参考写真 3月23日、衆議院は本会議を開き、子ども手当に代わる新たな手当を2012年度に創設するための児童手当法改正案の採決を行い、民主、自民、公明などの賛成多数で可決、参院に送付しました。
 児童手当法改正法案は、15日の3党合意を受け、衆院厚生労働委員会で名称を「児童手当」とするなど修正されました。また年少扶養控除の廃止で手取りが減る所得制限世帯(夫婦と子ども2人で年収960万円以上)の子どもには、「当分の間」の措置として子ども1人月5000円を支給するというものです。
 本会議で賛成討論に立った公明党の古屋範子さんは、昨年8月の3党合意に基づくこれまでの対応について言及。民主党政権が当初、児童手当法の改正案であるにもかかわらず「子どものための手当」という名称を用い、「子ども手当」があたかも継続するかのような表現を残したことは「看過できない」と批判しました。「児童手当法に戻した上で、恒久的な制度づくりを行うことが当然の帰結である」と主張しました。
 さらに所得制限世帯への給付について、「十分な協議を行うことなく、月額5000円の支給を決めた政府の対応には問題がある」と指摘。その上で、修正案では、本則上の給付とはせず当面の間の特例給付とし、今後のあり方を検討することが付則に盛り込まれたことに触れ、「年少扶養控除廃止の影響を含めた実質的な手取り額についてはさらなる検討が必要だ」と訴えました。
恒久制度のあり方明確に、民主党「子ども手当」は公約違反の象徴
 衆院本会議で公明党の古屋範子さんが行った「児童手当法改正案」の修正案への賛成討論(要旨)は次の通りです。
  • 「子どもに対する手当の制度のあり方」ついては、昨年8月4日の自民・公明・民主の3党合意によって、2011年度末までの暫定措置、12年度以降の恒久的な制度のあり方が明確になっています。これに基づき11年10月分〜12年3月分の支給額等の暫定措置を定めた特別措置法が可決され、今年度末までの手当の支給が可能となったことに加え、12年度以降は児童手当法に所要の改正を行うことを基本とすることが同特措法に明記されました。
    これはまさしく、民主党が中学生までの子ども1人2万6000円を全額国庫負担で支給するという「子ども手当」を断念し、現実路線へと転換したことを意味するものです。

  • 今般、政府が提出した法案の中身は、昨年8月の特措法の内容を踏襲するものでありおおむね了承できるものの、以下の2点は修正が必要と判断しました。
    1点目の名称については、児童手当法の改正案であるにもかかわらず「子どものための手当」という名称を用い、「子ども手当」があたかも継続するかのような表現を残したことは看過できません。
    子どもに対する現金給付は、政権交代以来この2年半あまり、民主党政権の迷走によって暫定的な法制上の措置が続いてきました。それは、児童手当法に基づく給付をベースとしつつ、それ以外の足らざる部分を子ども手当法で補うというものです。すなわち、名前こそ子ども手当法でしたが、その内容は実質的に公明党が1972年の制度発足以来、一貫して推進してきた児童手当法の拡充そのものでした。
    この間、公明党は、子育て世帯の安心につながるような、持続可能な制度づくりや現物給付とのバランスを含めた財源確保などを求めてきましたが、民主党政権は一度も恒久的な子ども手当法案を提出することができませんでした。また、財源確保をめぐる綱渡りのような財政運営を見ても、子ども手当の実現が困難であることは明白です。
    いわば、子ども手当は民主党の数々のマニフェスト違反の象徴であり、国民への謝罪と説明もなく、これ以上、その名称を使うことなど到底許されるものではありません。

  • 2点目は、昨年8月の3党合意でも今後の検討課題となっていた所得制限世帯への給付です。
    そもそも民主党は、子ども手当創設のために所得税の配偶者控除、扶養控除を廃止する考えを明らかにしていました。結局、配偶者控除は廃止せず、所得税の年少扶養控除の廃止に加え、予定していなかった住民税の年少扶養控除の廃止に踏み切りました。このため、扶養控除の廃止による影響を踏まえた実質的な手取り額について再検討が必要となり、昨年8月に成立した特措法では、3歳未満は1万5000円、3歳以上小学校修了前の第1子、第2子は1万円、3歳以上小学校修了前の第3子以降は1万5000円、中学生は1万円という支給月額に改められました。
    同様に所得制限世帯についても税制上または財政上の措置を含めた検討が必要であったにもかかわらず、十分な協議を行うことなく、月額5000円の支給を決めた政府の対応には問題があります。
    以上の2点について修正案では、手当の名称について「児童手当」とし、法律の名称も「児童手当法」に戻すことになりました。これは当然の結論です。所得制限世帯への給付については、本則上の給付とはせず、当面の間の特例給付に位置づけ、今般の法改正後の児童手当の支給、所得税や道府県民税、市町村民税に係る扶養控除廃止による影響を踏まえつつ、そのあり方を含め検討を行い、必要な措置を講ずることが付則に盛り込まれました。

  • 以上が児童手当法改正案の修正案に対する主な賛成理由です。今般の法案成立は、子育て世帯への安定した現金給付制度を継続するために必要な措置と考えますが、一方で年少扶養控除廃止の影響を含めた実質的な手取り額については、さらなる検討が必要です。また、遅れている保育所整備等の現物給付について、政府は子ども・子育て新システムの導入で対応する方針ですが、待機児童の解消策や財源確保の見通しなど不透明な点も多くその効果は未知数です。その他、依然として第1子の出産を機に女性の約6割が退職されている現状を踏まえ、ワーク・ライフ・バランスの確保にも本腰を上げて取り組まなければなりません。