現場からは早くも不安の声が上がっています。
 何より危惧されるのは、新規制値案に見合った検査体制が全く整っていないことです。
 新たな数値は、原発事故直後に設定された基準値より格段に厳しくなっています。コメや肉、魚などの一般食品は1キログラム当たり100ベクレル、牛乳と乳幼児食品は50ベクレル、飲料水は10ベクレルといった具合で、厳格な基準設定で知られる欧州に比べても、飲料水で100倍、一般食品で10倍という厳しさです。
 新基準値を超す食品が続出するのは必至で、現行の検査・測定体制ではこの事態に到底、対応できないといわれています。安全・安心を強化したはずなのに、検査の不備から新基準を超える食品が市場に出回る結果となり、風評被害がかえって拡大するということにもなりかねません。
 特に、学校給食の現場では、簡易型のベクレル検査機器の導入が始まったばかりで、新基準とまで図ろうとすると、検査時間を大幅に掛ける必要が出てきます。結果的に、検査できる量が減り、検査の枠組みからこぼれ落ちる給食ができる懸念があります。
 基準値を厳しくすることには、大賛成です。しかし、その基準値を検査する体制整備に、具体的な予算や設備、人材を投入しない、現在の成否にやり方では、いたずらに混乱が拡大しないか、大きな疑問が残ります。