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 東日本大震災では、市町村による安否確認が遅れ、多くの障害者が孤立しました。民間の障害者団体や地域コミュニティ(町内会や自治会、行政区など)も安否確認に乗り出しましたが、個人情報保護が壁になり、ほとんど実を結びませんでした。
災害時の障害者支援・安否確認 個人情報の壁
読売新聞(2012/3/19)
 震災後、南相馬市は、障害者団体「日本障害フォーラム」(東京)の協力で、障害がある市民825人の安否確認を行っていた。男性の病状を知った市は、同フォーラムに生活支援を依頼。男性は11月から市内の作業所に週5日通いはじめた。仲間と缶バッジ作りをし、最近は大きな声であいさつができるようになった。
 震災後、被災市町村では行政機能も被災し、障害者の安否確認は難航。それに協力しようと、障害者団体が障害者手帳などを持つ住民の個人情報の開示を求めた。しかし、読売新聞が6月に行った調査では、津波を受けた沿岸や福島第一原発からの避難をした地域で開示の要望を受けた8市町村のうち、応じたのは南相馬市のみ。多くは、個人情報保護を理由に開示を拒んだ。
 岩手県宮古市もその一つ。支援活動をする「ゆめ風基金」(大阪)は昨夏、市街地に遠い仮設住宅で、通院手段に困る人工透析患者3人を見つけた。震災から半年後、ようやく3人は送迎の支援を受けられるようになった。同基金の八幡隆司理事は「今も新たに支援を求める人が多く、安否確認は十分ではない」とする。
 高齢者、障害者、乳幼児、外国人など1人では避難が難しい人を「災害時要援護者」と呼称してます。国は、対象の範囲を決めたうえで一人一人に対応した避難支援計画を市町村が作り、その受け入れ先として福祉避難所を設置することとしています。しかし、その最初の段階の要援護者の把握と、災害時にその情報を支援者に伝えるかという、2つの大きな課題が横たわっています。
 また、「災害時要援護者」を支援する「避難支援プラン」の導入が自治体に広がっていますが、プランを申請する際に、避難を支援してくれ る人を書き込む欄が空欄になっているケースが半数以上にのぼっている現実があります。「避難支援プラン」は、災害時に自力での避難が困難な高齢者や障害者が近所の人などを避難の際に協力してくれる「支援者」に指名して迅速な避難につなげようというもので、県内では日立市や北茨城市など10あまりの自治体で本格的な運用が行われています。
 先日のNHKの報道によると、津波で大きな被害を受けた北茨城市では、ひとり暮らしの高齢者などに プランの申請書を郵送したところ、これまでに345人から申請がありましたが、このうち半数あまりにあたる189人が支援者を記入する欄が空欄になっていました。
 その理由は、まわりも高齢者ばかりで支援を頼めないことや、震災後に引っ越したので知り合いがいないことなどをあげる人が多かったということです。北茨城市では、支援者が記入されていなくても申請を受け付けていて、民生委員などを通じて地域の人に支援を依頼することにしているそうです。
 「支援者」の記入についてはほかの自治体でも同じケースがみられており、自力での避難が難しい高齢者などの支援の体制をどう整備するかが、課題となっています。
 こうした現状を直視し、井手よしひろ県議は、3月5日に行った県議会代表質問で、要援護者の防災体制について、その充実を知事に訴えました。
 その中では、「要援護者の対象、要援護者情報の共有・管理、避難支援計画のあり方等速やかに見直すこと。障がい者や高齢者の『緊急救出用要援護者名簿』を整備し、地域毎の支援活動・救援活動に活かすこと。要援護者の情報共有のため、『個人情報保護条例』などの見直しも検討すること」を求めました。
 さらに、再質問では「県の『個人情報保護条例』に、“要援護者の名簿その他の情報を、自治体が管理し、災害などの場合に、その支援・救助のため、自衛隊、警察、消防、福祉団体その他一定の公共的な機関に提供できる。この情報を得たものは、それを要援護者のためにのみ用い、みだりに漏洩しないよう注意しなければならない”というような条文を追加することによって、犠牲者を一人でも多く減らせると考える」と、具体的な提案を行いました。