参考写真 東京電力の不誠実な体質が、また、あらわになりました。企業向けの電気料金値上げのやり方が物議を読んでいます。
 東電は契約電力50キロワット以上の24万件の顧客に対し、4月1日から17%の値上げを通告したが、契約更新前なら顧客は値上げを拒否できることを十分に説明しませんでした。
 このことが明るみになって東電は、4月以降に契約更新を迎える17万件の顧客に再説明を行うと発表。そして、値上げの了承を得られない場合は契約更新まで値上げを見送ることにしました。
 この説明不足が故意だったかどうかは不明ですが、「あわよくばという心もあった」のでないかとの声が聞こえてきます。
 西沢俊夫社長は、昨年暮れに「値上げは事業者の義務であり、権利でもある」と言って顧客の反感を買いました。
 このような一連の言動を見る限り、顧客を下に見る不誠実な経営体質だと言われても仕方がありません。
 値上げに対しては、埼玉県の川口商工会議所や東京都世田谷区などが拒否して注目を集めました。さらに、値上げが経営を圧迫するという山梨県のスーパー各社などが、公正取引委員会に独占禁止法違反にあたるとした申告書を提出する事態にもなっています。
 東電以外の電力事業者からの電力購入は実質的に不可能で、東電は優越的地位にあるとの理由からです。
 東電は値上げに踏み切ることで年4000億円の収入改善を狙っていました。しかし、この不誠実な一連の対応で4月からの一斉引き上げは遠のきました。このため、当初見込んでいた経営計画に狂いが出ることは必定です。
 値上げができなかったしわ寄せが、7月に予定されている家庭向けの電気料金の値上げ幅の上昇に向かう可能性も否定できません。 
 だからと言って、ツケを一般顧客に回すというのは、絶対に許されません。
 その上、多くの原発が停止したまま迎える今夏の電力需給は昨年以上にひっ迫する見通しです。東電は報奨金を出すなどして節電を推進しようとしているが、何よりも節電に頭をひねり、汗を流しながら取り組んでいるのは顧客です。それを尻目に、独占的地位にあぐらをかくような東電の経営体質は看過できません。
 そもそも事の発端は、東電の安全管理の甘さが引き起こした原発事故です。
 地に落ちた信頼を回復するには、事故処理と賠償支払いとともに、不誠実な経営体質を抜本的に改めることが不可欠です。
総括原価方式を抜本的に改めよ
 一方、3月26日付け毎日新聞(茨城版)に、村上達也東海村長が25日行った講演の模様が報道されていました。
 その中で村上村長は、日本原子力発電(原電)幹部が東海第2原子力発電所の地震津波対策を巡り、電力料金の値上げに言及したエピソードが披露されています。
村上・東海村長:「原発再稼働急いでる」
政府や電力業界批判

毎日新聞(2012/3/26) 
 村上村長によると、原電幹部3人が今月14日、再稼働に向けた地震津波対策を含めた設備投資計画の説明に村役場を訪問。その際、村長が東海第2原発が運転開始から33年経過したことに触れ「金をかけて対策を講ずるのはやめたらどうですか」と水を向けたのに対し、原電側は「(キロワット時当たり)何十銭か値上げすれば(投資分は)回収できる」と応じたという。
 村上村長は「設備投資は収益で償還していくが、電力会社はそれが必要ない。何も変わっていない」と指摘。電力事業に関わる全ての費用を総括原価とし、一定の利益を上乗せして消費者が払う料金を決める「総括原価方式」に疑問を呈した。

 原子力発電から自然エネルギーへのエネルギーシフトが必要だと叫ばれている中で、電力事業者の料金体系=総括原価方式が、旧態依然とした体質を支えていることを垣間見る発言です。
 東電の体質を改めるためには、料金決定のシステム自体を抜本的に改める必要がありそうです。