参考写真 昨年3月、井手よしひろ県議が代表質問で橋本知事に直接導入を要望していた、新生児の先天性疾患を発見できる「タンデムマス・スクリーニング」の導入に向け、県は来年度予算措置を講ずることになりました。
 昨年3月の代表質問で井手県議は、「赤ちゃんが誕生した際に先天性代謝異常症などを見つけ、障害を予防する新生児スクリーニングは、現在、フェニルケトン尿症など6つの疾患が対象になっています。最近、これにかわる新たな検査法として、タンデムマスという質量分析計が注目されています。一挙に20数種類の疾患を検出できる利点があり、その導入が急がれています。しかし、タンデムマスは1台で年間5万件の検査が可能であり、現在の出生数から単純に計算すると、北関東3県で1台の装置があれば小児科医療に大いに貢献できると言われています。こうした医療分野の広域連携は、厳しい財政状況の中で、県民の命と健康を守るという行政の責任を果たす上で不可欠な発想だと確信します」と発言。タンデムマス法の北関東3県での広域的な導入を提案しました。
 この質問に対して、橋本知事は「タンデムマスにつきましては、従来の検査手法に比べてより多くの代謝異常疾患を発見できる特徴がある一方で、現在検査している6疾患のうち3疾患は発見できないことから、検査方法の併用が必要となってまいります。また、国の研究班の報告によれば、100万人に1人という発見頻度の低い疾患や、発見されたとしてもいまだ治療法の確立していない疾患等を新生児マススクリーニングの対象とすべきかどうかなど、課題も多く指摘されているところであります。このため、国におきましては、新たな治療法の開発や発見症例の予後の調査等に取り組むなど、引き続き研究を実施していくこととしており、本県といたしましても、タンデムマスの導入につきましては、今後の国の動向を注視しながら、他県との連携も含め検討してまいりたいと存じます」と、導入に向けて検討するという前向きな答弁を行いました。
 県では、新年度早々にも産婦人科医ら専門家による検討会を立ち上げ、検査、治療、相談体制の在り方などについて話し合うことにしています。
 質問でも取り上げましたが、現在は新生児すべてを対象にフェニルケトン尿症、楓糖尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症、先天性副腎過形成症、先天性甲状腺機能低下症の6疾患に限り、検査を実施いています。2010年度の実績で、約2万5千人が検査を受け、先天性甲状腺機能低下症が5人、その他5疾患は合わせて3人発見されています。
 タンデムマス法の分析機器ではアミノ酸や有機酸、脂肪酸の代謝異常を約20疾患検査可能となります。アルギニノコハク酸尿症やメチルマロン酸血症など16疾患の検査導入を促しており、県は従来の検査方法と合わせて少なくとも計19疾患への検査拡大を検討しています。
(写真は、神奈川県予防医学協会のHPを参照させていただきました)