先日、日立市の納豆製造会社の社長を取材させていただきました。東日本大震災の被害から、必死の努力で立ち直ろうとする、茨城の地元企業を紹介する記事が、3月15日付けの公明新聞に掲載されました。
 このブログでは、その内容を紹介します。
東日本大震災から1年「風評被害に負けない!」
参考写真 「よーし、蒸し上がったぞ」。大きな釜に入った大豆を真剣なまなざしで見るのは、茨城県日立市にある納豆製造会社「菊水食品」の菊池啓司社長(55)だ。豆の状態を見極め、納豆菌の配合を変える様は、まさに職人。これまで発表した商品はコンクールで数々の賞を獲得してきた。
 しかし、東日本大震災で状況は一変する。施設の破損による工場の操業停止に加え、商品の在庫が大量に発生、約1000万円の被害をもたらした。
 追い打ちを掛けるように、工場を再開させたところで舞い込んできたのは、原発事故の影響で市内の水道水から乳児の飲用基準を超える放射性ヨウ素が検出されたとの報道。これを境として一気に風評被害が加速し、小売店からの注文や1日に約10〜20件あったインターネット販売が「完全にゼロになった」(菊池社長)。
 こうした逆境の中でも、菊池社長は「嘆いていても環境は変わらない。やれることは全部やってやる!」と、職人の魂を燃やした。インターネットの情報交流サイト「フェイスブック」を活用し積極的に広報活動に取り組む。行政が主催する風評被害払拭イベントにも参加し、商品の安全性と、うまさを消費者に直接訴えかけた。
 そうした中で、話を聞いて納得した人は商品を偏見なく買ってくれた。さらに、口コミやフェイスブックで評判が広がり、徐々に注文が入るように。
 例年に比べて売り上げは落ちたままだが、「復興を応援してくれる人のためにも負けられない」と菊池社長は歯を食いしばる。
 茨城県全体としては、原発事故による農林水産物と観光の損害賠償請求額が510億円(2月16日現在)を超え、風評被害の深刻さを浮き彫りにする。
 一方、県と民間との取り組みに光が見える。県が旅行業者などを対象に提供した無料観光バスは約1万4000人が利用。東京都中央区に開設した県アンテナショップは、県の特産品を求める多くの人でにぎわっている。
 県観光物産課の担当者は「全体として回復傾向にあるが、まだまだ戻ったとはいえない。今後もPR活動を続けていく」と、風評被害の解消に力を注ぐ決意を述べた。

参考写真