参考写真 昨今、都会の真ん中での“孤立死”報道が相次いでいます。
 今年になってからでも、「認知症の夫(84)と妻(72)」(北海道釧路市)、「姉(42)と知的障害のある妹(40)」(札幌市)、「95歳の母親と63歳の娘」(東京都立川市)、「母親(45)と知的障がいのある4歳児」 (東京都立川市)、「母親(77)と重い障がいがある息子(44)」(横浜市)、「70〜80歳代の男女」(東京都足立区)、「92歳の母親と64歳の息子」(埼玉県川口市)などです。
 病気や障がいのある家族を1人で支える2人暮らしの家庭のケースが目立っています。要介護の高齢者のいる家庭での孤立死が、大きな問題です。
 政府や自治体は、これまで高齢者の独り暮らし世帯の孤立死を防ぐ取り組みを続けてきましたが、これをさらに強化、拡充していく必要があります。
 2010年国民生活基礎調査(厚生労働省)によると、65歳以上の人がいる世帯(全世帯の42.6%)の うち、夫婦のみは29.9%、単独世帯は24.2%と、高齢者だけの世帯は半数を超えています。高齢者世帯の孤立化を防ぐため、厚労省は現在、「安心生活創造事業」として「悲惨な孤立死、虐待などを1 例も発生させない地域づくり」に取り組んでいます。自治会や町内会など地域住民による安否確認や、消防、警察、ごみ収集での訪問確認、緊急通報体制の整備を進める自治体もあります。
 問題は高齢者の中に、支援を望まず、自ら孤立する人々も少なくないことです。若いころから、地域と積極的な交流がない人や、支援を拒否する人もいます。また、個人情報保護法への過剰反応やプライバシーの壁によって、自治体などから必要な情報が提供されない問題も指摘されています。
 今回の事例では、障がいのある子どもを支える家庭の孤立化を防ぐ重要性が改めて明らかになりました。札幌市での姉は生活保護の受給相談がなされ、立川市での4歳児の母親は療育訓練施設の利用をやめ、保育所への入所手続きも行われていました。
 障がいのある人を家族だけで支えるのは、非常に困難です。福祉のネットワークの中で療育できるよう、どん な支援が必要なのか、検討を重ねていかなければなりません。
 「個人化社会」では、家族や地域の絆は、ともすれば弱くなりがちです。しかし、個人の安全、安心は家族や地域の力を復活させてこそ可能になります。「地域力」や住民の連帯感を強めていくための取り組みに知恵を絞る必要があります。